【負けたら引退】生観戦レポート!2025年4月27日 STARDOM『ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025』

こんにちは!野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。

今回は女子プロレススターダムのビッグマッチ、横浜アリーナ大会を生観戦しましたので、簡単にまとめつつアツコアツオ的各賞を発表していきます!

女子プロレス史上最大の「負けたら即引退」の敗者引退マッチで注目を集めたビッグマッチ、当ブログなりに総評していきましょう!

©スターダム
スポンサーリンク

『カードファイト!! ヴァンガード Divinez presents ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025』2025年4月27日(日)横浜アリーナ(観衆7,503人)

スターダムは何度か横浜アリーナ大会を開催していますが、スターダムでは過去最高7503人の入場者数とのこと。

チケットの売れ行きによっては、もっとアリーナ席やスタンド席を増席して、さらにぐるりとリングを囲むことができたと思うんですが、いやはやMAXキャパの12000人はとてつもない数字です。

とはいえ、用意していた席は大方完売したようで圧巻の景色でした!

総評

7000人を超える大観衆を集めたものの、練りに練った敗者引退マッチに加えて、これでもかとばかりに試合を詰め込んでも超満員札止めにはまだ遠い。女子プロレス界、いやプロレス界の限界を感じざるを得ない結果になってしまった。

ただ、驚きだったのは子供の歓声がとても多かったこと。「まいか~」や「かみたに~」とキッズがかわいらしい声で応援する様は、幼年向け雑誌「ぷっちぐみ」などへの露出の効果なのかもしれません。

反対に旧来のプロレスファン層は少なく、堀田に対して「やってまえ!」と激を飛ばす野太いファンやSareeeに対して強烈なブーイングを飛ばす熱いファンもいたものの、全体としては現代にアップデートされたプロレスを楽しむファンが集まっているなあという印象でした。

まだまだ女子プロレスには潜在的な力と明るい未来が広がっていることを確信させてくれる大会であったと思います!

▼スターダム公式ホームページには試合結果だけではなく、かなり詳しく試合の詳細をレポートしていますので是非ご覧ください!

『カードファイト!! ヴァンガード Divinez presents ALL STAR GRAND QUEENDOM 2025』 | 試合結果 | スターダム✪STARDOM
公式サイト「スターダム」の試合結果ページです。

ロングラン興行

14時30分の第0試合から含めるとメインイベント終了までで約6時間興行

途中に席を立ち休憩しながら観戦したのですが、やはり疲れてしまいました

興行時間が長いだけではなくて、特に後半戦は勝負論に徹したような試合が多く、フックが効いたアングルやバリエーションある試合がありませんでした。タイトルマッチ級シングルマッチの連続では観客の集中力は持たないし、本大会の大メインクライマックスへと続くパッケージングという意味では、詰め込みすぎた感があり少し課題があったかな…というのが感想。組まれた1試合1試合は本当に素晴らしかっただけに、そのあたりの全体パッケージは今一度考えるべきかもしれません。

一方で、持てる武器を全部投入して集客するんだという意気込みは買いたいですし、とにかく(引退マッチの中期アングルも含めて)横浜アリーナの動員に全総力を注ぎ込んだオカタロウ社長の手腕、選手、関係各位の働きに改めて敬意を表したいと思います。

というわけで、アツコアツオが選ぶ各賞選出者の発表です!

MVP:上谷沙弥

©スターダム

引退マッチに思いを馳せる。

プロレスのリング上で起きることはすべて「プロレス」だ。

当然、中野たむがなんらかの理由で引退することを決断し、その事実を逆算的にプロレスに落とし込んだストーリーとみるのが筋だろう。

普通なら(2025年現在、棚橋選手がそうしているように)引退発表から全国ツアーへ回り、ビッグマッチで引退興行を行うのが常だが、スターダムは引退というゴールを禁断のアングルに組み替えて、横浜アリーナへの集客に全集中することを選んだ。要するに、引退発表による顔見世的巡業での皮算用より、どうやって世間へ女子プロレスを届けることができるか、その一点に全力を注いだということ。

上場企業の子会社なのだから、中長期プランよりも今年の実績が問われてくるわけで、とにかくスターダムは横浜アリーナ集客を最優先事項にこの半年間動いていたといっていい。

物議を醸した後楽園ホールでの敗者退団マッチは(試合後の引退を掛ける発言云々はやや拙速感があったが)、結局は横浜アリーナへの布石に過ぎなかった。退団マッチのプロレス的是非はともかく、同大会のYouTube無料配信や地上波テレビ番組(鬼レンチャン)出演はもまた、世間の注目を集める仕掛けに過ぎなかったということだ。

では、どこからそのアングルが始まっていたのか。

上谷の闇落ちからか?または闇落ちするきっかけ(?)にもなった「泣かせに来た」事件からか?

いやいや「泣かせに来た」ファンが仕込みということはありえない。では偶然に起きてしまった事件を利用して上谷のヒールターンによって中野たむとの対立構造を生み、引退アングルに組み込んだということか?

だとすればクリエイティブ勢はアッパレである。アクシデントをもリング上に取り込む、リアルとフェイクの狭間を生きるプロレスラーの真骨頂ではないか。

いずれにしても上谷は覚悟を決めた。そして、その覚悟を後押ししたのは、引退へ追い込まれる他ならぬ中野たむ自身だった。

この試合によって中野たむを引退させることになってしまう上谷は、いわばプロレス界の恩人を介錯することになってしまった。その十字架、中野たむのことばでいう「のろい」を、数か月間にもわたって背負い続けて生きてきた。

人気レスラーを引退へ追い込む汚れ役という見方もできるが、その葛藤が試合後のリング上で爆発した

中野たむに勝つことで自身が引退することを避け、そして中野たむを引退へ追いやることに成功した、ヒールの上谷沙弥。

次第に圧倒的なリアルが押し寄せる。

プロレスという役に沿って死闘を繰り広げた二人の人生はリング上で交錯し、そして散っていった。

プロレスに関わるきっかけを作ったという中野たむと上谷の邂逅。ベビーフェイスもヒールもない、上谷の美しき本音ともいうべき、プロレスを超えたシュートなマイクが観客の心を抉った

負けた中野たむを惜しむ声や、勝ってしまった上谷を罵倒する声はそこにはなかった。プロレスが決まり事ややらせなどいう評価なんてどうでもよくなってしまう、二人の最後をただただ見届けたいという観客の願いは、天に召される中野たむへの祈りのようでもあった

試合後、二人は言葉を交わすと会場は不思議な多幸感に包まれた。上谷が発するプロレスとリアルが入り混じった感情が実に美しかったし、対照的に徹底して中野たむには素の感情はなく、リングを去らねばならないという感傷はなかった。彼女はずっとずっと演出の世界に生きていた。それもまた美しいプロレスである。

プロレスは激しい試合による命の交換だが、今回ばかりは中野たむの魂がすべて上谷に移ったとみるべきだ。同化と言ってもいいかもしれない。終わった中野たむと、すべて丸ごと取り込んだ上谷だ。それがフィニッシュの掟破りの真意だろう

花道を去っていき消えゆく二人。

これぞ男子プロレスがなし得なかった、究極のファイティングオペラではないか?

これっぽっちも恥ずべきではない美しい演出の中に、二人は消えた。

▼究極のファイティングオペラのエンディング

ベストバウト:岩谷 VS 朱里

©スターダム

メインイベントは別格として、その他押し寄せた怒涛のシングルマッチの中で、ダントツのベストバウトはIWGP戦でしょう!

10度目の防衛戦に挑む岩谷は一度防衛ロードで朱里を退けたことがあり、朱里にとっては背水の陣。岩谷は約2年に渡り防衛し続けてきたわけですが、ベルトを明け渡すことになってしまった。

IWGPという冠にふさわしい打投極のストロングスタイル!いやとにかくスゴイ一戦でした。

最後はお互い持てる力を出し切って朱里がとっておきの必殺技、クロスアーム式朱世界でピン。岩谷のフブキラナが不発となってしまったことが悔やまれます。

正直、あまり注目していなかった一戦なのですが、試合後の朱里の大号泣にはもらい泣きしてしまった…

なんでしょうか、観客の心を揺さぶる彼女の感情は…。中野たむのような究極のプロレスラーとはまた違った、リアルプロレスラーという感じ。

まじめで頑張り屋、それでいて控えめな印象がある朱里ですが、立ち技とMMAのチャンピオンになりUFCにも挑戦し、ハッルや魔界、そして現役で演劇もこなす全方位プロレスラーである彼女に死角はない

試合後、時期挑戦に名乗り出たSareeeが登場。カイリ~メルセデス・モネ~岩谷と名だたるスター選手を有してきたIWGP女子は、「世界」から「強さ」にフェーズを移し新しいストーリーを紡いでいくことになります。

とにかくカタい攻めが多いSareeeとは激しく厳しい試合を繰り広げてもらいたい。「本当に強いのは誰か」リング上で証明してほしいと思います!

ソルトバウト:吏南 VS 堀田

唐突に組まれた(かのようにみえた)謎の試合がソルトバウト(ワーストバウト)に選出。

©スターダム

これだけ多くのカードが並んでいる中で異彩を放っていたものの、結果的に大きなインパクトは残せず

堀田は女子プロレス対抗戦時代の生き字引であり「横浜アリーナ」に必要な選手だったのかもしれませんが、58歳という年齢からどうしても受けに回る展開や続き、結局吏南が動き回らざるをえず彼女の怖さやエグさを出すこともなく、唐突なスリーパーホールドで終了。

せめて吏南を叩き潰すぐらいのことはあってもよかったんじゃないか。なんかの代役かバーターだったんだろうかね。

ショッパイ賞:葉月

©スターダム

羽南が勇気を振り絞って告白した超シュート発言から端を発して注目された一戦ですが、そんな試合にアブナイ空気すら作り出せなかった責任は葉月にあると思うのだ。

「リアルで仲が悪いんじゃないか」と邪推される隙すら作らない。試合が壊れてしまうんじゃないか?というワクワク感も生み出さない。

淡々と、お仕事的に負けてやりますよとでもいわんばかりの、スカして澄ましてどこ吹く風な無気力試合。いや、無気力試合ならまだ語りようがあるが、無気力“風”試合なのがまたタチが悪い。これは前哨戦ではなくストーリーのクライマックスだというのに。

▼冒頭のエルボー合戦にも付き合わない(わざとスカしている)

羽南の魂の叫びを受け止めてやれよ。もしくは気に入らないんだったらガチンコでもいいから潰してやれよ。

そんなフラストレーションがたまる一戦でした。

後輩未来を託し、壮絶に散っていった中野たむとの究極のコントラストをキミは見たか?

試合後、飯田が流した涙の意味は重いぞ、絶対

裏MVP:テクラ

今回触れていない試合でも、間もなく引退する里村芽衣子が登場した6人タッグマッチや、仙女橋本VS舞華のド迫力マッチ、鈴木すずVS星来のノーDQマッチなど試合内容で魅せてくれる試合は多数あったのですが、そんな中において唯一エンタメに振り切った試合が、テクラVSくららのスペシャルシングルマッチ

©スターダム

実力・キャリア的には圧倒的にテクラ有利なものの、なんとくららがファルコンアローでピンフォール勝ち。プロレス的「そんなアホな」と言いたくなる、番狂わせ感の余韻が押し寄せる間もなく始まったオカタロウ劇場

テクラはついにクビ宣告を受けてしまうのですが、最後にオカタロウがテクラへニヤリと笑いながら耳打ちしているシーンが印象的で「もしかして悪のオーナー路線か?」と期待してしまったのですが、本当に契約終了という残念な結果に。

いずれにしても、今回組まれた重厚な試合群の中で、肩肘張らずに楽しみながら見ることができる試合を作ったテクラの大立ち回り&くららに寝かされた悲哀に敬意を表して、裏MVPとさせていただきます。

うーん。やっぱり唯一の定期参戦外国人選手が去っていくのは悲しい。こんな使い方ができる万能な選手ではあるけれど、上位戦線での活躍の場も作ってあげてほしかった

いやいや!まだオカタロウの耳打ちの真実が明らかになるまでは、あきらめないでおきましょう(笑)

まとめ

いかがだったでしょうか?

大盛り上がりだった横浜アリーナ大会。欲張りすぎてカードを詰め込み結果的に霞んでしまった試合があったことも事実ですが、総じて高いレベルで魅せてくれる試合が多かったと思います。

そして、一夜明け会見では、舞華の治療による長期離脱、そしてスターダムのアイコンこと岩谷の退団が発表されました。

引退・退団と続きますが、ネクストスター候補がひしめき合っているのがスターダムの恐ろしいところ

決して悲観することばかりではありませんし、きっと新たな戦いと次なる展開を魅せてくれることでしょう!

▼スターダムの入場曲全部盛りの1枚!(残念ながらHATE上谷の入場曲は未収録)

ブシロードミュージック
¥4,247 (2025/04/29 09:46時点 | Amazon調べ)

コメント

タイトルとURLをコピーしました