【22冊目】プロレス村外マスコミとレスラーの独特の距離が心地いい『週刊プレイボーイのプロレス』佐々木徹

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この本ナンダ?!

本書タイトルだけでは何のことやらよく分からないが、かつてプロレスが熱かった時代に週刊プレイボーイが扱った(ダジャレではない)プロレスラーのインタビューをまとめた一冊。

インタビュアーは佐々木徹氏。「I編集長」や「ターザン」でもなければ「GK」や「熱血プロレスティーチャー」でもない。よくあるプロレスマスコミのそれではなく、一般雑誌の編集者なのである。

佐々木氏は週刊プレイボーイのスタッフとして同誌のプロレスラーインタビューを担当。本書はそのインタビューのベストアルバムという位置づけになっている。

独自視点のプロレスマスコミ

考えてみればプロレスには独自のマスコミが存在し、かつては互恵関係にあったと言っても良い。今はマスコミにとってプロレスがそれほどお金にならなくなってしまったから、そうした特殊な関係性を感じる機会は少ないかもしれないが、当時は「持ちつ持たれつ」な関係であった。

帯にある「プロレスマスコミの喉元を食いちぎる記事を作れ!」が週刊プレイボーイのプロレスインタビューの骨子で、プロレス的な煽りや宣伝に留まらない旧来のプロレスインタビューとは異なるレスラーの本音を引き出している

インタビューは聞き手(佐々木氏)の軽妙な語り口や合いの手が混ざっており、『紙プロ』ほど嫌味や小ばかにした感じはまったくない。「信頼できる詳しい素人」が素直で真面目、時にヤな質問をしたりもするが、ファン代表の質問という具合で悪くない。

何よりトップレスラーが心を許した(ように感じる)会話が心地よく、プロレスマスコミのそれとは圧倒的に違うし、かといって仲良しこよしなムードはなく『週刊プレイボーイ』の傘に守られてあえて単刀直入にズバッと聞くシーンもある。

今更ながら週プロ・ゴングなど本流、ファイトや紙プロなどオポジション系に継ぐ「第三のプロレスメディア」の存在感を感じられる。

最高の距離感で…

インタビューは全日系、U系、新日系、インディー系、外国人と多岐にわたるが、三沢や前田、橋本や小川とは独自のスタンスで良好な関係を気づいたようで数回にわたって登場する。

馬場没後~NOAHは旗揚げまでの三沢インタビューや、1.4事変後の橋本×小川それぞれのインタビューは今もってしても読みごたえがある。

そして御大ジャイアント馬場のインタビューは御大自身がかなり突っ込んでいてこちらも面白い。

「プロレスラーが絶対にやってはいけないことは何か?」「新日本プロレスとの対抗戦」はプロレスマスコミではあまり語られないテーマではないだろうか。

キム夫人が明かす長州戦の真実

そして私が最も衝撃だった話題…。それはヒクソンVS長州の舞台裏だ。

ヒクソンのマネージメントはキム夫人が仕切っていたことは今では広く知られている。ヒクソンを神格化し幻想で守り固めるキャラクター演出が徹底していたと言えるが(ホテルでのインタビューが始まったら食べていたお菓子をサッと隠した…という逸話もある)、同じようなイメージ戦略の逸話、そして実現はしなかった長州戦交渉の舞台裏が明かされる。

詳細はぜひ本書を手に取ってほしいのだが、今ではファンに広く知られるヒクソンVS長州戦の知られざるエピソードに驚いてしまった。

このエピソードが事実だとする。そしてキム夫人が言っていることも事実だとする。そうすると新日本プロレスは相当なアホである…。

そして、ヒクソン夫妻にアホな選択をさせなかった佐々木氏のファインプレーには頭が下がる。私は新日信者だがこうしたifの歴史は目撃したくなかった。

佐々木氏は結果としてプロレスを守った立役者と言えると思う。

もったいぶって申し訳ないが、私にとっては衝撃のエピソードであった。

佐々木氏の熱い想い

前書きの自分語りが長いなあ…と感じながら読破したのだが、巻末のエピローグは胸に刺さるものがあった。

なるほど、そうか。それで前置きが長かったのか、と妙に納得させられた。

氏が駆け抜けた世紀末のプロレスと週刊プレイボーイは、いまやその存在がなかったかのように扱われている。そもそも週刊誌など時の風俗を面白おかしく時に真面目に報じるもので、流行ってもいないものを特集する意味もなければ、それを振り返ることすら無駄なのかもしれない。

だが、週刊プレイボーイ50年の歴史の中で無きものにされた『週刊プレイボーイとプロレス』は、Gスピリッツを手掛ける辰巳出版の英断によって永遠に生き続ける、といえば格好をつけすぎだろうか。

確かにそこに『週刊プレイボーイとプロレス』があった。

時代の空気とともに当時のマット界にぜひ想いを馳せてほしいと思う。

内容★★☆☆☆
赤裸々★★☆☆☆
ケーフェイ★★☆☆☆
レア度★★☆☆☆
必読度★★
☆☆☆

一言コメント:
太平洋上略奪事件の清算はついに叶わなかった…。そのエピソードも素晴らしいです!

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