【会場観戦】ついに引退…武藤敬司ファイナル!KEIJI MUTO GRAND FINAL PRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~

こんにちは!野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。

2023年2月21日…。プロレスリングマスター、武藤敬司ついに引退!

今回は引退興行を現地観戦しましたので、引退試合の模様をお届けしたいと思います!

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KEIJI MUTO GRAND FINALPRO-WRESTLING “LAST” LOVE ~HOLD OUT~観衆:30,096人

新日本プロレスの闘魂三銃士、全日本プロレスの四天王。時代が生んだスターたちが順番にリングを去り、残すは武藤敬司のみになっていましたが、その武藤もついに引退試合を迎えることになりました。

対戦相手は内藤哲也

対戦相手に選んだのは、新日本プロレスの内藤哲也

内藤もまた、武藤~棚橋の系譜を継ぐ天才レスラーではありますが、本音をいうと対戦相手としてはややインパクトが弱いと感じていました。

ですが、棚橋とはIWGPを巡って数度対戦していますし、中邑真輔とはグレート・ムタとして消化済み。オカダは天龍の引退試合を務めたこともあり重複感がある。現在の日本マット界において、メインを張れるレスラーとして内藤の選択肢は、さもありなんともいえるでしょう

武藤が天才レスラーであることはまごうことなき事実。ただ、イチレスラーとしての存在感が大きすぎて、後進の育成に積極的ではなかったり、明確な後継者といったレスラーがおらず、弟子にあたるレスラーがいないため、フォロワーに近い対戦相手になったことは少し残念ではありますね。(やはり対内藤はやや唐突感があります)

本来は諏訪魔やSANADA、KAIなどが引退試合に絡むことが出来ればよかったんでしょうけど、商売敵になるから後輩にもノウハウを教えないという、武藤流のレスラー観があったのかもしれません。(レスラーは自分が商品で個人事業主である、という観点があったのかも)そんな意味でいうと、後年の清宮海斗とのタッグは、後継者指名的なムードがあって少し違和感を感じちゃいましたね(笑)

内藤とは過去に対戦経験あり

内藤とは過去、2012年イッテンヨン東京ドーム/レッスルキングダムⅥ大会でシングルの対戦経験がありますが、当時の内藤はまだライオンマークを背負って入場するスターダムジーニアス時代でロスインゴ化前でしたから、あまり比較にはならないかもしれません。

とはいえ、当時の試合を振り返っておくと、内藤は例のノラリクラリな戦法ではなく、ハツラツで割とハイスパートなレスリングが中心。対する武藤はピークはとう過ぎ、ゆっくりキャリアの下降線をたどっているような時期でした。武藤は内藤にペースを掴ませることなく、シャイニングウィザードの乱れ打ちからムーンサルトプレスで辛勝しています。

武藤の壁はまだまだ高かった!という結果ですが、この日のイッテンヨンのメインイベントの後に、凱旋帰国したオカダ・カズチカが登場し時の王者棚橋に挑戦表明しており、武藤に勝てなかった内藤と、この後すぐ飛び級的にIWGP王者になるオカダとの差を如実に表した大会ともいえるでしょう。

”運命”の一戦

第8試合、PRO-WRESTLING “LAST” LOVEと銘打たれた武藤敬司の引退試合

フランク・シナトラの『マイウェイ』にのせた、武藤名場面を振り返る煽りVが最高に泣けます…。

会場観戦なのでまったく声は聞こえませんが、解説席には武藤とゆかりある関係者がずらり。今なお新日本プロレスのトップランナーである棚橋弘至、K-1の武尊、90年代の実況で彩った辻よしなり。紹介されないものの、長州や藤波、タイガー服部などレジェンドや野田元首相などの面々も駆け付けていました。

武藤引退試合の見届け人として、蝶野がお馴染みの入場曲『CRASH』しかも前奏付きのフルパッケージで入場!まさか、蝶野の入場が見られるとは…。蝶野は、「ガッデーム!I am Chono!」と吠えたのち、武藤へ労いのメッセージとともに観客へ武藤の応援をよろしくと伝え、解説席につきました。

対戦相手の内藤が入場。ファン時代、憧れの存在だったという内藤は、まさにデスティーノな展開で武藤の引退試合を務めることになりましたね。

いつも通りの入場も、ガウンのマントに”Gracias y Adios”と書かれた特別仕様!(ありがとう、そしてさようなら、という意味でしょう)

セコンドにはロスインゴの面々が。武藤全日本出身のBUSHIとSANADAですが、SANADAはタキシードを着ており、正装で来るとはなかなか律儀な男です(笑)

そして、いよいよ武藤敬司が入場!

武藤の入場

武藤入場はさながらムトージュークボックス状態。

私が理解できただけでも、<TRIUMPH~nWo TRIUMPH~OUTBREAK~TRANS MAGIC~HOLD OUT>、歴代の武藤入場曲を経て、近年改めてアレンジ版として使用していた『HOLD OUT2021』で入場!

※追記:ネット情報によると、<チャンピオン鷹~THE FINAL COUNTDOWN~HOLD OUTプロト~TRIUMPH~nWo TRIUMPH~OUTBREAK~TRANS MAGIC~閃光魔術~SYMBOL~HOLD OUT A~HOLD OUT2021>とのことです。

武藤は入場曲を頻繁に変えた方が儲かるという持論があるそうですが(笑)、やはりその時代時代で象徴する武藤の入場曲がありますから、ファンにとっての思い入れも様々でしょう。

私はスキンヘッドスタイルになったころの『OUTBREAK』が好きだったなあ…。

試合開始

試合開始のゴングがなると、かなりクラシカルな展開で試合が進行。武藤へ付き合うかたちでグラウンドの攻防が続きます。武藤は、隙をみてアキレス腱固めや得意のフラッシングエルボーなどで内藤を攻め立てます。

内藤はというと、首と肩への締め技で武藤の呼吸を奪っていく。弱点である足攻めはなくクリーンな試合運びでしたが、武藤を場外や花道に投げはなって自分のペースを掴んでいきます。場外の武藤へ飛んでいくとみせ、リング内から走り込んで…クルっと前回り受け身をとるいつもの挑発ポーズ…
が!握りこぶしではなくてプロレスLOVEポーズになっている!シビレる展開ですねえ!

ラフ殺法や足攻めも織り交ぜていき、試合は内藤がややリードする流れが続きましたが、やはり武藤がペースを掴むのはドラゴンスクリュー→足四の字固め!内藤も武藤同様、膝に爆弾を抱えていますが、両者すごい形相で足を締めあげ我慢比べ。武藤ファン、プロレスオタクであった内藤は、この瞬間を噛みしめているかのようでもあります!

中盤、武藤は内藤を抱えてシュミット式バックブリーカー!相手をリングに寝かせて狙うは…もちろんムーンサルトプレス!武藤はコーナーに足を掛けると観客の大歓声!

しかし、膝の踏ん張りが効かないのか飛べない…。体へのダメージもさることながら、やはり肉体的にもうムーンサルトプレスは厳しいのかもしれません。

武藤、怒涛の攻撃も…

さらに武藤は、盟友・蝶野のSTFを繰り出し、さらには引退試合でリングを去ることが出来なかった橋本の袈裟斬りチョップ→DDT、そしてプロレスリング・ノアの創始者である三沢のエメラルドフロウジョンまで敢行!そして得意のシャイニングウィザードをヒットさせるもカウント3を奪うには至らず。

さらに武藤は2度目のドラスク→足四の字の連携技を仕掛けますが、内藤はギブアップせずロープブレイク。やはりムーンサルトが必要か…とふたたびコーナーに登ろうと試みますが、内藤が届かないところまで距離をとって不発。勝負論でもメタ視点でも、この流れはなかなかうまい展開です。

ならばと雪崩式のフランケンシュタイナーを狙いますが、内藤が丸め込むように投げて抵抗し、こちらも不発。

勝機とみた内藤は、前後の”掟破り”シャイニングウィザードを連射し、やや不完全なもののデスティーノを完璧に決め、28分58秒ついに決着がつきました。

入場から試合中もずーっと”制御不能”な内藤でしたが、試合が決すると明らかに表情が変わっているのがとても印象的でした。あこがれの人を引退させてしまったという悲しみなのか、レスラーの最後をみとった儚さなのか…。普段みせない内藤の表情がそこにはありました。

試合後に帰っていくロスインゴ。マイクを取った武藤はファンへ感謝とお礼を伝え、ますますプロレス界はバク進していく!とエール。最後まで対戦相手であった内藤にコメントしなかったのが武藤らしいじゃありませんか(笑)

ボーナストラック

さらには、蝶野が試合前に語っていた「灰になるまで戦って」という言葉になぞらえて、「まだ灰にはなっていない、蝶野勝負だ!」というサプライズ!

同期入門・デビュー戦の相手である蝶野とは特別な関係であることは誰しもが知っていること。だけど、蝶野は入場時も杖をついていて、完全にリタイア状態。呼びかけられた蝶野はあっけにとられていますが、武藤はとにかくリングに上がれと催促。そして観戦に来ていたタイガー服部に試合を裁いてくれと依頼します。ここで、蝶野の旧入場曲『ファンタスティックシティ』が流れてきた!うお~なんという展開!

とりあえずリングに上がったけど、どーすんの?という雰囲気の中、リングには武藤・蝶野・タイガー服部の3人。武藤から上着とサングラスを取るように督促された蝶野、ついに覚悟を決めてサングラスを取ると、完全にレスラーの表情・佇まいに!早口で相手をまくし立てる懐かしい立ち居振る舞いで、本当にエキストラマッチが開始

さながら、武藤が後年プロデュースしていた、ベテランやOBを交えた興行「プロレスリング・マスターズ」の様相を呈してまいりました!などと辻アナが実況している様子。(観客席には聞こえないんだけど、オーロラビジョンに名調子が聞こえるような表情の辻アナが映りました)90年代の新日本プロレスの再現

エキストラマッチは、力比べからシャイニングケンカキック→STFで武藤がギブアップ。ごくごく短時間ではありましたが、武藤と蝶野が対峙しているだけで観客は大満足でしょう!

蝶野は公式には引退していませんが、実質フェードアウト状態が長く続いていて、このエキストラマッチは非公式ながら蝶野の引退試合といってもいいんじゃないでしょうかね

もしかしたら、武藤はちゃんとリングを降りられていない蝶野のことを気にかけていたのかもしれません。試合後、屈託のない笑顔で抱き合う両選手に、観客が惜しみない拍手を贈りました。

驚いたのは、杖を突いていた蝶野が試合中ハツラツとしていたこと。やはりリングの魔力なのでしょう!

最後は、古舘伊知郎から詩の朗読があり、武藤は自分の足で花道から去っていきました。

そして、ビジョンには恋人・三沢光晴と盟友・橋本真也とともに、直筆と思われるプロレスLOVEの文字で興行は締めくくられました。

不思議と湿っぽさはなく、無事に引退試合を終えられてよかった!と感じられる一戦でした。

武藤敬司さん、本当にお疲れ様でした!最高の作品をありがとうございました!

エモすぎる引退試合

武藤引退試合は、とにかくエモ場面が多すぎました…。見届け人の蝶野入場から始まり、ムトージュークボックス、武藤が繰り出すライバルたちの技、そして蝶野とのエキストラマッチ。

オカダVS清宮を見に来た最近のファンからするとポカーンな場面ばかりかもしれませんが、武藤が作ってきた歴史・作品が、涙とともにファンの記憶の奥底から噴き出してくるような展開ばかりでした。

悲しいけれど、古舘伊知郎の言葉を借りると、武藤の引退試合は”昭和プロレスの終焉”といえるでしょうね。(まだ藤波辰爾は頑張っていますが)

武藤とムタ

それから、ちょっと意地悪な視点で<ムタVS中邑>とどっちが良い試合だったか?と語る人がいるとは思いますが、並列で語るのはよそうや!というのが私の見解。

やっぱり、”ムタ”は飛び道具ですよ。変な話、そこにいるだけで”ムタ”であり、毒霧(これはホントの飛び道具)もあるんですからね。試合の組み立て方がぜんぜん違いますよ。ムタVS中邑もエモい試合でしたけど、中邑の格が高すぎるせいか、やっぱりパートタイマーにしかみえなかったんですよね(毒霧を吸い込むムーブも以前あった流れでしょうし)。

もちろん、SHINSUKE NAKAMURAもそこにいるだけで価値がある・成立する名レスラーだと思ってますが、武藤とともに動く試合をちゃんと魅せたっていう意味では、内藤は立派に務めたと思います

ドームのその他試合の試合も紹介していますので、よかったらコチラも読んでくださいね。

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