胡散臭いと思うあなたにこそ読んで欲しい!書評『人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた』大槻ケンヂ/山口敏太郎著

みなさんは、オカルトやプロレスと聞くと、どんな言葉をイメージしますか?
嘘、デタラメ、フェイク…いやいや、真剣、本気、リアル、などなど。

物事には、肯定と否定だけの二元論だけではなく、怪しいなあと思いながら懐疑的に楽しむスタンスもあります。または、もっと俯瞰的に、肯定・否定・懐疑を含めてジャンル自体を楽しむスタンスだってあります。

本書『人生で大切なことはオカルトとプロレスが教えてくれた』は、それらを正しく楽しむための見方を案内してくれる1冊です。

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こんな人にオススメ

  • オカルトやプロレスに”怪しいイメージ”を持っている方
  • 昭和のテレビ番組や出来事のネタで笑いたい方
  • 宇宙人やUFOに興味がある方(けど割と否定的な方)

本書は都市伝説などのオカルト研究で有名な山口敏太郎氏と、ロッカーでありながら大のUFO研究家である大槻ケンヂ氏の対談本です。

冒頭、昭和特撮とオカルトの関係性や、テレビ番組「水曜スペシャル」での如何わしいUFO・UMA・超能力・終末論などに触れられます。そこから、昭和プロレスの「お約束」的な決まり事や、ズンドコ事件にも触れていき、オカルト的・プロレス的なもののヤオ/ガチ論争に展開していきます

霊は存在する、UFOは地球に来ている、プロレスはリアルファイトである、といった、妄信的な信者のことを本書では”ビリーバー”と呼んでいます。要は、何もかも信じきっちゃう人のこと。

プロレス内には、プロレス的お約束事があります。例えばジャイアント馬場が片足を上げたら、対戦相手は吸い込まれるように上げた片足に突っ込んでいきますし、アントニオ猪木が延髄斬りを繰り出せば、うまく当たっていなくても対戦相手はカウント3を取られるわけです。

かといって、プロレスがおもしろくないかと言えば、そうではない。
エンターテインメントとして、その如何わしさを受けて入れたうえで、プロレスというジャンルを楽しんでいる。UFOは地球に来ている!と騒いでも、どこか冷静に、ちょっと悪くいうと斜に構えて物事を判断することができる。

来ているか来ていないかの二元論ではなく、来ているしたら、いつ・どこに・何のために来ているのか?また、来ていない派の意見にも耳を傾けて、エンターテインメントに消化することができる。
実のところは来ていようが来ていまいが関係なくて、UFO論争という事実そのものがエンターテインメント化してくるのです。

如何わしいものの正しい見方とは

以前読んだプロレス本の中に、プロレス団体は観客のことを3種類に分けていると書いてました。(もちろん、事実かどうかはわかりませんが)

プロレスのことをリアルガチだと思っている人=マーク
怪しいぞと思いながらも見ている人=シュマーク
仕組みを理解し、エンターテインメントであることを受け入れている人=スマート

オカルトも同様の構図が成り立つのではと思います。とりわけ、本書ではマークにはならずスマートな見方を推奨しています。
とはいえ、世の中では理解できない不思議なことがあるし、また陰謀論も完全に否定できない側面があると。それってある種のロマンですよね。週刊ファイトの編集長の言葉を借りれば、「底が丸見えの底なし沼」です。
社会においても禍々しい陰謀が蠢いていると山口敏太郎氏のサラリーマン時代の実体験も語られています。

大槻ケンヂ氏のファンである私にとっては、初出の話は少なかったものの、スマート的な見方ができる人であれば、多くの話を受け入れることができるでしょう。笑える話がたくさん載っていますので、あっと言う間に読み終えてしまうと思いますよ。
(それにしても、中邑真輔の片ヤオ話は事実なのだろうか…)

また、UFOや心霊を含むオカルト全般、プロレスや武道を含む格闘技全般、特撮やアニメ含む1970年代の昭和テレビ番組について、たくさん触れられていますが、けっこう詳しくないと全文理解するには難しいと思います。とはいえ、そちらの造詣が深い方であれば、より一層ソチラの知識が付くこと間違いなしです。

逆にいうとビリーバーの方にはあまりオススメしません。場合によっては馬鹿にされている!と感じてしまうかもしれません。著者たち(含めスマートな人たち)は、虚構と真実にある狭間の部分の存在を楽しんでいるわけですが、真実のみを追求される方にはあまり聞こえが良い話ではないかもしれません。

ウィルスや戦争など、メディアが発信するニュースを正しく受け取るリテラシーが必要とされる時代に、オカルトやプロレスが教えてくれる物事の判断力はきっと活かされると思いますよ。

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