恐怖!儚く悲しいお岩さんの復讐劇、中川信夫監督版『東海道四谷怪談』を観た!

5月の大型連休も終わり、最近暑くなってきましたねえ。こうなるとちょっとでも涼しくなりたいもんですが、電気代も高くなっているし、エアコンをつけるには5月が始まったばっかりでまだ早いし…

こうなりゃ怪談で涼しくなるしかないっしょ

というわけでAmazon Prime videoにて1959年中川信夫監督版『東海道四谷怪談』を観ましたので、紹介します!

この1枚だけでもすでに怖い。
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こんな人にオススメ

  • 日本の古典怪談に興味がある方
  • シンプルな恐怖映画を観たい方
  • 怖い気分で涼しくなりたい方

皆さんは四谷怪談をご存じですか?もともとは実際にあった事件をもとにした創作怪談で、歌舞伎や落語の演目として有名だそうですが、戦後に怪談映画の定番としていくつか作られたようです。

私は高岡早紀のムフフシーンがある『忠臣蔵外伝 四谷怪談』を連想しますが、もっとも直近では唐沢寿明主演の『嗤う伊右衛門』(伊右衛門とは四谷怪談の主役)があるようで、新旧四谷怪談の映画はたくさん存在します

その中でも本作、はコラムニストの竹内義和氏と怪異収集家の中山市郎氏のYouTubeチャンネル「オカルト解体新書」で話題になっていたものですから気になっておりました。とにかく、お岩さんの表現が凄まじく怖い!とのこと。

また、私の邦画視聴のバイブルでもある『アナーキー日本映画史1959-2016』でも紹介されており、総じて高評価。
そして!Amazon Prime Videoでも視聴可能であったため、蒸し暑い夕暮れ時に視聴しました。

本作、数ある四谷怪談モノでも突出して評価が高く、ホラーモノ全般としても傑作として名高いようです

私のバイブル。とにかくこの本で紹介されているものは機会があれば観ていってます!

映画の内容(ネタバレ含みます)

ネタバレ、といっても日本人の多くが知っているであろう四谷怪談

ですが、実は私はそこまで詳しくストーリーを把握していませんでした。
お岩さんが不幸な目にあってしまって、主人に復讐するー その程度の理解でした。
どうも、皿の枚数を数えていく番町皿屋敷とごちゃまぜになっていたようです。

ざっくりストーリーを説明しましょう。

伊右衛門が惚れたお岩さん

主人公の浪人・伊右衛門はお岩さんと結婚することになっていましたが、お岩さんの父親に結婚話を反故にされ、さらに浪人の立場を侮辱されてしまい、プッツンきてズバッと斬ってしまった。そこにいた付き人もズバッと殺害。その場に居合わせた直助に「父は別人に殺されたことにしよう」と持ち掛けられ、伊右衛門はお岩さんと、直助はその妹のお袖と一緒になろうと企てます。

その後、女2人に良い恰好がしたかったのか、父を殺した犯人に仇討ちしようと嘘をつき、江戸へ旅立つことになります。そこにはズバッと斬られた付き人の息子で、お袖の許嫁である与茂七も同行することに。伊右衛門と直助は与茂七をえーい邪魔だと滝つぼへ突き落とす。

惚れたはずのお岩さんとの貧困暮らし

江戸に着いたが、仇討ちするも何も、父殺しは伊右衛門と直助の仕業であるから、いつまでたっても仇討ちは始まらない。貧乏暮らしの伊右衛門とお岩さんの間に子供が生まれ、さらに貧困にあえいでいた。そんなとき、伊右衛門は偶然チンピラに因縁をつけられていたお梅を助け、その父旗本の喜兵衛に気に入られてしまいます。

病気がちのお岩さんとの貧乏暮らし、お梅との裕福なハッピーライフを天秤にかけ、伊右衛門はお梅と一緒になろうかと悩んでいたところ、また直助がやってくる。お岩さんのことを気に入っている、あんま師の宅悦を間男に仕立て上げ、お岩さんを毒殺してしまおう!と。

お岩さんを毒殺、そして…

伊右衛門はその話にのることにし、直助が用意した毒をお茶に盛りお岩さんに飲ませます。すると、美しい顔がアバタに腫れて醜くなり、髪の毛が抜け、血が吹きだす…
醜い自分の顔を見たお岩さんは、伊右衛門への恨みを誓い、赤子を連れて自害する。そこにやってきた伊右衛門と直助は、事情を知ってしまた間男・宅悦も邪魔者だと斬殺し、2人を戸板に縛って川に流すのです。

心機一転、お梅との新婚生活が始まった初夜。伊右衛門の前には美しいお梅が…と思ったら、川に流したはずのお岩さんが!発狂した伊右衛門はズバっとお梅を斬殺!
どうしましたかと召使いの女性がやってくるが、これもお岩さん!ズバっと斬!
異常に気付いた男も心配してやってきたと思ったら、あんま師の宅悦!ズバ斬!
伊右衛門はお岩さんと宅悦の幻をみてしまい、お梅一家を斬殺してしまうのです。

亡霊となったお岩さんは、結局直助と一緒になっていた妹のお袖のもとを訪れ(この時は美しい姿)、滝つぼに落とされた与茂七が生きていることを告げ、お袖と与茂七(とお岩さんの亡霊)とともに伊右衛門・直助を追い詰めていきます。

何がしたいねん伊右衛門と、悪魔の男・直助

伊右衛門はひどいやつです。ひどいやつなんですが、イマイチ自我がないというか、自分でどうしたいのかわからないような、他人に流されてしまう優柔不断な男。他の四谷怪談では徹底した極悪人として描かれることも多いようですが、本作では極悪人というよりも、心の弱い男と描かれているようです。

そもそも最初の殺しは、お岩さんと結婚するためだったはず。なのに結婚したらお岩さんが邪魔になるとは…。それもこれも、すべて直助の助言に流されての行動。映画全体を見ると、お岩さんの亡霊などはすべて伊右衛門が見ていた幻で、自分のしてしまったことに押しつぶされた弱い自身の象徴なのかもしれません。勝手に伊右衛門が自滅した、という見方もできそうです。

そして、何よりも極悪なのは直助。悪魔の囁きとはこのことでしょう。人をバラすことをなんとも思っていない、超利己的な男。そもそも最初のお岩の父殺しを見られてしまったのが伊右衛門の運の尽きですね。世渡り上手というか太鼓持ちというか、現代にもこの手の悪人はいますね。

それにしてもこの2人、自分がやってしまったことがバレないと思っていたんでしょうか?本作では無計画かつ場当たり的な殺人が多いのですが、この時代はそんなもんだったんでしょうかね。

怪奇・恐怖表現が素晴らしい

お岩さんが毒殺されるシーン。毒を盛られ、醜く腫れあがった自分の顔を見てしまう。捨てられた儚い女の悲哀が、特殊メイクと役者さんの演技で恐ろしくも悲しく表現されています。そして、櫛で髪を磨ぐとバサっと抜け落ちそこから鮮血が噴き出す演出も怖いです…。

前のシーンで金目の物を探す伊右衛門に、母の形見である櫛だけは持ち出さないでと懇願していました。この後のシーンで妹のお袖がこの櫛を見つけることになりますが、女性の重要アイテムとして櫛が印象的に描かれていますね

亡霊となったお岩さんと宅悦が登場するシーンはまさにお化け屋敷状態。戸板に縛られたお岩が天井に登場したり、地面が割れて出てきたりと、ビックリするところから登場します。
え?こんなところから?というトンチ・大喜利的な登場シーンはないものの、当時でいうと結構斬新な表現だったんだろうと想像します。今観てもあまり古臭さは感じません。

その他、気づきポイント

伊右衛門役の天知茂の男性的美しさにウットリ。まさしく丸尾末広の漫画出てくる美男子というカンジ。年齢的にはオッサンだと思うのですが、時代劇が良く似合います。

それからお岩さん役の若杉嘉津子、毒を飲まされてから急に色っぽくなったように感じます。醜くなっているのになんででしょうか。亭主を取り殺そうとする女の執念がそうさせた?私の思い込みですかね。

それにしても、こんなに古い作品を家でゆっくり視聴できるなんて、昨今の動画配信サービスに感謝ですね。テレビ放送、名画座上映、レンタルビデオ、セルビデオ…などでしか見ることができなかった作品が、サブスクライブの見放題映画として楽しめますもんね。

作品がありすぎて時間がいくらあっても足りないですが、みなさんも古い映画を自宅で観る名画座ライフを満喫されてはいかがでしょうか?

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