過去の映像や代役でブルース・リーを偲ぶ、リー(ほとんど不在)の主演映画『死亡遊戯』を観た!

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『死亡遊戯』

池袋にある名画座の新文芸坐で、ブルース・リー特集を観てきましたので、今回はブルース・リー主演の『死亡遊戯』を紹介します!

先に『ドラゴンへの道』をレビューしていますのでそちらもご覧ください!
今回紹介する『死亡遊戯は』ブルース・リーが亡くなってから完成した生涯最後の作品です。

  • 『ドラゴン危機一発』1971年、日本公開は1974年
  • 『ドラゴン怒りの鉄拳』1972年、日本公開は1974年
  • 『ドラゴンへの道』1972年、日本公開は1975年
  • 『燃えよドラゴン』1973年、日本公開は1974年
  • 『死亡遊戯』1978年、日本公開は1978年

ネタバレを承知で書きますが、本作『死亡遊戯』はクライマックスシーンの五重塔バトルのみ撮影が完了しており、それを中断して『燃えよドラゴン』の制作に取り掛かったとのこと。

その後、ブルース・リーが亡くなってしまうため、『死亡遊戯』では撮影済みの五重塔バトルを活かすかたちで、前後のストーリーを代役を立てて付け足し、一つの映画としてを完成させました。言わば、ブルース・リー(ほとんど不在)の主演映画と言えるでしょう。

本作は、その前提で観ないと違和感ありまくりかつチンプンカンプンだと思いますので、ご覧になる方は、その点踏まえておいた方が良いですね。

あらすじ

中盤まではリーのそっくりさんによるハリウッドドラマ

ブルース・リーのそっくりさんが演じる、主人公ビリー・ローは世界的なアクションスター。歌手のアンは恋人ですが、二人して国際シンジケートから悪質な契約を迫られます。世界のスポーツ選手や有名ミュージシャンに契約を迫っては金儲けに興じ、また反抗や抵抗した場合は…と脅しまわっていました。ローは再三マフィア筋から契約を迫られます。映画撮影中に天井から大きな照明が落ちてきたり、追手が付け狙われたり…。恋人のアンとともに友人の新聞記者を訪ねますが、シンジケートと契約した方が身のためだという忠告を断り、ローはシンジケートからの契約を拒否することを選択しました。

その後も執拗にローを追いかけるシンジケートの手先。ついには、ローが主演する映画のクライマックスシーンに敵役として紛れ込み、実弾入りピストルをローに発射!ローの顔を貫通してしまいます。

ローと友人の記者はこれを好機と考え、アクションスターのローは死んだ!と大々的に発表します。偽の葬儀まで執り行い、ローは整形し身元を隠したった一人で巨大シンジケート組織に戦いを挑むのです。

本作最大のみどころ

本作の見どころは、黄色のトラックスーツを着用してからのバイクアクション&五重塔バトルでしょう!

ブルース・リーと言えば、二言目には出てきそうな黄色のトラックスーツ。実は敵をかく乱させるために敵の衣装をパクったものだって知っていましたか?そして、このトラックスーツは黄色に黒ライン・黒に黄色ライン、緑に黒ラインとバイク乗り3人衆が着用している3パターンが存在します。ローはたまたま、その黄色に黒ラインの敵の身ぐるみを剥いでパクって着た、ということで、撮影済みだった5重塔バトルに繋がっていきます。

また、倉庫内をバイクで追いかけ合いながらシーンもかっこいいです。フルフェイスのヘルメットをかぶっていて、まさに『キル・ビル』です。

五重塔バトルの3連戦

倉庫でのバイク戦に勝利したローは、敵からボスの居所を聞き出します。レッドペッパーというレストランにいることがわかり、すぐさまレストランに向かいます。

レストランを入ったところから、ブルース・リー本人ですでに撮影済みであった五重塔バトルがスタート。どう考えてもレッドペッパーなんていうレストランの内装じゃないでっせ。そこには上の階に続く階段だけがある、殺風景なワビ・サビルーム。うーん、これどんなレストランなんだ?とんでもなく広い隠し部屋か?

ここからボスと戦いながら、上の階に上っていくという、もともと撮影されていた流れになります。

第一戦:VS棒術・ヌンチャク使い パスカル

ブルース・リー本人ではあるものの、どうやら声はリー本人ではなく吹き替えのようです。

とにかくリーが例の怪鳥音で叫ぶ叫ぶ叫ぶ!今までのそっくりさんリーは、なんだかおとなしい・落ち着いた雰囲気だったんですが、この対決のリーは、いわゆる”かかっている”と言いますか、本領発揮という感じ。その静と動のコントラストが代役と本人の差を際立たせる結果になっています。

互いに棒状の武器を持って対戦が始まりますが、とにかくリーが押しまくる。対戦相手のパスカルをほとんど寄せ付けません。次第にヌンチャク対決になり、これでもリーが圧倒。武器をはじいて失ったパスカルが、すごく情けない表情で負けを悟りながらも、構えてリーに向かっていきます。
が、あえなくヌンチャクの紐で首を絞められKO。

パスカルさんよ、あんたハッキリ言って気迫で負けていたよ!

第二戦:VS空手 名もなき戦士

先の戦いとはうって変わって肉弾戦。相手はドハデな道着を着た空手家。一進一退の攻防が続くも、終始リーのペースは変わらず。この試合はリーの背負い投げなど打撃以外の攻撃が多くみられます。なんとフィニッシュはバックブリーカー。

ゲーッ!腰の骨が折れている!

はっきりいって、ぜんぜん相手にならん!

第三戦:VS 巨人 ハキム

私はこのハキム戦が大好きです。

リーと倍近い身長差がある巨人との対決で、フィジカル的に劣勢な相手をどう倒すかが、単純かつとてもエキサイティングです。

それから、生死を掛けた戦いなのに、ハキムの衣装がなんだかユル~イのもツボです。ゆったりシルエットの水色ロンTとショートパンツの組み合わせなんて、夏場のオバハンやないですか笑。サングラスもしているし、全体的に風貌が胡散臭いんですよねえ。

とはいえ、長身から繰り出される蹴りやソバットはリーチが長く、また終盤に仕掛けるバックドロップは強烈でした。この戦いでは、序盤にカニばさみからのレッグロックなど、リーによる巨人対策的な戦い方が随所にみられます。光に弱いハキムの弱点を突いた打撃のコンビネーションでダウンさせ、執拗に締め技を狙います。肩固めはひっくり返されてしまいますが、最後はチョークスリーパーで骨が折れる音が聞こえるまで締め続けてKO。

さすがに連戦の疲れが出てきたリーでしたが、満身創痍の末に勝利しました。リーの攻撃は戦略的であり、総合格闘技風です。投・打・極、すべてを駆使して三連戦を戦い抜きました!

ニセ ブルース・リーのアクション

五重塔バトルは吹き替え怪鳥音のテンションもさることながら、ブルース・リー本人のアクションが凄まじい。ですが、そっくりさんに関することにも触れておきましょう

ブルース・リーのそっくりさんとしての代役は、見た目もさることながらアクションもなかなかカッコイイ。そりゃ本人と比べれば別人ではありますけど、映画として観られるストーリーになっていました。何人か代役がいるそうで、複数人でブルース・リーを演じたようですね。

ビリー・ローの役柄としてほとんどサングラスを付けていて、あまりローの顔を映さないようにするなどアングルに注意を払っていましたが、ちょいちょいインサートするブルース・リー本人の過去映像なんかは、作品を余計に安っぽくしているような印象を受けてしまいました。

また、主人公のビリー・ローは映画アクションスターという設定で、過去のブルース・リー作品の映像がたくさん出てきます。リーの代役を立ててそっくりさんが演じているのに、その代役が劇中に演じる映画シーンは、過去のリー本人の作品を引用しているので、真剣に観ていると混乱してきそうです。

また、せっかくローは顔を打たれて整形して再登場するというストーリがありながら、クライマックスの五重塔バトルがブルース・リー本人であることから、整形ギミックは活かせずにいますね。代役がブルース・リーを演じるんだから顔を打たれて整形する、というのは現実的な演出で面白いと思ったんですがね、あまり活かされていないように感じました。

別バージョン、死亡的遊戯

繰り返しになりますが、本作『死亡遊戯』はブルース・リーが亡くなる以前に撮影していた五重塔バトルシーンを元に、映画プロデューサーたちが前後のストーリーを作り、五重塔バトル自体も編集しなおすことでハリウッド映画に仕上げています

それとは別に、撮影済みだった”本来の”五重塔バトルを活かした、ショートバージョンも存在します。

その名も『死亡的遊戯』。

なんとブルース・リーとあと2人の若者の3人で塔を登っていく、というストーリー。対戦相手は、棒術家・空手家・巨人と大筋は同じなのですが、リー以外の2人が戦うシーンがあったり、またリーの格闘内容も若干違っています(こちらは吹き替えの怪鳥音がありませんので、かなりおとなしい印象)。

ブルース・リーと黄色トラックスーツが好きな方は、2度おいしいことこの上ないこと間違いなし!

本作『死亡遊戯』を観た後は、ぜひ『死亡的遊戯』もチェックしてみて下さい!

小ネタ

本作のメインテーマ『Game of death』はあまり有名ではありませんが、荘厳かつメロディアスなオリエンタル調の曲ですごくかっこいいです。ボクサーの辰吉丈一郎の入場曲と言えばわかる方はいますかね?ぜひ何かで聞いてみて下さい(というか五重塔バトルだけでも観てほしい)。

それから、漫画家ゆでたまご先生が「ブルース・リーに捧げる」として本作をモチーフにしたデス・ゲームというマンガを発表しています。そちらはまた”ゆでの部屋”のページで紹介する予定です。

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