こんにちは。漫画家ゆでたまご先生を研究する【ゆでたまご研究所】へようこそ。
今回は、キン肉マン連載と並行して描かれた、ゆでたまご先生の週刊少年ジャンプの初期読み切り漫画について紹介しましょう。
45ページの長編読み切り格闘マンガ『デスゲーム』です!
『デスゲーム』
どういう経緯か定かではありませんが、ゆでたまご先生は週刊少年ジャンプ誌上で『キン肉マン』を連載しながら、並行して本作『デスゲーム』を書き上げています。
1980年3月の週刊少年ジャンプ16号に掲載されたようで、調べたところ『キン肉マン』連載は第20回超人オリンピックのころですね。
確かに、アメリカ遠征編のようなソリッドな絵柄ではまだないですね。
掲載されているコミックス
『デスゲーム』を読むことができるコミックスは以下の通りです。
ジャンプコミックスのゆでたまご短編集1『お~い!!マンガだよ~ん』
いわゆるコンビニコミックスの『闘将!!ゆでたまご』
角川書店の『マッスルリターンズ』
ゆでたまご先生の短編が掲載されているコミックスには、ほぼもれなく入っているという感じです。
『デスゲーム』の内容
「この作品を、今は亡きブルース・リーにささげるー」
『デスゲーム』というタイトル、この漫画の主人公が着ている2本ラインの服装から、ブルース・リーの遺作『死亡遊戯』のオマージュであることがわかります。
『死亡遊戯』の解説でも書きましたが、ブルース・リーは『死亡遊戯』の一部撮影を終えただけで、作品を完成させることなくこの世を去りました。
ゆでたまご先生は、未完となった『死亡遊戯』の五重塔バトルはこんな内容だったのでは?と想像し、本作『デスゲーム』を書き上げたのです!
謎の秘宝を得るためにインモラ島へ
主人公のワンは、全世界空手トーナメントに見事優勝。マネージャーのナカーノから記者会見をするためすぐABホテルに向かうよう指示を受けます。
部屋に通されるも落とし穴が用意されていて、ナカーノに騙されて落下した先には、鉄仮面をかぶった謎の人物待ち構えていました。(ナカーノとはアデランスの中野さんです)
謎の人物に、ワンの息子ジョンを人質に取られ、インモラ島に唯一ある建物「七重の塔」の最上階に隠された秘宝を持ち帰るよう依頼を受けます。インモラ島は地図にはなく、周辺は常に濃霧で、断崖絶壁のため船を止めることは難しい。泳いでたどり着こうにも人食いサメの餌になってしまうという。
ようやく陸に上がったとしても、七重の塔には七人の寝ずの番が四六時中見張っている。しかも寝ずの番は格闘技のプロフェッショナル。そこで、寝ずの番の対峙するために全世界空手チャンピオンのワンに白羽の矢がたったというわけです。
息子を人質にとられたこともあり、ワンはしぶしぶ依頼を引き受けることになりました。
2人のパートナー
インモラ島までの案内人として2人がアテンドすることになりました。1人は死刑執行直前のフランス人のデイトン・ベルモンド。もう1人はおなじみのオッサン、コルレオーネ。
というわけで、ワンとベルモンド、コルレオーネはインモラ島へ向かいます。
七重の塔の刺客
インモラ島へ無事に上陸し、七重の塔に立ち入った瞬間、謎の黒ずくめが一行を襲撃。
不意打ちにも関わらずワンたちは黒ずくめを無事返り討ちにします。1人が塔の2階に上がっていき、ついに『デスゲーム』がスタートします!
2階の番人 ボクサー
2階に上がると、壁には無数のブランデーがあって、そこにグラスをくゆらすボクサーが座っていました。ワンは事情を説明し、戦いは避けたいと伝えましたが、それも叶わずボクサーと対戦することになります。
ボクサーの強烈なパンチをノーガードで受けるワンでしたが、ダウンすることなく耐え、回し蹴り一閃でボクサーを吹っ飛ばし、ネックブリーカードロップでボクサーをKOしました。
ワンは空手家なのにプロレス技も使えるんですね…。
3階の番人 プロレスラー
次は妙にアゴが長いプロレスラーが相手。黒いパンツとリングシューズでまさにストロングスタイル。アリキック、バックドロップ、卍固めと必殺フルコースを繰り出すも、なんとワンは卍固めから脱出。「ダァ!」とプロレスラーの合間をぬって顔面へ飛び蹴り!一撃でプロレスラーを撃破しました。
4-6階の番人
私の説明が手抜きなのではなく、4階ヌンチャクの名手・5階全米空手チャンピオン・6階棒術の達人はたった一コマで撃破した様子が描かれています。
7階の番人 大巨人
いよいよ最上階にたどり着いたワン。いきなり、巨大な手でアイアンクローに捕まってしまいます。
『死亡遊戯』のハキム同様、最後のボスは大巨人。
長いリーチとパワーを生かしてワンを袋叩きにするも、ベルモンドの手助けにより、ワンの打撃ラッシュ→ヘッドバットでついに七重の塔を制覇しました。
秘宝の正体
七階にあった秘宝を手にするワン。ほどなくして濃霧が晴れ、謎の鉄仮面がヘリコプターでやってきました。息子を無事に返してもらい、入手した秘宝を渡すことになりました。
先の大巨人から「秘宝はおそろしい力を持っており、神にも悪魔にもなれる」と聞いていたため、ワンは鉄仮面に秘宝を何のために使うのかと尋ねます。
第二次大戦中、ドイツの科学者が新エネルギーを発明したが、科学者は戦争に使用されることをおそれ、このインモラ島の七重の塔に設計図を隠し、寝ずの番人をおいた それが秘宝の秘密だ
鉄仮面は仮面を取り(取ると歯の抜けたじーさん)クワッと笑って世界征服の夢を語りだしました。ワンが秘宝を渡すのを躊躇していたところ、じーさんは「よこさんか!」とばかりにワンに詰め寄り、運悪く足を滑らせ、あ~れ~と崖から海へ落ちてしまいました。入手した秘宝とともに…。
まとめ
いかがだったでしょうか?これがゆでたまご版『死亡遊戯』です。
息子を人質に取られたことを動機に、隠された秘宝を得るために塔の番人と戦う、というストーリでした。
格闘マンガとしてはなかなか。ですけど、プロットほとんどがブルース・リーのそれなので、モチーフやオマージュと言えば聞こえはいいのですが。(パクリでは?という言葉はぐっと飲みこんでおきます)
そして、秘宝以上に謎だったことがひとつ。最初に襲撃してきた黒ずくめにいたんだろうけど、1階の番人は誰だったのか?何の達人だったのか…。
最後に、『お~い!!マンガだよ~ん』掲載版の巻末にあるゆでたまご先生の作品解説を引用してこの項を終えましょう。
僕たちブルース・リーファンにとって、彼が映画『死亡遊戯』の完成半ばにして死に去ったことが、一番の無念でした。そのため、彼が想像した『死亡遊戯』はおそらくこの様なものではなかったか、と創作して描いたのがこの作品です。ブルース・リー思い入れたっぷりの作品です。
『お~い!!マンガだよ~ん』巻末にあるゆでたまご先生の作品解説より
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