稲川淳二の怪談を整理する、怪談!稲川倉庫です。
今回はプレイステーションで稲川怪談が楽しめる!『稲川淳二 恐怖の屋敷』を整理しましょう!
(ゲームメーカー及び発売日:ヴィジット、1999年)
稲川淳二初のゲームデビュー作品『百物語~ほんとにあった怖い話~』に続き、2作目の紹介です。
本作の発売元はヴィジットなる会社。私、ゲームの方も結構詳しいタイプなんですが、ヴィジットという会社は聞いたことがないですね…。他にも恐怖モノのサウンドノベル系ゲームを発売しているようですね。
『稲川淳二 恐怖の屋敷』
稲川淳二がプロデュースした恐怖の屋敷。怖くて不思議な話を聞くことができる場を提供したいという想いから、稲川淳二が作り上げたという設定。
この屋敷で、呪いとは何か、心霊現象とはなにか、そして真の恐怖とは何かを体験することになります。(いや怖い話を聞いて怖いテキストを読むだけなんですけどね…)
決して面白半分で屋敷に足を踏み入れてはいけません。一歩足を踏み入れた瞬間から、そこは呪われた空間になっています!
…となんだか屋敷を作った目的がよくわかんなくなってきました(笑)
とはいえ、屋敷に足を踏み入れてしまったならば、あなたの身に何が起こっても、どうすることもできませんよ…。
稲川怪談がプレステで聴ける
本作も、他のイナジュンテレビゲームと同様、怪談テキストを読むか、稲川淳二の怪談を聞くかの2パターン。屋敷に入るとひとつずつ恐怖の部屋を進んでいきます。
とは言っても、テキストとちょっとしたムービーで進んでいくだけなんですがね。
稲川氏は自身でプロデュースした屋敷にもかかわらず、とにかく「本当に次の部屋へ行く覚悟はありますか?」とか、「あなたは強い勇気の持ち主だ」などもったいぶってきて、屋敷の館長っぷりはかなり演出がかっています。
霊(おっと例でしたね)の通り、怪談テキストは無視して、稲川怪談に絞って紹介させて頂きます。
このゲーム、16作もの稲川怪談が収められていてかなりボリュームがあります。今でも語られる傑作から、出展元が怪しい都市伝説系も含まれています。後者は今では堂々と語るのは難しいでしょうから、こうした過去のソフトはそれなりに貴重になってきますね。
本作の収録話は以下の通り。
開けちゃいけない!
初期稲川怪談のド定番。
夜、寝静まったころ。風の音に混じって聞こえた、お姉ちゃんの「たすけて~」「あけて~」という声に誘われて、少女は玄関の戸を開けようと向かった。
開けようとすると、「開けちゃいけない!」と低い男の声で怒られてしまう。
※3回繰り返し。とにかく何度も「開けちゃいけない!」と怒られます。
夢にも似た子供のころの空想でしょうか?実はその家は、女の霊の通り道になっていたようですねえ。
脂ぎった顔
当時若手だった佐々木マネージャーの弟が体験した話。
夜、暗闇の中で金縛りにあった彼が空中で掴んだものは…。
押入れの母親
別名「押入れのおばちゃん」。このタイトルの方が一般的でしょうか。
ある女性が子供のころの話。両親が勤めに出ている時、自宅にご飯を作りに知り合いのおばちゃんが来てくれていた。そんな日は、女の子はおばちゃんの家へ行き、おばちゃんの家の女の子と遊んでいたんです。それが密かな楽しみだったんだな。
ある日、子供のちょっとした遊びがきっかけで、おばちゃんちの女の子が「自分のおかあちゃんは押入れに入る」と言い出します。
そんなはずはない。だってその子のおかあちゃんは、うちにご飯を作りにきてくれているんだから。
ついに、女の子は押入れのふすまを開けてしまうのです…。
この話、いろんな媒体で聴くことができますが、本作『恐怖の屋敷』バージョンは稲川氏の1人3役が素晴らしい出来。(主人公の女の子、友だちの女の子、通りがかったオジサン)
夢の中の女
引越し先の慣れない土地。毎夜夢に現れる謎の女性が、現実世界に現れた。
夢に出てくる道通りに現実世界の道を進んでみると、そこには墓地があって…。
夢に出てくる女性は、昔の旧友ですでに亡くなっていたんですが、越してきた旧友に会いたかったんでしょうかねえ。それで夢に出てきたのかもしれません。
リアカーを掴む手
別名「リヤカー」。親戚のおばさんが戦時中に体験した話。
疎開先で、街の診療所までリアカーを借りに行くことになった。そこでつい話し込んでしまい、リアカーを借りて帰ろうとすると、外はすっかり闇に包まれていた。帰りの道中、避けて通れない長いトンネルでおばさんが体験した恐怖とは!?
スタジオの怪
「スタジオの怪」と言える話が他にもいっぱいあるから、このタイトルだけで特定するのは難しいですね。
在京のとある放送局。古いスタジオで恐怖モノの編集をしていたところディレクターが遭遇したものは…。
この情報でも、どの話か特定できないですね。
そのスタジオは、かなり音が出る重い扉を開けないと入れないはずなのに、見知らぬ男がスタジオで立っていた。スーと横にずれたと思ったら、そのまま自分の方にやってきて…。
背負われた母親
この話はねえ、怪談と言えば怪談なのかもしれないんですが、不幸な出来事をきっかけに、家族の人生が狂ってしまう。そんな家族の、悲しいお話しなんです。
お姉ちゃんが事故で亡くなってしまって、無気力になった妻。夫は家族の面倒を見ていたが、ある日やりきれなくなって妻を殺してしまう。残された弟坊やは、ずーっとおとうちゃんにおぶさっているお母ちゃんの霊をみていたんですねえ。
サーファーの死
別名「長い死体」「海に潜む者」「ふたつの死体」。説明不要の稲川怪談の大定番。稲川氏が杉並でお店をやっていたときの常連さんでお坊さんがいるんですが、そのお坊さんから聞いたお話し。
サーファー仲間と波乗りに行った一行。なかなか上がってこない友人を放って先に旅館へ行ってしまった薄情な彼らに、深夜になって旅館の女将が訪ねてきた。警察官がいて、「まだ帰らない友人はいませんか?」と尋ねられた。警察官に任意同行を求められて渋々付いていくと、そこには変わり果てた友人の姿があった。
「おい、この死体やけに長くねえか?」
間違いなく、稲川怪談の最高傑作のひとつでしょう。
ムジナ
この話はわりと珍しい。怪談というよりも、伝記や伝説に近いかもしれません。あまり詳しい説明がされていませんが、ここでいうムジナは、アナグマなどの俗称ではなく、そうした獣が化けた妖怪と考えた方がよさそうです。なんせしゃべりますからね。ただ、残念ながらゲーム中にムジナの絵は出てきません。
これは、淳二少年が幼少のころ、おばあちゃんから聞いたというお話しです。
おばあちゃんが住んでいた村で、祭りの準備をするために山越えをすることになった若い衆は、ムジナに出会ったらとっつかまえてやると意気込んでいたんです。で、途中宿泊した山小屋で休んでいると、何やら不穏な空気になってきた。
「おう、おぶってくれ」
ムジナが来た!
ムジナがおぶさってきて首を絞められた男は、ヤツの後ろを押さえながらそのままドーン!プロレス技でいう、バックプレスですよね。
「イ゛ェー!」
ムジナは血を吹いて死んだ。
村に戻りムジナを退治したことを自慢していると、村の長老に「ムジナを2匹やったか?ムジナは男女で暮らしているから、残りの1匹がカタキをとりにやってくるぞ」と脅されたんです。おばあちゃんは、子供ながらに本当にムジナなんているんだ、と思ったそうですよ。
そんなある日。おばあちゃんは田園風景をぼーっと眺めていた。そこに、赤い郵便自転車がやってきた。(あれ、ふだんは郵便は歩いてくるのになあ)目で追っていると、ムジナを殺した男の家に入っていった。
しばらくすると郵便自転車が出てきた。(珍しいなあ)おばあちゃんはそう思って見送ったそうです。
そのあと、その男の家の周りが騒がしくなってきたので、おばあちゃんはなんだろうと見に行った。そしたらその男、家の中で首をくくって変死していたんだそうですよ。
赤い郵便自転車が印象的に語られていますが、男の変死と赤い郵便自転車の因果関係は全く謎…。自転車に乗った、人に化けたムジナが男をやったのか。または郵便配達が持ってきた何かを見て男は自死したのか。
でもおばあちゃんは、「ムジナは本当にいたんだよ。だって赤い郵便自転車を私は見たからね」って、言ってましたよ。
いやだから、なぜ赤い郵便自転車とムジナが関係あるのかがわからん!
後部座席
稲川氏が仕事仲間と蓼科高原にバケーションで行った時のお話し。
途中、稲川氏は仕事で大阪に向かわなければならなくなり、長野の茅野駅までスタッフに送ってもらったんです。
車から降りて、切符を買ってホームへ行った。送ってくれた彼の車を何気なく見ていると、後部座席に誰か乗っているんですよ。(あれ、あんなスタッフいたか?)と思っていると、彼と女性が2人で歩いてきて、車に乗った。(あ~3人でどっか遊びに行くんだな)と思って見ていたんです。
後日、そのスタッフと会った際に、「女性を連れ込んで何やってたんだ」といじったんですね。で、後部座席に乗っていた人は誰だって聞いたんです。そのスタッフ、後部座席に誰か乗っていたこと、気づいてなかったんです…。
そのスタッフですか?うち、やめちゃいました。以来、蓼科高原には行ってないんです。
ユキちゃん
これも稲川怪談の大傑作。本ゲームは古典から定番まで、今にも通じる稲川怪談のスタンダードが多数収録されていますね。
「ユキちゃん」は、怪談師や識者(なんのだ)に稲川怪談のすべてが詰まっている、と言わしめるほどの名作です。
別名「声がきこえる」ですね。CDでは『稲川淳二の怖~いお話Vol.1霊界への扉』に収録されています。
就職した女性が社会人になったのを機に一人暮らしを始めたが、夜な夜な「ユキちゃん」と呼ぶ声が聞こえてきた。しまいには高台になっている、人が覗けない窓に張り付いてきて…。
赤い半纏
稲川淳二のオールナイトニッポン宛に、御婦人から届いた実体験怪異談。娘時代に身を寄せていた、学校の寄宿舎で起きた奇妙な出来事がきっかけなんです。
女子トイレで用を足していると、「赤~いはんて~ん着せましょか~」不審者の声が聞こえてきた。幾人もが同じ経験をしていたもんだから、学校に報告したんです。
そこから警察がやってきて、犯人探しのおとり捜査が始まりますが…。
「おい、着せとくれ!」
ドゥッ!!
…その音をきっかけに、トイレから赤い血が流れてきた…。おとりの婦人警官の衣服を赤く染めて、まるで赤い半纏のようだった。
ここまでは妙な怪物の怪談なんですが、後年完全版としてサイドストーリーが語られます。
二階からの電話
これ、タイトルでオチ言っちゃってます…。いいんでしょうかね。別名「お前を殺す」。
御主人の都合でオーストラリアに移住した奥さん宛に、不審な電話がかかってきた。
日本語ではっきりと、「お前を殺す」と。
何度も何度もかかってくるもんだから奥さん気が滅入っちゃった。警察に届け出るもなかなか犯人が見つからない。
最初はいたずらだと言っていた主人ですが、奥さんがさすがにノイローゼになってきた。夫の方もだんだんきになってきた。そうしていると、やっと電話の発信場所が分かったと警察がやってきましたが、発信場所は驚くべき場所だった…。
で、タイトルに繋がるわけです。
やっぱこのタイトルマズいよ!別の怪談で、「…からの電話」ってのもあって(あなた、キュルキュルキュルキュル、でしょ?ってやつ)、混同を避けるために「二階からの電話」にしたのか。いずれにしてもタイトルでオチをいっちゃあ駄目じゃないですかね。
そして、なぜ・誰が・2階から電話をかけていたのかは謎のままです…。
火葬場
別名「病院裏の火葬場」。この話は霊現象があるわけではないんですが、妙に不気味でリアリティある怪談です。
ある男性が入院することになった。大した病気じゃないんですが、見舞いに友人がやってきた。友人は帰り際にこんな話をした。
「古い病院があるんだよ」「小さな墓地があってさ、崩れかけた小屋があるんだよ。これ火葬場なんだけどな。」
「中を見ることができないんだけどな、何かで火葬場の中を見てしまうことがあるんだ」
「その時な、火葬場の中で”あるもの”を見てしまうとな、見た人間は必ず死ぬんだってさ。」
なんだよその話、と言うと、友人はからかって帰っていったんです。
男性の方はというと、簡単に退院したんですが、次はその友人が体調を崩して入院することになった。
友人から「会いたい」と執拗に電話がかかってきて、今度は男性が友人の入院先に見舞いに行くことになりました。
げっそり痩せた友人は、男性に「火葬場」の話をし始めます。男性は病院裏の火葬場で、その中を覗いてしまったというのです。
そこには、棺のようなものがあって中に誰かいる。よ~く見るとそれは自分だった、というのです…。
その男性、それから数日後に亡くなりました。
その火葬場は、死が近づいた者だけがみてしまう、火葬場なのかもしれません。
開かずの旅館
別名「奥多摩の旅館」ですね。
正月番組に、東京の日の出を撮影しようと奥多摩に行くことになった淳二御一行。旅館に前乗りしたんですが、深夜の出発だったものですから、寝ずにぶーらぶーらぶーらぶーらしてたんですね。
髭を剃るために洗面台を探すが見当たらない。仕方なく母屋の風呂場まで行くことにしたんです。
奥多摩の夜中ですからねえ。何も見えない。夜の闇の中、外に出て崩れかけた石段を下りていくと、そこには風呂場と水道があった。そこで髭を剃ったんですがね。そこに風呂場を掃除している女性がいたんですよ。
「大変ですね」
声を掛けても返事がない。まあいいやと思って風呂場を後にしたんです。
その後、旅館の女将にその話をしたら、うちの旅館にそんな風呂場はないと聞かされた。おかしいな~と思って見に行ったんですが…。
拾った人形
この作品のみタイトルバックなし、そしてALL動画仕様です。なのでイメージ画などなく、稲川氏の語りだけでお話が進みます。
少女がかわいい人形を外で拾ったんです。家に持って帰って、家族に隠して遊んでいたんですよ。そんなある日、少女が一人で留守番しているころ、1本の電話がかかってきた。
女性の声で「まいちゃん?今あなたのマンションの玄関にいるの。これから行くわ。」
何度も何度も電話がかかってきて、だんだんだんだん自分の家に近づいてくる。
ついには、「あなたのうしろにいるの」振り向くと、色の白い女の子が立っていた。
「あなたのいのちちょうだい!」少女はそのまま失神してしまった。そのあと、人形はなくなっていたそうです。
人形は、その女の子の持ち物だったんじゃあないですかねえ。取り返しにきたんですよね、きっと。
この話は、学校の怪談でいう「メリーさん」ってやつですね。同じような電話がかかってきて「私メリーさん。今あなたの家の前にいるの」なんて言いながらだんだん近づいてくる手の話。
当時の都市伝説的怪談で「メリーさんの館」ってのもありますから、タイトルとか内容とか、いろんな要素がまじりあっているような話ですね。
ありがた~いお言葉 心霊現象
最後の話が終わると、稲川館長から霊の世界について十分理解したか?とファイナルジャッジを求められます。
そして、このあと素の稲川淳二からありがたーいお言葉を頂きます。
心霊というと、それだけで非常に怖がる方がたくさんいらっしゃいますよね。心霊という世界は、我々のすぐそばにあるんですよ。
心霊現象という言葉がありますよね。それは、心霊の現象なんですよ。ですから心霊って決して怖いものじゃないんですよね。なぜならば、我々が理解ができていないから。こちらに心の準備がないから怖いんです。
心霊を少しでも知ってみれば皆さんわかりますよ。心霊とはね、ほんとは心優しくて穏やかで、我々にとっては離れることのない話すことができない、暖かなある世界なんですよ。もしかすると、守ってくれるかもしれない。想ってくれるかもしれない。そういった心が集まっているところが、心霊なんですよ。
だから、やみくもにただ、怖い・怖ろしいなんていうのは、もしかすると、心霊に対しいて大変に失礼かもしれませんね。心霊現象、知ってしまったらそんなに怖いもんじゃない。むしろあなたのお友達と思ってください。私はそれを言いたいんですよ。
『稲川淳二 恐怖の屋敷』心霊現象より引用
「ちょっと何言ってるかわかんない」って返してしまいそうなラスト・メッセージ。
本作は、『恐怖の屋敷』というだけあって恐怖話が中心。稲川怪談には、心が暖かくなるような、優しい心霊の怪談もあります。そんな怪談が収録されていないのはちょっと残念でした。
さいごに
いかがだったでしょうか?
ゲーム性には乏しいんですけど、稲川怪談がたくさん聞けるという意味ではそれなりに価値のあるゲームですね。
それから、ゲーム内の怪談だけを抜粋した同タイトルのDVDもあったようです。わざわざゲームするのはハードルが高い(いまさらプレステを動かすのも大変)でしょうから、中古ショップなどでチェックしてみてはいかがでしょうか。
本作以外にもあと数作、稲川淳二のゲームソフトがありますので、引き続き紹介していきます。ゲーム怪談も整理していきますので、引き続き遊びに来てくださいね。
それじゃあまた。次の怪異でお会いしましょう
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