皆さんは、黒澤明監督の映画を観たことはありますか?
もしかすると、若い方は黒澤明のことすら知らないかもしれませんが、言わずと知れた世界的映画監督です。世界で”日本人映画監督”といえば、黒澤明か北野武の2人になるのではないでしょうか。
私は子供のころ、黒澤明監督の『夢』を見ました。たしか狐の嫁入りのシーンだったと思うのですが、なんとも言えない幻想的な雰囲気に、ちょっと怖くなってしまったのをよく覚えています。
今回はリニューアルした池袋の映画館、新文芸坐で黒澤明監督作品『椿三十郎』を観ましたので、映画の紹介です。
新文芸坐では黒澤明監督特集が組まれていました。(他にも見たい作品はあるのですが、時間の都合で本作を観賞。)
椿三十郎とは
私のような映画若輩者が語るのは恐れ多いのですが、とはいえ私のような黒澤映画素人の方も多くいらっしゃると思いますので、素人として語らせてちょ。
椿三十郎は時代劇です。徳川幕府時代にとある藩で汚職をしている役人がおり、若手たちがそれを糾弾しよう!と決起ものの、偶然居合わせた浪人(椿三十郎)が若手たちじゃ危なっかしくて見てられん!と手を貸してくれるお話し。
どうやら、前作『用心棒』の続編のようですが、『用心棒』未視聴かつ予備知識ゼロの私でもとても楽しめました。
ストーリーはWikipediaに詳しく書いていますので、気になる方はそちらも覗いてみて下さい。
椿三十郎の魅力とオススメポイント
本作『椿三十郎』の魅力をまとめると…
- 椿三十郎(三船敏郎)がとにかくカッコイイ!
- ストーリーがわかりやすく明快!そして悪役を懲らしめて痛快!
- コメディ要素があり肩肘張らずに楽しめる!
- 椿三十郎VS複数人の殺陣シーンがすごい!
- 侍とは何か?考えさせられるラスト
三船敏郎…恥ずかしいことに、三船美佳のオヤジという認識しかなくて、黒澤監督の『七人の侍』では粗暴な野武士役を演じていることで印象的だったのですが、本作ではとにかく椿三十郎がカッコイイ。見た目もそうだし、言動や振る舞いもカッコイイんですよ。サムラーイとしてのオトコマエな生き様を見せてくれます。
また、ストーリーは時代劇ですので、固有名詞はちょっと難しいものの、各々のセリフがかなり説明口調なので十分に理解できます。それから、勧善懲悪なので安心して見れますし、魅力的なライバル(仲代達也)も登場し、娯楽作品としてとても面白い。そして味方陣営の大女将&娘がなんとも緩いキャラで、切迫した状況なのに、「まあいいじゃないですか」「乱暴なのはいけませんよ」などとおっとりしていて、どうも調子がでない。作品全体を通して、殺伐としない空気感を演出していて、良いアクセントになっていますね。(捕まえた敵陣営の見張り番もゆる~いキャラで和ませてくれます。
そして、捕まった若手侍を三十郎が救出するシーン!40秒で30人を叩き切る殺陣がすごい!すべて終わったあと、三十郎はゼエゼエと肩で息をしていました。(このあと救出した若手侍に平手打ちするのもカッコイイ!)
お話は、印象的な落ち椿演出を経て、汚職役人をとっちめ大団円を迎えるのですが、三十郎は救出した藩から慰留の誘いを受けますが、また流浪の旅に出てしまいます。そこへ結着をつけようとライバルが追いかけてきます。
江戸時代は侍にとっては平和な時代です。ただ、”鞘から抜いた刀のようにギラギラしている”、と大女将から揶揄された三十郎は、現世は侍の時代ではないと感じていたんじゃあないでしょうか。ライバルから決闘の誘いにしぶしぶ応え、決着をつけるのですが、時代遅れだと悟りつつも、そこでしか生きられない侍の虚しさ。それに対する強烈なコントラスト:血しぶきが対比的に描かれているように感じました。そして、職業軍人ならぬ職業侍の若手侍たちはサムライの決闘を見守り、頭を下げるのでした。
黒澤監督作品の初体験にはちょうどよいかも
私は以前に劇場で『七人の侍』を観たことがあるのですが、これもおもしろい。椿三十郎と同様に白黒作品なのですが、特に盗賊との決戦シーンは、墨汁で書いたのかというぐらい、雨と馬と土砂のコントラストが美しかった。
だけど、『七人の侍』は上映時間がちょっと長い。スクリーンにデカデカと<休憩>と出てきたときはびっくらこいた。半面、『椿三十郎』は90分ぐらいですので、時代劇や白黒作品になじみがない人でも、とても観易いと思いますよ。
おまけ
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