稲川淳二の怪談を整理する、怪談!稲川倉庫です。
今回は、我らが座長が監督を務めた映画『心霊2』を整理!
以前紹介した『心霊』の続編、とはいっても前作も今作もオムニバス形式なので、ストーリー上のつながりなどは全くありません。以前はamazon prime video見放題ラインナップにはなかったのですが、ぼーっと眺めていたら、あるじゃないの『心霊2』が!
その代わりに『心霊』はまもなく見放題が終了するようです(2023年3月25日現在)。
いつ見放題じゃなくなるかわからないので、イナジュンフリークは急げ!
映画『心霊2』
本作は前作に引き続き、恐怖モノのオムニバス映画です。
「踏切に立つ少女」「まちぼうけ」の2作品ですが、前者は稲川怪談では聞いたことがないストーリー。一方、後者は初期の稲川怪談の定番だった、旅一座が心中したという開かずの間に関する実体験を映像化したものです。こちらは座長が監督・脚本を務めていて、また本人役として主演も務めています。
”霊界案内人・稲川淳二”が<ディレクターズ・チェア>に戻ってきた!「監督第一作目の前作、一生懸命撮った。でも何か物足りなかった…。そう、もっと本物の恐怖を表現したい!」という稲川の言葉で全てが始まった・・・・。●第一話「踏切に立つ少女」●第二話「まちぼうけ」
amazon prime videoの紹介文から引用
それぞれの作品のストーリー紹介は、MOVIE WALKER PRESSというWEBサービスが詳しかったので、内容が知りたいという方はチェックしてみて下さい。
前作に引き続き、稲川怪談マニアからの視点で1話ずつツッコんでいきましょう。(またツッコむの!?)
「踏切に立つ少女」
稲川怪談で”踏切”というといくつか連想できるお話しがありますよね。ただ、踏切+少女というキーワードが追加されたら…。
不勉強なだけかもしれませんが、やっぱりこれは稲川怪談ではありませんね。
脚本も監督も座長ではありませんし、ちょい役としても登場しないので、稲川怪談マニアからすると残念ながら見どころがありません。
ストーリーをざっと紹介
母親が突然倒れたという知らせを受けて、急遽田舎へ戻ってきた主人公のOL。
病院へ向かう道すがら、踏切の真ん中で見知らぬ少女に腕を掴まれます。「ニヤッ」っと笑う少女、ことあるごとに主人公の前に現れては、不敵な笑みを浮かべては災いをもたらす、というストーリー。
実はこの少女は主人公の同級生で、少女が過去にいじめられていたときに助けてあげたのがきっかけで、仲良くなった少女の霊だったのです。ある日「余計なことをしたらお前が標的だ」とガキ大将から脅されてしまったため、以後、主人公は少女を助けることなく、無視してしまったんですね。
見捨てられたと悟った少女は、階段から飛び降りた際に足を怪我してしまう。そして、踏切の中で自転車からこけてしまい、電車に轢殺されてしまった。
少女は霊魂となった今もなお主人公を恨んでおり、母親に呪いをかけ昏睡状態にさせ、ヤツやバイクで帰ってきた弟をこの土地へ再び呼び込んでおいて、復讐に及ぶのでした…。
まあお話しの流れはこんな感じですが、大小さまざまなツッコミポイントがあります。
ツッコミポイント:弟の首
最初期に起きた怪現象。弟が乗るバイクのヘルメットに血が付いているのを発見し、よく見てみると弟の首から切り裂いたような傷があって、一筋の血が流れてきます…。
で、次のシーンは何事もなかったかのように病室で休んでいる。身に覚えがない傷があるんやからもっと騒げよ!
ツッコミポイント:むしられる犬
実家に戻った主人公と弟でしたが、翌朝起きると例の少女が庭にいて、実家で飼っている犬の毛をむしっている!
犬の肉がえぐれてしまっているのに、「止めなさい!」の一言だけで、警察に届ける様子もない…。お人よし過ぎるよ!
ツッコミポイント:少年の顔
主人公は踏切で再度少女に出会い、追いかける流れで学校に迷い込みます。
導かれるように教室へ向かうと、誰かが掃除用具棚に閉じ込められていて、どうやら少年たちにいじめられている様子。おそらく自分が小学生だった時空に迷い込んだようですね。
ここからだんだんと現代と当時の情景がミックスしていきますので、ちょっとややこしくなってくるのですが、”当時起きた出来事”が何だったのかを見せるシーンとしては有効ですね。
それはいいんですが、いじめっ子たちの顔が傷だらけだったのはなぜか?
すでに少女が”片付けた”のか?だとしたらその描写が全くない!
ツッコミポイント:なぜ電車利用
主人公の姉が恋人とうまくいっていない様子から、元気づけてやろうとおいしいものを食べないかと提案する優しい弟。隣町まで買いに行くといい、1時間に数本しかこない電車に乗って、二駅先の街まで買い出しに行くことになります。
そして、電車を待つ弟は少女にホームから突き落とされて、電車に轢き殺されてしまいます。
いや、きみバイクで田舎に戻ってきたんやからバイクで買い出しに行けよ!
わざわざ電車に轢かれる演出のために電車を使ったようにみえて、あまり釈然としませんね。
ツッコミポイント:イジメ方の弱さ
終盤、少女をいじめるガキ大将一味は、筆を使って少女の手をコチョコチョとこそばしてイジメるのですが…それどんなイジメや!
そのイジメに耐えかねて、少女は階段から飛び降りるという流れなのですが、”筆でコチョコチョ”は飛び降りる理由付けのイジメとしては弱すぎます!
ツッコミポイント:そもそも論
冒頭のシーン、あの頃同級生が死んでしまった”その踏切”で少女に手を掴まれたのに、なんの違和感もないんかい!
見覚えある少女のはずなのに、なにも思い出さないのか?!
小ネタ
キャスティングで目立つところでいうと、主人公たちに復讐する少女は、子役時代の鈴木杏が演じていますね。また、母親のおばらしき人が登場しますが、前作「旧日本軍の病院」に出演していた呪いのバーサンなので、なんだかソワソワしてしまいました(笑)
寸評
やはり稲川怪談とはかけ離れているなあという印象を持ちましたが、前作の「サーファーの死」ほどはひどくない。演出的にツッコミポイントは多くあるものの、まあまあまとまった恐怖映画という感じ。
前作同様、強めのグロ描写があるところも見どころ。とりわけ、電車に轢かれた弟の肉片が、踏切の遮断棒に引っかかって主人公の目の前に降りてくるというシーンは、かなり残酷な仕上がりになっています。
やっぱり弱い要素としては、少女が主人公と弟と犬に復讐していくという理由付けですよね。「いじめられているのを無視された」だけで、一家全殺しにするほどの憎悪になるものでしょうか。
母親が倒れたところから話は始まりますが、「ちょっと前までは元気だったのに」というセリフがあることから、少女の毒牙がかかったものと推測できますし、既に亡くなっている父親ももしかしたら…なのかもしれません。
復讐するならいじめっ子に対してでは?主人公一家を逆恨みするのは筋違いだろう!とも思ったのですが、もしかしたら前述の通り、いじめっ子たちはすでに処理済みかもしれません。
もしそうなのだとしたら、いじめられっ子はすでに死んでいることにも触れておいた方が、「今度はお前の番だ」的に主人公が狙われる理由にもなるんじゃないかな。
って真面目に論評してどうする。
「まちぼうけ」
『稲川淳二の怖~いお話 Vol.1霊界への扉』で語られた「幽界の間」の映像化です。音源とほぼ相違ない作品に仕上がっていますので、完全映画化といっても差し支えないでしょう。
ストーリーをざっと紹介
ドラマの撮影で座長たちスタッフ一行は温泉街に訪れます。その日の撮影を終え、とある旅館に宿泊することになるのですが、スタッフが喫茶店のばあさんに聞いた”開かずの間”へ肝試しに行くことになります。
その”開かずの間”は、かつて病気になって旅一座の見捨てられた親子たちが心中したという部屋で、部屋に入った座長たちの前に、恨めしそうに登場するのでした。
寸評
お話しの流れ的には、まったくツッコミポイントはありませんし、稲川怪談の完全再現といってもよい素晴らしい出来栄え。しかも座長が主演とあって、稲川怪談マニアにとっての満足度は非常に高いと思いますよ。(Wikipediaによると、実際に体験した旅館で撮影しているようです)
先の音源との違いは、「アベックが入った開かずの間を覗きに行く」エピソードがないこと、「部屋で休んでいる座長の身に起こる不思議な体験」は、旅館の仲居さんに脅かされるというギャグシーンに差し替えられている二か所ぐらいでしょうか。
また、開かずの間へ肝試しに行った座長含む4名が体験する恐怖シーンは、何かよくわからない皮膚や皮をめくるようなグロシーンがあって、こちらも気持ち悪い演出になっています。前作『心霊』もそうなのですが、生肉をぐちゃぐちゃといじくるようなイヤ~なSEが耳に残りますね。
座長は東京へ帰るロケ車の中で、立っている親子3人とすれ違いエンディングを迎えます。
あの親子は迎えを待ちつづけていたのでしょう。ひなびた小さな温泉町に、ある日やって来た我々は、現在の旅芸人一座なのかもしれません。
そして、この二、三年のちに秘湯ブームが到来した。
『心霊2』のエンディングテロップから引用
秘湯ブームの文章はなくてもいいんじゃないかな?(笑)
まとめ
前作『心霊』よりも満足できる内容でした。特に「まちぼうけ」の方は稲川怪談の再現度も高く、座長による貴重な役者演技がみられて二度美味しい作品になっていました。
稲川怪談のファンのみなさんにも、amazon prime videoでみられるうちにチェックしてみてほしいです!(忙しい方は「まちぼうけ」だけでも!)
引き続き、稲川怪談&稲川怪談の映像作品をウォッチングしていきますので、どうぞよろしく!
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