決してひとりでは見ないでくださいー極彩色の世界で起きるバレリーナ学校の惨劇!ダリオ・アルジェント監督『サスペリア』を観た!

今回は池袋・新文芸坐で1本立てレイトショー、『サスペリア』を観てきましたので、紹介したいと思います!

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ダリオ・アルジェント監督作品『サスペリア』

ダリオ・アルジェント!私はこの男の名を知っているッ!

と、ジョジョっぽく始まりました今回の記事ですが、私の中でダリオ・アルジェントという人は、ゾンビ映画の金字塔『ゾンビ』(原題:Dawn of the Dead)を監修したイタリア人のオッサン、というイメージ。

本題とは少し話が逸れますが、『ゾンビ』は様々なバージョンが存在するんです。そんな多数のバージョンの中で、私が初見で観た『ゾンビ』は、<ダリオ・アルジェント監修版>。今回紹介する『サスペリア』の監督ですね。

で、その時は(私が観たのはダリオ・アルジェント監修版というバージョンか)ぐらいにしか思ってなかったんですが、『ゾンビ』のDVDを買うときに、最も収録時間が長い<ディレクターズカット版>、つまり『ゾンビ』監督であるジョージ・A・ロメロが編集したバージョンを購入したんですよ。観てみたら、初見の印象と全然違うんだな、これが!

初見で観た<ダリオ・アルジェント監修版>は、軽快なロック音楽にのせたゾンビ=生きる屍と戦い逃げぬくサバイバルアクションホラー、という印象だったんです。

対する<ディレクターズカット版>は、終始じめーっとしていて、ゾンビ現象に世の中がどんどん侵されていって、望みが断たれていく鬱蒼とした破滅的終末映画、ってな印象。個人的にはコレジャナイ感が強いバージョンでした。まあ、初見で観たバージョンとの差がありすぎたってとこですね。

同じ素材を使って、編集・演出・音楽でこれだけ印象が変わるものなのか!と驚いたんですが、<ダリオ・アルジェント監修版>は、イタリアのプログレッシブロックバンドであるゴブリンの劇伴がたくさん使われているのも特徴的。私にとって、ダリオ・アルジェントは『ゾンビ』を最高にイカス作品に仕上げてくれた人、という認識なんです。

さあ、だいぶ遠回りしてしまいましたが、そんなダリオ・アルジェントの監督作品を今回初めて観ました!

1977年日本公開時に、「決してひとりでは見ないでください」というキャッチコピーが大流行したようですね。

映画内でどんな恐怖が待っているのでしょうか?!

『サスペリア』のあらすじ(ネタバレ注意)

主人公はアメリカ人のスージー。ドイツにあるバレリーナ学校へ入学するために、ニューヨークから飛行機でやってくるところから物語は始まります。これから胸躍るバレリーナ修行が始まるというのに、非常に暗い顔をしています。まるで、これから起こる恐怖を予期しているかのようです…。

目的地に着くも入れてくれない

冒頭から、不吉な予感をさせる演出がバンバン登場します。ガシャンと閉まる空港の扉、土砂降りのタクシー乗り場、どこか不気味な運転手とのドライブで目的地まで向かいます。目的地である建物に着くと、若い女性が恐怖の表情でドアから飛び出てきました。なにやら建物中の誰かと(秘密)(アイリス)などと会話しているところをスージーは目撃します。女性は雨の中、走ってどこかに去っていきました。その後、建物の呼び鈴でニューヨークから来たスージーだと伝えますが、「来訪者のことは聞いていない」とばかりに無視されてしまいます。仕方なくタクシーに戻り改めることにしました。

建物から走り去った女性の末路

走り去った女性は、マンションにある友人宅に身を寄せます。友人に学校で起きた”理解ができないこと”を伝えますが、友人に(落ち着いて)と諭され部屋で冷静になっていると、窓越しに毛むくじゃらの腕が伸びてきて捕まえられてしまいます。執拗に刃物で刺され女性は絶命、異変に気付いた友人は、マンションの住人に助けを求めますが、誰からも反応がありません。惨殺された女性は、マンションの屋上ガラスから落下し首吊りの状態に。その衝撃で落ちてきた鉄骨が刺さり、友人も死んでしまいます。何者かによって2人は殺されてしまったのです。

学校で起きる不気味な出来事

翌日、スージーは再び建物(バレリーナ学校)を訪ね、無事に入学の運びとなります。昨夜マンションで起こったことを聞き、自分が学校を訪ねたときに見た女性が惨殺されたことを知ります。学校では副学長のマダム、高圧的で厳格なタナー、盲目のピアニスト、使用人のパブロ、マダムの甥で幼いアルバート少年といつも一緒にいる大柄な料理人のおばさん、そして多数の級友たちが共同生活を送っていました。学校内では次々と不気味な現象が…。大量に発生するウジ虫、練習場で寝ているときに聞こえた、うめき声にも似た謎のいびき声、盲導犬が凶暴化し盲目の飼い主をかみ殺す事件まで起きていきます。

友人サラの告白

そんな時、スージーと仲良くなったサラは、マンションで惨殺された女性(パット)と友人であったこと、雨の夜にスージーがかけた呼び鈴を断ったのは自分であること、パットが学校を出る前に妙な話を聞いたことを告白します。

夜になり、サラは学校関係者が夜な夜などこかに移動していることをスージーに伝えますが、スージーは何故か毎夜睡魔に襲われ、サラと会話することができませんでした。サラは何かの視線を感じ、逃げるように屋根裏部屋へ向かいますが、何者かに襲われ殺されてしまいます。

明らかになる魔女の存在

翌日、タナーからサラが夜逃げしたことを聞かされたスージーは、異変を感じサラの友人である精神科医のフランクを訪ねます。そこで、学校の創立と”魔女と呼ばれた女性”が関係していることを聞き、元々はオカルトとダンスの学校であったことを知ります。

スージーが学校に戻ると生徒は全員おらず、演劇を観に行ったと聞かされます。自分は誘われていないことから、何か仕組まれていることに感づいたスージーは、意を決してサラが残した”夜な夜な聞こえてくる歩数のメモ”と、雨の夜、パットが言った(秘密)(アイリス)のヒントをもとに、事件の謎を解き明かそうと、部屋を出ていくのでした。

印象に残ったシーン

☑この映画のオススメシーン

  • 終始画面を包む原色のライティングと極色彩の美しい建築物
  • 学校を逃げ出した女性が殺される冒頭の惨劇
  • アイリスの扉を入ったスージーが見た異様な世界

美しくも怪しい極色彩の世界

なんといっても本作は赤の色使いが印象的。その他にも青や黄など、原色のライティングや極色彩の柄、建物がなど登場します。どこかキューブリック監督作品のようでもあり、芸術映画にも見えてきます。それがなんとも不気味さを煽っている、そんな印象も持ちました。

私は初見が4Kレストア版なので、画面の色の強さがこの映画の特徴かと思ったのですが、劇場公開時よりも極端に色彩表現が過剰になっている、との感想をお持ちの方もいるようです。初見時の思い出や好みもあろうかと思いますが、私は本バージョンは派手かつ艶やかで好きですね。

冒頭の惨劇以外は直接的な残虐表現は少なめ

学校を逃げ出した女性(パット)とその友人が何者かに惨殺されるシーンはかなりエグイですが、グロテスクというよりも、どこか様式美を感じる安心感があります。パットは最後は首吊り状態になるのですが、ピタゴラスイッチ的な完成というか、(お~)と思ってしまいました。

それ以外は、雨・光・キャラの不気味さ・こうもり・いびきなど、あまり直接的ではない恐怖表現が多く、観客の潜在意識に恐怖を植え付けていく、そんな演出が多かったように感じましたね。

魔女の世界と学校の秘密(激しくネタバレ)

終盤、スージーが真相に迫る際、学校と魔女が深く関わっていることを知ります。歩数を数えて向かった部屋の中に、アイリスの花びらがあることに気づき、青い花びらを回すと扉が開きます。その中を進んでいくと、この世ならざる力・形而上学的な魔力によって、学校が支配されていたことが判明します。

副学長のマダム、高圧的で厳格なタナー、使用人のパブロ、アルバート少年が勢ぞろいし、アメリカ女(スージー)を呪い殺す儀式をしているのです。彼らは創始者である魔女の力を得て、学校の秘密を知った者たちを殺害しているのでした。盲目のピアニストは、多分学校の関係者たちの秘密を知ってしまったんでしょうね。直前に「こんな呪われたところ出ていってやる」と言ってましたから。で、犬を操られて殺された。

儀式を見てしまい逃げ出したスージーは、クジャクの間接照明がある部屋で、カーテン越しに謎の影を見ます。それは、学校の創始者である魔女で、ミイラ化してもなお生きながらえている老婆でした。老婆は、死んだサラの屍を操りスージーを殺そうとしますが、スージーは手に持った鋭利な破片で老婆を突き刺し、学校を出るのです。

日本人にとって、魔女の存在っていうのはあまりピンとこない方が多いのではと思いますが、私はそれぞれの惨劇・陰惨な出来事の犯人を追うような見方で物語を追ってしまったので、魔女(に薫陶を受けた者たち)の仕業だったとは思いもよらず…。イタリア映画ですからね、こちらの見方が甘かった!

ラストシーンの意味は?

スージーが魔女の老婆を退治した後、魔女の効力を失った学校の関係者たちは一様に苦しみ始めます。スージーはそれを横目に学校を脱出、すると炎を上げて学校が燃え始めます。そして、スージーはふっと笑みを浮かべるのです。

この笑みの意味は何なんだろうか。行間を読み、観客に考える余地を与えてくれます。単純に(ざまあみやがれ)ということなのか、それとも別の意味か。ネット考察で<死んだ老婆の魔女がスージーに乗り移った>とコメントされている方がいて、個人的にはこの意見に超賛同。スージーが魔女化したんじゃあないでしょうかね。

それから、エンドロール時にデーンと「You have been Supiria」的な文字が出てきます目撃したでしょ?ってことでしょうか。あたかもこの劇が実際に起こったことのように錯覚させられる。これも素晴らしい演出です!

さいごに

いかがだったでしょうか?

今まで見ていなくて損した!とも思えば、このバージョンを劇場で観られてラッキーとも思いましたね。先に紹介した『ゾンビ』のホラーとは全然違うんですが、本作は”夜におしっこ行くのが怖くなる系ホラー”とでも言いましょうか。徹底的に美しい心理的な表現でもって、観客の恐怖心を煽ってきます。未視聴の方はぜひ機会を作って観ていただきたいですね。

あと、予備知識としてですが、『サスペリアpart2』は続編ではなく別作品です。日本の配給会社がサスペリアの人気にあやかって付けたタイトルなだけで本作とは無関係。『サスペリア』は2018年のリメイク版もありますが、こちらはダリオ・アルジェント作品ではありませんのでご注意を。

それから、やっぱりゴブリンの幻想的な音楽が最高です!サントラ欲しい!

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