【読む怪談】稲川怪談を書籍で読むならこの1冊!『稲川怪談 昭和・平成・令和 長編集』を整理!

稲川淳二の怪談を整理する、怪談!稲川倉庫です。

稲川怪談は聞く・見るだけじゃない!

数多くの書籍が存在するのを皆さんはご存じでしょうか?

夏の時期になると、コンビニの書棚には稲川怪談にまつわる漫画本が並びますし、本屋に行けば文庫本サイズの稲川怪談も並んでいます。

稲川怪談本を読んではみたいけれど、何から読んだらわからない!という方も多いのではないでしょうか? 

稲川怪談フリークの私がオススメするのは、ここ数年で2冊発売されている単行本サイズの『稲川怪談』シリーズです!

聞いてから読むか、読んでから聞くか。

聞くだけが稲川怪談じゃあない。読む稲川怪談の世界を紹介しましょう!

著:稲川 淳二
¥1,300 (2023/05/09 21:04時点 | Amazon調べ)
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稲川怪談 昭和・平成・令和 長編集

本書は過去の稲川怪談から、わりと新しい怪談を中心として中編~長編の怪談をたくさん収録しています

稲川怪談本といえば、リイド社や竹書房からたくさん出版されていますが、新規の方が読むのであれば今回紹介する、講談社から発売になっているこちらのシリーズがおすすめですね。

あの座長の語り口が文章でうまく再現されていますので、稲川怪談が好きな方なら読みながらきっと例の名調子が脳の中で再現できるハズ。

収録されている怪談の紹介とざっと解説していきますが、それに加えて公式YouTubeチャンネルにアップされているものは動画もリンクもお届けしましょう!

中・長編を中心に28話収録されていますので、それじゃあひとつづつ見ていきましょうかね。

※若干ネタバレを含みますのでご注意を!

真っ赤な男

横浜のディスコから怪談ライブの依頼を受けた座長。夢に見た怪しい情景が気になって依頼を断ることにしたんですが…。

結構マイナーな話ですが、ダンスホールのミラーに登場する真っ赤な男、かなり印象的で怖いです。

いわくつきの土地っていうんですかねえ。あるんですね、そういう場所って。

パニック番組

座長がとあるテレビ番組で怪談を語ることになったんですが、気づいたら自分が話そうと決めていた怪談とは違う、別の怪談を話してた。

(なんか変だな…)と思っていたんですが、テレビの観客席も演者も妙にシーンとしている…。そしたら、演者の一人がフラ~と気を失い始めて。ついには倒れちゃった。

そこから観客が集団ヒステリーの状態になっていくんですが…。

パニック番組とはなんちゅうタイトルだ!(笑)

このお話し、共演者で霊感体質のKさんにまつわる話なんですが、巻末の作品紹介でははっきりと「研ナオコ」と書いてあります(笑)

そして、司会者Yは別の媒体ではユースケ・サンタマリアとされていますね。

座長とKさんの、‟わかる”者同士の会話っていうのが印象的なお話しです。

真夜中のラジオ局

ラジオ局のN放送で座長が体験した話。みんなが避けて通るレコード室にまつわる怪異談と、T放送でテープの編集中にスタッフが体験した話が語られています。

わりとよく聞く話ですが、別のタイトルを付けてほしいですね(笑)整理しにくくて困ります…。

黄色く光る顔

こけら落としの夜

座長が劇団員の下っ端のころ、『夫婦善哉』という出し物の端役として公演に参加することになった。岩手県で盛岡近くのイチヤ旅館に宿泊したときに体験したというお話。

この話けっこう珍しいと思うんです。あまり語られてないんじゃないかな。劇団の若い衆の何人かが経験する怪異なんですが、なんだか怖いだけじゃなくて、劇団員が苦労しながらも夢を追いかけて奮闘する場面もあって。けっこうコレ、青春のニオイがするんですよね。

この話、わたし大好きなんです。

窓の外に浮かぶ顔

黄色く光る顔つながりで、昔アイドルをしていたマネージャーから聞いた話。このアイドルの子がホテルの部屋を変えてくれって言うんで、マネージャーが部屋に入ってみたんですが…。

かなり短いお話しですが、「こけら落としの夜」と合わせて1話ということでしょうかね。

消えた家族

茨城県のお友達の「前科26犯」シリーズです(笑)

このお話し、近年ではわりとキラーチューンなんじゃないでしょうかね。座長の実体験でもありますしね。

とある寂れた商店街にあった、既に営業していない家具・寝具店にあるマネキン人形と、その店の主人にまつわる不思議なお話し。直接的な霊現象ではないんですが、これまたイヤ~なお話しですよ…。

それから、座長とお友達の小噺から始まる怪談の枕があって、さながら寄席で語られる落語風怪談にような趣もある

お話し全体を通してパッケージになっているという座長の話芸が素晴らしい!

NPO

怨霊が住み着くアパートにNPO職員が住んでしまって、とり殺されそうになったというお話しなんですが、その後NPOで支援した外国人がこの部屋に宿泊して恐ろしい体験をした、という。そんな部屋があるそうですよ。

この話も怪談の枕があってすごくいいですねえ。座長がそのアパートに心霊探訪に行くことになった際、ゾロゾロと関係者が集団が付いてきて遠足みたいになっちゃった!というのどかな話から、NPO職員石野さんの恐怖体験に話がだんだんと移っていきます。

私はミステリーナイトツアーのライブで初めて聞いた、というインパクトもあるんでしょうけど、この話大好きなんですよね。

まさに怨霊が住み着く、生気を吸われてしまうようないわくつきの部屋があるっていうのが恐ろしいですし、日本人の原体験や文化的な背景が異なるインドネシア人が宿泊してもパニックになるというねえ…。

そしてまた、NPOってタイトルがなんとも雑で最高ですよ(笑)「呪われた部屋」とか「憑くアパート」とかじゃないんですから(笑)

ビバーク

この話はやや複雑な構成ですが、幽霊と遭遇して意識を失った類の怪談ではなくて、すごく読みごたえがあります。

さきほどの「消えた家族」「NPO」「ビバーク」、この3連コンボは超贅沢な稲川怪談だと思います!

「ビバーク」は90年代に語られた話だと思うんですが、意外とマイナーかもしれませんね。

登山者が山で休むときに、ザイル1本でもって体を固定して、要するに芋虫みたいな形で休むビバークっていうのがあるそうですよ。で、そのビバークなんですが、数日たってもそのままになっている。どうやら中にいる人が起きてこない。何らかの理由があって動けなくなってしまったか、あるいは既に死んでしまっているか、ですよね?

このお話しは、そんなビバークを救助するために向かった報道関係者から聞いた話なんですよ。

なんといっても「コイツにき~めた」っていうラストのセリフが最高!

媒体によっては怪談のタイトルが「ビバーク」ではなく「コイツにき~めた」だったりするんですけど、どこからどうなってこのセリフに繋がるんだろうとワクワクしながら聞いた覚えがあります。

読み進んでいくと、ミステリー小説のように、このセリフに繋がる大どんでん返しを体験できるハズ。

今すぐ知りたい!という方は公式動画をどうぞ!

ナオ・バーズ・バー

なんだか不思議なカタカナですが、実は座長がかつて荻久保で営業していたバーの名前。ナオはおそらく奥様のお名前から、バーズは鳥が好きだったから、とのこと。

座長の怪談でご自身のバーやバーの客から聞いた話が2話まとめられています。

闇夜の赤ん坊

稲川怪談の超傑作「長い死体」に登場する坊さんでサーファー、の妹さんが体験したお話。

つける足音」というタイトルで、初期の傑作怪談CD『怖いから聞かないで』に収録されています。

ピンクの女

座長のバーにやってくる、髪の毛がジョワジョワしていて、顔色がピンク色した女。どうやら常連客3人組となにか因縁があったようで、見える人にしか見えない女のようですよ…

別の怪談で「ピンクのスラックスの女」というお話もあるので非常に紛らわしい(笑)

このお話のキーワードは”髪の毛がジョワジョワ”でしょうね。ソバージュ頭かなんかのことなんですかね、ジョワジョワした髪の毛っていうのは。

樹海の声

こちらも稲川怪談の大定番、女子アナと入った青木ヶ原樹海での実体験

CDでは「樹海からの誘い」(『ホントに怖いから聞かないで』収録)、「樹海~霊界からの挑戦~」(『MYSTERY NIGHT TOUR Selection6』収録)というタイトルです。相変わらずタイトルが安定しません(笑)

このお話はストーリーもオチもない座長の実体験の実況中継、といった感じですが、文章で読むとまた違った味わいがあります。

ですけど、やっぱり効果音とか、このお話でいう「お経」のようなものは文章で表現するのは難しいですね。

座長の叫び声や効果音があるお話は”聞く”怪談に分があるかもしれません

奥多摩の河原

東京の奥多摩地方。夏は河原なんかでテントを張ってね、キャンプする方が多いんだそうですよ。

夜中になって、ボーっと河原を眺めていたらね。ぶきっちょにボールをついていた少女を目撃するんですが…。

最近になって、あの連続殺人犯Mの事件との関連がわかってきたようで、妙に生々しい話になっていますよ。

目黒のスタジオ

座長の怪談でね、テレビ局・ラジオ局、それから撮影スタジオにまつわる話ってとても多いですよね。でもね、このお話はちょっと毛色が違うんだな。

旧日本軍の七三一部隊ってご存じでしょうかね。目黒のあのスタジオは、軍の人体実験場だったっていうんですよ…。

八王子の首無し地蔵

八王子にある首無し地蔵にまつわるお話を2編。

お地蔵さんの祟り

当ブログで紹介しましたCD版なら「地蔵のたたり」(『稲川淳二の怖~いお話Vol.1霊界への扉』収録)、そして稲川怪談の映像化&座長監督作品「首無し地蔵」(劇場映画『心霊』収録)ですね。

現代怪談ではなくて、むかしあったじゃないですか。日本昔ばなしって。そんな世界の怪談ですよね。座長が語るご当地民話って感じでしょうかね。

そしてなぜかこの話は公式YouTubeチャンネルにはUPされていませんね。古典であり稲川怪談の代表作でもあるのにね。

八王子怨霊地帯

こりゃまたなんちゅータイトルだ…八王子はそんな街じゃないってヒロミが怒ってきそうです(笑)

テレビ番組の撮影で首無し地蔵を見に行ったんですがね。ADクンがふざけて触っちゃったんだな。ええ。

で、そのADが祟られるという…。

この話、短い話のわりにオチが爽快です。ちょっと稲川怪談には珍しいタイプかも。

前半部分が今回のお話に該当します。

古い火葬場

この話も大定番ですよね。有名なタイトルでいえば「病院裏の火葬場」。CDですとライブ盤『稲川淳二の怪談ナイト~ミステリーナイトツアー』に収録されています。

古い病院にある火葬場を見つけてしまって、その中を覗いて”あるもの”を見てしまったら…必ず死ぬ。

自分が入院することになって、そのお見舞いにやってきた友人が冗談めかしていったこの話。今度はその友人が体調を崩して入院することなったんですが…。

あなたがもし入院することになったら、そんな火葬場なんか探さない方が賢明だと思いますよ…。

そしてなぜかこの話も公式YouTubeチャンネルにはUPされていませんね。そのうちアップされる可能性大ですから、気になる方はこまめにチェックしてみてください。

そして俺は死んだ

これもなんちゅータイトル(笑)「そして俺は死んだ」ってことは、語り手はすでに死んでいるということですね…。

別タイトルは「北陸の海岸」で、ミステリーナイトツアーCD『MYSTERY NIGHT Tour Serection1 北陸の海岸』に収録されています。

夜な夜な海岸の浜辺で怖い話に興じていると見知らぬ男が語り始めます…。

真下の住人

とあるマンションに越してきたカトウさん。夜中になると自宅に間違い電話がかかってくるんだそうですよ。

「下のアサノですけど…ヤスコお邪魔してますか?」

間違い電話だ。こんな夜中に家の電話がなるもんだから何事かと思ったら…。ムッとした口調で「うちはカトウですけど?」っていったら、「すいみません」っていって電話が切れちゃった。勘弁してくれよこんな夜中に…。しかもしばらくすると、また同じように電話がかかってきたんだそうですよ。

そのことを偶然出会ったマンションの管理人に愚痴ったところ、管理人の顔色がみるみる変わっていって…。

この話、終盤は電話だけでは済まない恐怖が訪れますが、実は悲しい不幸な出来事がきっかけになっているんですよね。

だけど、カトウさんからしたらたまったもんじゃないですよ(笑)

東京大空襲

第二次大戦末期、日本にはアメリカ軍の無数のB29爆撃機がやってきて、大量の焼夷弾を落としていった。東京の下町が業火に見舞われた東京大空襲です。下町には墨田川が流れてますがね。空襲の時にはそこで多くの方が亡くなったようですよ。

ここでは二つのお話が語られています。

旧明治座の怪

日本橋浜町に明治座ってありますよねえ。歌舞伎や芸能人の演劇なんかをする劇場ですが、昔の旧明治座ではいろいろあったようです。

演者が置き忘れた台本を夜な夜なスタッフが取りに行ったらね、出るんだそうですよ…。

師匠の思い出

漫才師の内海桂子・好江っていうと、今の若い方にはわからないかもしれませんが、昭和を代表する女性コメディアンなんですが。

もうお亡くなりになりましたけどね、内海好江師匠が聞かせてくれた東京大空襲のお話です。

むごたらしい無差別攻撃のさなかでね、母親の人知を超えた愛っていうのかな。感じさせられますよね。

傑作短編集

本書は長編集なんですが、巻末におまけ的な短編集が四編収録されています。たった2ページで終わりますから超短編ですね。

123便

1985年の8月。日本で未曽有の航空機墜落事故が起きました。

多くの犠牲者の中には文化人や著名人もいらっしゃったんですが、明石家さんまが直前で123便のフライトをキャンセルしたことは有名な話ですが、座長も同様にたまたまこの便を回避したんだそうです。

で、このお話は事故当日に取材へ行ったディレクターが話してくれたんです。

深夜のタクシー

このタイトルももうちょっとどうにかしてほしい(笑)稲川怪談には「深夜のタクシー」ネタはいっぱいありますから…。

このお話は、轢死したと思われる指がない男を見てしまったタクシー運転手の実体験です。

四国の廃病院

廃病院にある看板にね電話番号が書いてあるんだ。で、その横にはご丁寧に「決してかけてはらない」って書いてあったんだそうで。大学生の2人はからかってやろうと思って電話したんですよね。

これ、怪談じゃあないかもしれない。いわゆる迷惑系の話かもしれませんがね。真相はわからないままです。

かくれんぼ

原風景が広がっていて、情緒的でもいてけっこうノスタルジックな話です。もっと長編で語った方が良くなるんじゃないかな。

結婚が決まった2人が実家にあいさつに行った。で、帰りに自分が生まれ育った町を歩いてね、分教場を見つけたんだな。

懐かしいなあ!と思ってね、2人で校舎に入ってかくれんぼしようってことになった。そしたら、いつの間にか見知らぬ子供の声で「もーいーよ」って聞こえたんだそうですよ…。

最後にこの子供の正体が明かされるんですが、懐かしくてちょっと怖い、そして悲しいお話です。

まとめ

いかがだったでしょうか?

かなりたくさんのお話が収録されていますし、大定番の話からレアな話まで多種多様な怪談が盛りだくさんです。

稲川怪談は「聞く」方が多いと思いますが、「読む」に興味がある方はぜひ手に取って見て下さい!

引き続き、同シリーズの『昭和・平成傑作選』も追って紹介させて頂きます。

著:稲川 淳二
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