稲川淳二の怪談を整理する、怪談!稲川倉庫です。
今回は、『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談 Selection13 赤い半纏<完全版>』を整理!
(CD発売日:2012年6月20日)<THEC-25301>
『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談』シリーズ
同シリーズ13枚目の作品。
『~selection3 赤い半纏』で語られた、理不尽怪談の大傑作「赤い半纏」が完全版として帰ってきました!
…ただ、個人的にはこの続編には思うところがありまして…。
皆さんはいかがでしょうか?
『MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談Selection13 赤い半纏<完全版>』
初期の代表作「赤い半纏」が、続編を含む完全版として新収録。
公式ホームページから引用
稲川淳二のテーマ曲「怪談爺ぃの唄」、業界初の”怪談ソング”「赤いはんてんの唄」収録!
本作はなぜかMYSTERY NIGHT TOURレーベルではなくテイチクからの発売です。
いったいどんな理由でそうなったのかはわからないのですが、歌を2曲収録していることが影響しているのかもしれません。
怪談中のSEやBGMはほとんどありませんし、派手な演出がない分、座長の語りだけで勝負している作品といえるかもしれません。
というわけで、表題話「赤い半纏<完全版>」、座長の実体験怪異談「鏡のない洗面台」、樹海シリーズ「樹海~暗闇の絵馬~」、拾った数珠が巻き起こす憑き物怪談「人面相」、ツアースタッフだという樋口舞さんが歌う「怪談爺ぃの唄」「赤いはんてんの唄」を解説していきましょう。
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2023年10月現在の稲川怪談CDラインアップ
・稲川淳二の秋の夜長のこわ~いお話
・怖いから聞かないで
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・怖いから聞かないで~極選~
・ホントにこわ~い話 ベスト
・決定盤!! 稲川淳二の怖~い話 ベスト
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4,5,8,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,22
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・稲川淳二の怪談 MYSTERY NIGHT TOUR Selection BOXシリーズ
(ベストアルバムBOXのようなもの)
怪談爺ぃの唄 (歌:樋口 舞)
初期の代表作「赤い半纏」が続編を含む完全版として新収録。
稲川淳二のテーマ曲として「怪談爺ぃの唄」(作曲:PANTA<頭脳警察>)、そして業界初の “怪談ソング”「赤いはんてんの唄」が樋口 舞(ツアーアシスタント/元・歌姫楽団)の歌唱によって実現!
テイチクホームページから引用
このアルバム、のっけから怪談じゃねえ!(笑)
女性歌手が歌う稲川淳二テーマ曲「怪談爺ぃの唄」。盆踊りを連想させるような、ダンサブルで軽妙なナンバーです。
…ってこの曲、頭脳警察のPANTA作曲だとは知らなかった!
「銃をとれ」とか「ふざけるんじゃねえよ」のような過激でアナーキーな系統ではないんですけど、随所に「キメ」の箇所があって、聴けば聴くほどクセになってくる曲ですね。
途中には座長の語りもあって、情緒的な夏の風景を思い起こさせるような、どこか懐かしい気持ちにさせてくれる歌ですね。
座長がよくおっしゃっている、夏の時期に親戚の爺さんが怖い話をしてくれる、そんな情景が浮かんでくるようです。
まさに座長は私たちにとっての「心のふるさと」ですよねえ。
怪談ライブの追い出しBGMとかで使ってくれれば最高なんですけど、意外に登場頻度が少ないこの曲。もっと推していけばいいのにと思っちゃいますね。
鏡のない洗面台 (2004)
撮影の前乗りで訪れた、伊豆のはずれにあるビジネスホテルなんですが。
ホテルに似つかわしくないVIPルームに通された座長、なぜか息苦しい寝室で巻き起こる不可思議な現象で目が覚めてしまったもんですから、汗を流そうと向かった洗面台なんですけどねえ。
洗面台には鏡がなく、とはいえ壁には鏡を止めてあったんだろう穴を埋めた形跡があって。
どうも不自然なんですよ。
洗面台で顔を洗う座長の後ろで、次第に「ギィ…」と音を立てて、ひとりでにドアが開き始めて…。
一言コメント(ネタバレ注意)
ロココ調の家具、せこいベルサイユ宮殿、「スットン!」
稲川怪談クイズがあったとしたら、本作を言い当てるのはかなり簡単。
特徴的なキーワードが登場するたくさん登場する怪談です。
せこいベルサイユ宮殿ていう言葉は生涯で一度は使ってみたい表現だなあ(笑)
座長が宿泊した、なぜか洗面台に鏡がないVIPルーム。ホテルのスタッフに聞くと、どうやら先代のオーナーがそこにあった鏡を外させたといいます…。
「なぜ洗面台に鏡がなかったのか」
実際に座長の怪談で確認してみてくださいね…。
人面相 (2004冬)
恐怖モノの撮影で出演していたエキストラの女の子たちとね、自然と心霊体験の話題になったっていうんです。
その一人の女の子をふっと見るとね、ダメージジーンズをはいている子なんですが、破れたズボンから膝小僧が出ていて、なんだかミミズばれになっている。
自分ちの猫にひっかかれたっていうんですけど、その子が続けて、自分の部屋に幽霊が出たっていうんですよ…。
一言コメント(ネタバレ注意)
人面相ってご存じでしょうか?
傷が化膿してしまって、その跡が人の顔のようになってしまう。病気というか妖怪というか、不思議な現象ですよね。
彼女の部屋に出た幽霊、突然でてこなくなったらしいんですけど、彼女の膝に取り憑いたんでしょうね、きっと。
それはまあ見事な人面相だったようですよ…。
それにしても、よくわからない数珠を拾っちゃあいけませんね…。くわばらくわばら。
樹海~暗闇の絵馬~ (2008)
恐怖モノの撮影で、毎年富士の樹海に入っている座長なんですがね。
冬の終わりから春の時期にかけて、スタッフたちと暗い夜の中、機材を乗せたトラックでもって撮影現場へ向かうんだそうですよ。
そんな場合は、現場の準備が整うまで演者はロケバスで待機することが多いそうですね。
で、準備が整うとスタッフが歩いてロケバスの演者を迎えに行くんですが、なにせ暗闇の樹海ですからね。1人で迎えに行くっていうのは心細いわけで、男2人でもって、演者の女性2人を迎えに行ったんです。
スタッフと演者が合流して現場に向かったんですが、道中で妙な気配がしたと思えってよくみると、暗闇の原生林の木々の中に絵馬のようなものがぶら下がっていて…。
一言コメント(ネタバレ注意)
絵馬には死者を弔うメッセージが書いてあって、男女4人はそこで誰かが自殺したと悟るんですけど、現場へ到着して安堵したとたんに、道中は「男女2人多かった」ことに気づいてしまったようです…。
樹海では、“いつも何かが起こる”らしいですよ…。
赤い半纏<完全版> (2007)
座長が出演されていたニッポン放送「オールナイトニッポン」に寄せられたリスナーの恐怖体験談で、超有名稲川怪談の「赤い半纏」。
有名すぎて座長の手を離れてしまい、もはや都市伝説の域にまで広まった感すらある本作は、とにかく不気味かつ理不尽で残忍な猟奇怪談の側面もありますよね。
なんだって意味も分からずに、得体の知れない何かにクサビを打ち込まれるっていうんですから…。
以前紹介しました『~selection3 赤い半纏』にも収録されていますが、本作はその後に座長が独自に調査をして“こうではないか”と探り当てた、「赤い半纏」事件の由来や真相を含んだ<完全版>になっています。
▼「赤い半纏」のエピソードはこちら。
一言コメント(ネタバレ注意)
「赤い半纏着せましょうか♪」の不審者情報を得て、警察はこの分教場のトイレで、かつて何かあったことを知っていたんじゃないか?
知っていたから、婦人警官をトイレにこもらせるなんていう、少し不思議な犯人捜しをしたんじゃないか?
座長はこのことに疑問を持たれていたんですよね。
で、時代背景なども勘案して調べていくと、どうやら特攻隊にまつわる悲しい話なんじゃないか、と突き止めるわけです。
特攻といえば九州の知覧が有名で、実際にその飛行場から特攻に出撃し飛び立っていったといいます。また、九州地方ではお祭りの風習で、祭りの行列の最後で世話役が赤い半纏を着るところがある、というんです。「赤い半纏着せましょうか♪」という子守歌は、祭りの終わりを示唆しているのかもしれない。
本作の後半は、太平洋戦争で国のために散っていった特攻隊の無念や、残された家族の悲しみ、そしてやるせなさを語ってくれます。
そして、旦那も一人息子も戦争に取られていった母親が、世の中を儚んで、特攻隊が使っていた分教場のトイレで自害したことが、「赤い半纏」事件の由来なのではないか?と連想させるようにして、この<完全版>は締めくくられます。
稲川怪談マニアの小言
理不尽な猟奇怪談として、稲川怪談のとりわけ恐怖部門を引っ張ってきた「赤い半纏」は、<完全版>の公開によって、悲しい怪談・儚い怪談としてカテゴライズされるようになってしまったと思っています。
「稲川怪談で最も怖い怪談は?」といえば、私は個人的に「赤い半纏」をトップ5に押したいところなのですが、<完全版>までを含めると、やっぱり怖い怪談とはいえないですよね。
稲川怪談は怖いだけじゃないのが魅力ではあるのですが、個人的には「赤い半纏」がこういう形に姿を変えたことは少し複雑な気持ちがあります。
そして、一人息子を戦争に取られてしまって、分教場のトイレで自害してしまった母親が、こうした怨念になって無差別に人を襲うものなのか…というのもちょいと疑問が残りますよね。
母親の悲哀が暴走し妖怪化してしまった…という見方もできなくはないのですけど、少し解せない部分もあります。
というわけで、私は<完全版>の公開によって
・理不尽な猟奇怪談の大傑作だった「赤い半纏」が悲しい怪談になってしまい残念
・もしも自害した母親が事件の由来だった場合、怨念となって無差別に人を襲うのかが疑問
に思ってしまいました。
最初から<完全版>の内容で聞いていると、また違った印象があるかもしれませんけどね。皆さんはどのように感じられましたか?
稲川淳二メモリアル「遺言」
公式YouTubeチャンネルにもアップされています!
<完全版>をまだご存じないという方、この機会にチェックしてみてください。
赤いはんてんの唄 (歌:樋口 舞)
「赤い半纏<完全版>」の内容をほぼすべて歌詞に盛り込んだ、かなり悲しい歌になっています。
座長が即興で作った「赤い半纏着せましょうか♪」のメロディーをそのまま活かしていますよ。
怪談爺ぃの唄 (Backing Track)
カラオケです。
さあ、みんなで「怪談爺ぃの唄」で歌いながらレッツダンス♪
さいごに
いかがだったでしょうか?
ミステリーナイトツアーシリーズのスタジオ収録盤Selectin13!
本作は、かなり変則的な構成になっていましたね。歌あり、カラオケあり、そして過去に収録された怪談の完全版公開と、マニア向けな内容に仕上がっていました。
ミステリーナイトツアーシリーズの紹介はまだまだ続きます。また、お付き合いくださいね。
それじゃあまた。次の怪異でお会いしましょう。
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