今回は、石井輝男監督作品、主演:丹波哲郎のスプラッター時代劇『ポルノ時代劇 忘八武士道』を紹介します。もともとは成人映画、今でいうR-18指定作品です。いつもの新文芸坐、丹波哲郎特集で観てきました。
江戸時代が舞台のスプラッター時代劇
腕が飛ぶ!耳が飛ぶ!首が飛ぶ!お江戸の街に舞い上がる!
沢田研二の『TOKIO』っぽくなってしまいました。いやいや時代劇なんだから、そこはカブキロックスの『OEDO』でしょう、などと本編に関係ないコダワリから始まってしまいましたが『ポルノ時代劇 忘八武士道』です。
原作は時代物劇画漫画の大御所、小池一夫。監督はエロとグロの石井輝男(グリとグラみたいにいうな)、主演は『大霊界』の丹波哲郎(いや他にももっと代表作があるだろ!)。
丹波哲郎演じる、人斬り死能が斬って斬って斬りまくる!
吹っ飛ぶ肉片!噴き出す血潮!残酷エンターテインメントな昭和の和製スプラッターの名作です。
また、残酷なだけではなく、舞台が遊郭なだけあって、とにかく女性の裸がたくさん出てきます。そんな意味でも成人映画。なんたってポルノ時代劇ですからね。
それから、僕らのアンヌ隊員(ひし美ゆり子)の超大胆な濡れ場もあります。
というか、アンヌ隊員はほとんど裸のシーンばかりです…。
時代劇×スプラッター×エロが好きな方には超オススメです。
『忘八武士道』のあらすじ
忘八者の仲間入り
“人斬り死能”と恐れられている主人公:明日死能(丹波哲郎)は、役人に追い詰められていました。冒頭から1vs3のローンバトル。夕日バックに斬られて吹き飛ぶ役人の体。そこにオープニングテロップが流れます。
3人は片付けたものの「御用だ!」と大勢の役人が橋を囲みます。万事休すというときに「死ぬも地獄、生きるも地獄」と橋から川へ身を投げますが、吉原遊廓の忘八者、袈裟蔵(伊吹吾郎)に助けられます。
“忘八者(ぼうはちもの)”とは、八つの徳、「孝、悌、忠、信、礼、義、廉、恥」を全て忘れた無法者たち、アウトロー集団のこと。冷えた体は女の人肌が最適…なのだそうで、吉原イチの遊女に体を温められる死能。うらやましいけど、全然反応しない死能!不全なのか?!
拾われた死能は、事情がわからないまま袈裟造による忘八者入門テストを受けることになります。そこに登場するのが町娘に扮した女忘八・お紋(ひし美ゆり子)。町娘のオークションが始まりました。
ああ!アンヌ隊員の体があらわになって、手足を縄で縛られてセリにかけられる!
ここにペガッサ星人が居たらどんなにうらやむでしょうか…。
見かねた死能はお紋を50両で買うことにしますが、どスケベじじいとは違いお紋の体には触れようとせず。死能、やっぱ不全なのか?!
その後、このオークションは実は忘八になれるか適性を見るテストだったと明かされます。結果的にお紋を助けるかっこうになってしまいました。残念、鬼畜外道にはなれませんでしたねとタネ明かし。
死能は腹が立ったのか、その場にいた無関係の女忘八の耳をスパっと早技で斬っちゃいます!まさに”むしゃくしゃしてやった”状態。
忘八適性試験には落ちたものの、そんなこんなで元締めである吉原総名主・大門四郎兵衛に気に入れられ忘八の一味となり、ある仕事の依頼を受けます。
死能の襲撃
そのころ、吉原遊郭以外でも、湯女・茶屋女など非合法の売春行為が盛んになっていました。幕府に上納金を納めている”合法な”吉原としては、私的に体を売る店をつぶす機会を狙っていました。
死能を売女潰しに利用しようとし、初代首斬り浅右衛門(誰だソレ)が使ったという大刀“鬼包丁”を死能に与えます。死能は次々と非合法売春宿を襲い、買春客を斬っていきます。このあたりは湯場のシーンが続きますので、素っ裸の女性が大量に出てきます。楽園っすね…。
死能をつけ狙う追手
元締めである大門は、役所が動くことを期待して、死能を派手に暴れさせます。反して役所は大門との正面衝突を避けるため、黒鍬者と呼ばれる忍者を使って死能の命を狙います。
死能にはマネージャーが付いていて、暗い夜の中「そばでも食おう」と屋台に立ち寄るのですが、そこにヨロヨロとリヤカーを引いた男が近寄ってきます。やおらリヤカーがこけて積んでいた荷物が散乱、中には重油、良きところで蕎麦屋のオヤジが火を放つ!素晴らしい連携技。焼け始めるマネージャー、あやうし死能!
そこに、くのいちよろしく女忘八5人衆がやってきて、ゴロゴロと炎の上を転がりはじめ消化完了。大門の命令で、女忘八者5人衆が死能を護衝していたのでした。女忘八は焼けた服をハサミで切って丸裸に…。では、と江戸の町をスッポンポンでスタスタと去っていく女忘八5人衆、シュールすぎるぜ!
用なしとなった死能
一方、大門は売女を吉原に差し出したら賞金を出すとのお触れを出します。
茶屋では相次ぐ女の略奪が始まりますが、そこで役所の仲裁が入り、非合法売春も含めて大門の総支配下となることで手打ちにすることになります。まあ、出来レース的な展開で結局大門がおいしい思いをしようという作戦だったわけですね。
そして大門はすでに邪魔な存在となった死能に対して、女忘八集団を使い阿片漬けにしようと仕掛けます。死能の慰労会を催しお紋が色仕掛け…そこに女忘八者5人衆も加わり、全身リップサービス!まさに酒池肉林。さらに口移しで阿片入りの洋酒を死能に飲ませていきます。次第に意識が遠のいていく死能…。
ラストシーン
そこにやってくる大門。ピストルで大門を威嚇するものの死能に奪われて反撃を食らいます。死能からむりやり阿片を吸わされて廃人となり、地下牢にぶちこまれることに。
阿片漬けになった死能はもうろうとした意識の中で吉原を歩きます。元の仲間であった忘八者や役所の追手に囲まれる死能。どんどん意識がもうろうとする中で、死能は自らを傷つけて目を覚まし覚醒。斬りまくります。勝ち目がないとわかった敵陣は、死能が阿片切れによって廃人になるの待つため退散してしまいます。
誰もいなくなったその場所で、雪降りしきる中。薄れゆく意識の中で死能は刀を地面に突き刺したまま、ひとり立ち往生するのです。
舞い上がる雪が集まってきて「完」の文字になって映画は終了します。「完」の文字を作ってから、風で吹き飛ばす逆再生なのはお約束ですね。
本作の見どころ
さすがの成人映画、エロシーンがいっぱいあります。
アンヌ隊員を演じたお紋役のひし美ゆり子もほとんど丸裸。モブキャラ含めてほとんどの女性が裸になります。そして白人外国人を女5人衆で攻め立てる謎のレズビアンシーンもある。本編に脈絡ないシーンも含めて、石井輝男監督のサービス精神には脱帽!
丹波哲郎演じる明日死能(あすしのう、という意味なのか?)はほとんどセリフめいたものはありませんが、その存在感と殺陣のシーンだけでめちゃめちゃカッコイイ。キャラが立っているといいますか、最後の果てるシーンも含めて男前です。
私にとって丹波哲郎といえば「霊界通の変なテレビタレント」という印象が強かったのですが、役者・丹波哲郎はクールで色っぽくて渋い役者だったんですね。
本作『忘八武士道』はなかなか見る機会がないかもしれませんが、是非チェックしてみてほしい作品です。
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