【プロレス旅エッセイ】元WWEスーパースターTAJIRI著の『戦争とプロレス』で、非日常の世界へ飛び出そう!

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こんにちは!アツコアツオです。

今回は日本プロレス界が誇る世界的なスーパースター、TAJIRI選手の著書『戦争とプロレス』を紹介したいと思います!

“戦争”と付くこのタイトルからはどんな内容なのか想像がつきませんでしたが、プロレス好きなら絶対に楽しめて、一人旅好きならさらに楽しめること間違いなし!

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『戦争とプロレス』

同シリーズには前作『プロレス深夜特急』がありますけど、私は前作を未読のまま読み進めましたが、これといって不都合はありませんでしたので、シリーズものでありながら前作は読んでおかなくても無問題

(多少は前作参照な部分もありましたが内容を理解するのに差し支えはありませんでした)

本作にも副題として「プロレス深夜特急」がついていますが、列車の描写こそないものの空路を使った深夜特急エピソード満載!

それでは、少しずつ本書の内容を紹介していきましょう。

平凡な毎日でも、本書で旅へ

毎日同じ時間に起きて、毎日同じ電車に乗り込む。

社内では他人同士ではあるけれど、毎日同じ顔合わせだ。

毎日同じ時間に会社へ着いて、昨日とは少し違う菓子パンを食べながら、毎日同じコーヒーを飲んで仕事に臨む。

そりゃあ、毎日まったく同じ仕事というわけではない。時には外に出払ってハードな1日だってあるし、何事も起きないゆる~い1日だってある。毎日は変化に富んでいると言えなくもないけど、自分が定年を迎えたときには、たぶん「毎日同じ生活だった」って思うんだろう。

そんな毎日が楽しいか?って聞かれれば、やっぱり「楽しい」とは言えやしない。じゃあ夢を追いかけるかと聞かれたら、そんなチャレンジをする覚悟もなけりゃあ、リスクを取ってまで走り出す気力もない。

そしてまた、いつもの毎日を送っていく。

そんな多くの現代人にだって、旅をすることぐらいはできる。いや、本当の「旅」でなくたっていい。読書体験でも旅に出ることはできるのだ。

プロレスファンならなおさらのこと。プロレス団体は旅一座で全国を巡業で回っていく。そして著者のTAJIRIは海外からのオファーがあれば、どこであってもたった1人で世界を飛び回る旅芸人だ

何が起こるかわからない。ギャラの交渉もない。どこで誰と対戦するのかわからないまま、世界を駆け巡る。

平凡な毎日から抜け出せない現代人にこそ、「プロレス深夜特急」を体験してほしい。

TAJIRI流の旅エッセイ

『戦争とプロレス』という堅苦しそうなタイトルですが、身構える必要はまったくありません!

内容は元WWEスーパースターのTAJIRIによる旅エッセイで、軽妙な口調とTAJIRI流ガイジンジャパニーズが冴えわたる、とても読みやすい内容になっています。

国内外のインディー団体からオファーをもらって世界中を飛び回る様子を綴っていますが、時にはコロナ明けのアメリカだったり、時にはウクライナ侵攻後のヨーロッパだったりと、平時の海外巡業とは異なるシチュエーションではあるのですが、登場人物たちが活き活きとプロレスに向かって懸命に前進している様には心打たれます

(おそらく)あえて写真や地図を用いた人物や地理の紹介はせず、読者の想像を掻き立てる作りになっていますので、ややガイジンレスラーをイメージしにくいですが、WWEの和訳さながらの語尾を用いた妙技で、不思議と登場人物のキャラが定まっていきます

難民シリア人レスラー

私の中でもっとも衝撃的だったのはシリア難民レスラー「ジョージ」に関するエピソードですね。

命からがらトルコへ逃げてきて、決死のゴムボートに乗りなんとかドイツし亡命申請、そしてインディーマット界からWWEを目指すという、なんというハングリーなレスラー志願者がいたものか、と驚かされました

日本の常識、非ジョーシキ

本書では欧州・東南アジア・アメリカへTAJIRIがサーキットする様子を中心にまとめられていますが、海外のジョーシキ(やはり日本とは考え方が違う!)や海外プロレス事情を知ることができ勉強になりますね

日本と諸外国のコロナへの向き合い方の違いや、ウクライナ侵攻の影響を受けた難民の受け入れなど、プロレスを通じて世界の情勢を知る良いきっかけになりました。

TAJIRI流プロレスの本質

やはり世界は広いし、視野は広く持っておかなければならない。時折、TAJIRIは異国での心構えや試合への向き合い方を交えながら「プロレス」論を展開することもあり、マニア向けではない本来の一見さんに向けたプロレスの本質を語っています。

基本的にプロレスには言葉はいらない。リング上で全身を使って表現し観客を魅了していくもの。ストロングスタイル的な「プロレスは闘い」とは異なった、「プロレスは見世物」という視点。

アメリカでプロレスといえばWWE的なものになるでしょうし、メキシコではルチャリブレになりますが、なぜか日本市場を見渡すと様々な「プロレス」が展開されていますよね。シュート風味からエンタメまで、デスマッチもあるし女子もある。

まさにガラパゴス化した日本マット界において、深夜特急を通じて語られるTAJIRIのプロレス論は、きっとあなたのプロレス旅の一助になるはずでしょう

一方で、本書における戦争やコロナに関する比重はそう多くなく、プロレス旅日記+コロナ明け&開戦後のヨーロッパ編とした方が腑に落ちる内容だったかなと思いました。

アジアンプロレス、最高!

本書のほとんどが海外渡航に関する話題なのですが、私が最も面白かった章は「発見!日本にもあった非日常の世界!」ですね。

海外編は元WWEのスーパースターを三顧の礼で迎え入れる様子が描かれていますが、本章はどインディー団体のどさまわりの苦労を描きながらも、それでいて全体的にゆる~いカンジが心地よくて、とてもプロレス愛を感じさせられる章になっています。

九州の「BURST!」と「アジアンプロレス」が登場しますが、特に笑えてほっこりしたのは後者のエピソード。

畠中代表(グレート・センセイ!)他、谷津“オリャ”嘉章やスペル・クレイジーなどが登場し、かなり笑える描写が多くて、インディー団体の辛さと巡業に参加するゲストレスラーのトホホ話にプロレスマニアきっとニンマリするはず

海外編と国内編ではずいぶんと趣が違いますが、1冊で2度おいしいと思えば全然アリですよ、これは!

若き日のフランシスコ・アキラ

[特別編]としてTAJIRI初の小説「アキラの居場所」も収録。

2024年現在、UNITED EMPIREのメンバーとして新日本プロレスで大活躍中のフランシスコ・アキラですが、コロナ前後に全日本プロレスに留学していた頃の物語です。

たった1人で異国の地で耐え忍んだアキラの苦悩を、当時全日本プロレス所属だったTAJIRIの目線で書き下ろしています。現在のアキラしかご存じない方は、意外なエピソードばかりだと思いますよ。

TAJIRIはメキシコ~ECWと海外インディー団体の経験がありますが、その橋渡し役でもあった日本プロレス界の小泉八雲との呼び声高いビクター・キニョニスに世話になったこともあり、きっと上昇志向のあるレスラーを無意識に導いているんだろうなあ、と感じました。

まとめ

「深夜特急」でもあり「ウルルン滞在記」でもあって、各国の道中で市井の人々と出会うさまは、今でいうと「相席食堂」的でもあるTAJIRIの旅エッセイ。ぜひあなたの旅のお供にしてみてください。

本書の他にも文豪レスラーTAJIRIの著書は多くありますから、この勢いで読んでいこうと考えていますので、また機会があれば紹介させていただきます!

そうそう、旅の道中には全日本プロレスでブレイク中の斉藤兄弟や新日本プロレス合流前のフランシスコ・アキラも登場し、修業時代の様子を垣間見ることもできますよ。

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