室内を歩き回る謎の足音…初期の傑作人形怪談、先住者は押さえておこう!『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談 Selection10 先住者』

稲川淳二の怪談を整理する、怪談!稲川倉庫です。

今回は、『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談 Selection10 先住者』を整理!
(CD発売日:2010年6月4日)<MNT-10>

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『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談』シリーズ

同シリーズ10枚目の作品。ついに10作目までやってきましたね。

キリのいい10作品目でメモリアルを意識してか、新旧入り混じった作品になっていますよ。

『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談Selection10 先住者』

稲川淳二の怪談。
唯一無二のその軌跡を収め続けた”MYSTERY NIGHT TOUR SELECTION”。
記念すべき10作目が充実の内容で、堂々完成!

公式ホームページから引用

懐かしい実体験怪異談「先住者」をリードナンバーに、芸能界噂話シリーズの「置き忘れた台本」、過去作のいいところどりをしたような「エアマット」、既にお馴染みJリーガー山田さん案件「夕食の誘い」や、タイトルからは想像がしにくい「北川病院」など、大満足の全6話に仕上がっています!

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先住者(1996)

友人の引っ越し先で起きた度重なる怪奇な出来事。
懐かしくもあり、忘れる事のできない不思議な体験でした。

公式ホームページから引用

ずいぶん昔の話なんですが、座長の学生時代から友人でデザイン関係の仕事をしてる方なんですけどね。

横浜で2か月ほど現場仕事があるんだそうですよ。通えない距離ではないそうですが、学生時代のように一人暮らしをしてみようかな、ってことになった。

で、座長が「引越しの手伝いに来ないか」って誘われたわけだ。友人たちが集まってみんなで手伝うことになったんです。

そこは横浜駅から数駅東京方面にある、木造モルタルの懐かしい長屋風のアパートなんです。部屋も街並みも、学生時代のあの頃のような雰囲気で、懐かしくって盛り上がっちゃった。

無事に引越しが終わったんですが、そのまま昔の気分に戻っちゃって。その部屋で飲むことになったんです。流れでみんな泊ってくっていうんですけどね、座長は芸能人は忙しいって帰っていった。

でね、そこに泊まった友人が、翌朝奇妙な体験をするんですよ…。

一言コメント(ネタバレ注意)

思い返せば、私が稲川怪談の虜になったきっかけはこのお話でした。

稲川怪談の大定番!友人の引越し先で巻き起こる人形にまつわる怪談。実情を知ってしまうと悲しい怪談ともいえます。

今では「先住者」というタイトルが一般的ですが、『怖いから聞かないで』の別名「引越しの怪」です。「引越しの怪」というと、引越し中の出来事のようにも錯覚しますから、「先住者」の方が話の内容に合っていますね。

タンスの中に子供がいる!って考えようによっては大反則ミスリードのように感じなくもないんですが、そんなことはどうでもいいほど登場人物たちが凍り付いてしまう描写が素晴らしい

私はことあるごとに、初期稲川怪談の何をいっているのか聞き取れないぐらいの、暴走超特急話芸が好きだと公言していますけどね。

勢いに任せてボルテージたっぷりに暴走する初期バージョンと、落ち着いて丁寧に語る円熟の後期バージョン。ぜひ聞き比べて下さい!

あ、本バージョンでは引越しした家主が「結婚で失敗した」ことには触れていません(笑)

引き戸がタンスで隠されていたのも妙ですよね…。
稲川淳二メモリアル「遺言」

公式YouTubeチャンネルにもアップされています!

置き忘れた台本 (1997)

歴史のある、大阪の老舗の劇場。
灯りのない深夜の楽屋通路で、私の大先輩が体験されたお話です。

公式ホームページから引用

腕っぷしが強くてケンカっ早かった芸能界の先輩である、Jさんが体験したお話なんですがね。

大阪の老舗劇場で約1か月続く公演に出演していたJさん。その日の公演が終わると、御贔屓というかね、地元の後援会の方が席を作って待っているんですよ。で、夜は宴会になるんですよね。

夜の席も無事に終わって、タクシーでホテルに戻る際中。台本がないことに気づいた。Jさんは毎朝台本を読むルーティンを欠かさないので、仕方なく劇場へ取りに行くことにしたんですね。

劇場の楽屋へ続く暗い通路で、Jさんを襲ったものは…。

一言コメント(ネタバレ注意)

本バージョンではJさんとなっていますが、他の書籍などには”ジェリー藤尾”であることが明らかになっています。「遠くへ行きたい」で有名なジェリー藤尾ですね。若い人には(というか私も)あまりピンとこないかもしれませんが、確かにこの方は芸能界ケンカ自慢でけっこう有名な方です。

劇場の裏口へ回って警備員に声を掛けてひとり楽屋へ向かったのですが、何故か突然灯りが消えてしまう。窓もない真っ暗闇の通路で、Jさんは何者かに足を掴まれて、そして正面から得体のしれない音を発する何かがやってきます…。

このシーンは、座長が「コシャコシャコシャ…」と文章では表現しにくい鳴き声(?)を語ってくれています。

劇場の楽屋は通路は入り組んでますから迷わないように…。

曰く付きの家(2009)

関西に住んでいる知人が、探してくれたんですよ。
噂になっている「曰く付きの家」をね。
悪い事しちゃいましたね…。

公式ホームページから引用

近畿地方南部にあるという曰くつきの家。

大阪に住む座長の友人が、車を運転して探しに行ってくれたんですよ。次の日が休みという前日の夜なんですが、次第に雨粒が落ち始めて、遠雷がとどろき始めた。

目的地に近づくころには雨風が強くなってきて、あたりは夜の闇に包まれている。簡単に考えていたんですが、車で夜を明かすわけにもいかないんでね。仕方なく泊まれるところを探して、ようやく小さなホテルを見つけたんです。

支配人に聞くと、シーズンに向けて改装中だっていうんですけどね。まあ一晩泊まれゃいいってんで、泊めてもらうことにしたんですよ。

モダンなアパート風のホテルなんですが、部屋に入ると焦げたような改装中の臭いがしている。外の夜は相変わらず激しい雨と雷の閃光が走っているんですね。

布団に入るとすぐに眠ってしまったんですが、どのぐらい時間が経ったのか、ベッドの脇にある部屋の電話が鳴っている。

「…はい」受話器を持って応答すると、「お連れ様が、お見えになりました…」

友人は一人で気のままにこのホテルにやってきたし、このホテルに泊まっていることは誰にも伝えていない。間違い電話かなとも思ったんですがね…。

次第に、雨音に混じって靴音が近づいてきた…。

一言コメント(ネタバレ注意)

怪談のパターンのなかで、「霊からの電話」モノってありますよね。以前紹介した「グラウンド」「真下の住人」、大昔の稲川怪談でいうと「メリーさんの館」とかもそうですよね。

覚えない電話があって、その電話の主がやってくるという…。

今回の主は焼け焦げたざんばら頭で登場するんですが、どうやらすでに曰く付きの家に泊まってしまっていたようですねえ。

招かれざる客っていうんですか?決して開けてはいけないですよ…。

エアマット (2008)

時代が変わっても、夏の海辺はいつも盛り上がってますよね。
そりゃあ楽しいですもんね、開放的な気分にもなりますし。
でも気をつけて下さいよ。
だって海の中までは目で見えないですからね…。

公式ホームページから引用

浜辺で行方不明者の捜索をしているその沖に、プカプカと浮かぶエアマットを見つけた。持ち主がいないエアマットに乗ってしばらく遊ぶと、そのまま合宿所へ持って帰っちゃった。

その日の夜、エアマットに乗って沖へ出ていった男が水死体になって上がったっていう話を聞いた。

「あのエアマットじゃないだろうな…」って思った。

翌日、仲間の内山君が、そのエアマットを持って泳ぎに出ていった。エアマットに腹ばいになって揺られている内山君を見たんですが、そのあと内山君は夕食の時刻になっても戻ってこなかった。

寝静まった深夜になって、ずぶ濡れになって帰ってきた内山君がとうとうと語り始めます…。

一言コメント(ネタバレ注意)

この怪談を言い表すなら、「長い死体」×「北陸の海岸」!それぞれの話の良いとこ取りしたような内容になっています(笑)

無人のエアマットがもたらす因縁っていうんですかね?

乗せたものを死に追いやるエアマットとでもいいましょうか…。呪いのエアマットって考えるとすごく恐ろしいですよね。

”本当にあった話”かどうかはさておいて、しっかり聞くとストーリーが理路整然としていてけっこうおもしろいですよ。しっかり起承転結がありますし、いろんなパターンを考える余地があるオチも魅力的です。

ただ、やっぱり突っ込ませてもらうとすれば、夜中にずぶ濡れで帰ってきて、自分の臨終の様を語り終わって部屋を出ていった内山君に対して、「あいつ、シャワー浴びて着替えてくるんだな」とは、主人公はいささかノンキすぎやしないか?!笑

エアマットに揺られているその人…本当に生きてる人間なんでしょうか…。

夕食の誘い(2003)

大した面識もないような人から、お食事に誘われたら…。
あなたはどうしますか…?
気をつけましょうねぇ。

公式ホームページから引用

元Jリーガーの山田さんのご友人(Aさん)が大学生の頃に経験した話なんですよ。

Aさんは学生が多く入居しているマンションに入ったんですがね。しばらく経ったころの夕方に、突然若い男が1人訪ねてきた。

男は2階に住んでいる佐野だと名乗り、夕食を食べに来ないかって誘ってきた。面識がない見ず知らずの男なんですけど、みるとどうやら学生のようで、お近づきにしるしってことかなと快く受けることにしたんです。

2階の部屋へ尋ねるとすでに夕食の準備をしてあって、席に座るとニコニコしながらご飯をよそったんですが、一向に自分のご飯をよそおうとしない。

男は「どうぞ、やってください」とAさんに食事を進めるばかりで、どうも食べにくいわけですよ。

仕方ないから自分1人で食べ始めたんですがね、男は食べないばかりかどこかに電話を始めた。

こちらをチラチラとみては、「いま、きてます。連れてきましょうか?」なんていって誰かと話している。電話が終わって席に戻ってくると、次第に宗教の話を始めたんですよね。

佐野という男は、Aさんを宗教に勧誘したかったんですがね。

恐ろしいのは、そのことだけじゃあなかったんですよねえ…。

一言コメント(ネタバレ注意)

「スーパーマーケットの加工場」「古い指輪」に続き、元Jリーガーの山田さんシリーズ第3弾

このお話は「勧誘」というタイトルでも有名ですね。どちらのタイトルでも怪談の趣旨には沿っています。

既に他界した宗教に熱心だった学生が、死してなお勧誘活動にいそしむという考えようによってはとても敬虔な信者なんですが、この佐野さんは自殺しているっていうんだから話がややこしい

そして、主人公のAさんが佐野さんの部屋で食べた夕食とは一体何だったのか…。

霞でも食っていたのかという気がしないでもないですが、幻覚という一言で片づけるのはちょっと惜しい話です。

それにしても座長の勧誘文句「宗教いいですよ、入りませんか?」…いいですよってなんやねん!って思ってしまいました(笑)

今も昔も、あの手この手であなたの心のスキマにお邪魔します…。
稲川淳二メモリアル「遺言」

公式YouTubeチャンネルでも語られています。

北川病院(2008)

いつも言ってますが、絶対に近づかない方がいいですよ。
“心霊スポット”などと呼ばれているような廃屋にはね。
あなたが平気でも、お連れの方が正気であるとは、限らないですからねぇ…。

公式ホームページから引用

頭の狂った病院長のひとり息子を隔離した別荘が廃墟になっているという噂を聞いて、仕事終わりに車でやってきた後藤君と太田君。

「北川家私有地」と書いている立札が倒れていて、その先には錆ている鉄の門扉がある。軽ワゴン車を止めて、北川病院院長の別邸という廃屋にやってきた。

開いている裏口から中へ入っていくと、建物内はかすかに異臭がする。

急に太田君が早足になって階段を上がっていく。後藤君がそのあとを追っていくと、窓に鉄格子がはまった部屋で、太田君がこちらに背を向けて立ちつくしていた。部屋を見ると壁も床も天井も、燃えた跡が残っている。

「おい…ここだよ…。頭の狂ったひとり息子が自分で火を放って焼け死んだって話だぜ」

すると太田君が「いや、それはでっち上げられた話だよ。真実はこうさ…」

2人はその部屋にいる”なにか”に導かれるように、知るはずもないそこで起こった悲劇を語り始めた…。

一言コメント(ネタバレ注意)

2人は頭に浮かんだ話を空想で語るんですが、2人ともまったく同じことを考えていたっていうんですよ。やっぱり、親族に殺されたひとり息子の私怨が、彼らの声を通じて真実を炙り出したんでしょうねえ。

一方で、私は集団(といっても2人ですけど)ヒステリーの可能性もあるんじゃないかなと思います。好き勝手にありもしない出来事の話を進めて、2人ともあたかも本当にあった出来事のように錯覚してしまって、彼らこそがおかしくなってしまったのかもしれないですよねえ…。

今も昔も、廃墟に行くことはオススメしませんよ…。

さいごに

いかがだったでしょうか?

ミステリーナイトツアーシリーズのスタジオ収録盤Selectin10!

初期の実体験や芸能人の怖い話、さらにはじっくりと聞かせる「エアマット」のような話もあり、贅沢な作品に仕上がっていましたね!

ミステリーナイトツアーシリーズの紹介はまだまだ続きます。また、お付き合いくださいね。

それじゃあまた。次の怪異でお会いしましょう。

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