先日の『椿三十郎』に引き続き、池袋の映画館、新文芸坐で黒澤明監督作品『隠し砦の三悪人』を観ました。
新文芸坐では黒澤明監督特集の最終日です。『椿三十郎』があまりにもテンポが良くておもしろかったので、時間を作ってまたまた黒澤映画を観てきました。
過去に見た『七人の侍』も先日の『椿三十郎』も今回の『隠し砦の三悪人』も、ぜんぶ三船敏郎。
キャラクターが全然違うのに、まったく違和感がない!
また三船敏郎か~ではなく、え?三船敏郎?という感じ。見事に演じ分けている…。
30代後半にして、私は今までなぜ三船敏郎を見てこなかったのか!と情けなくなってきました。世界のミフネ、すごいです。
黒澤映画では『赤ひげ』や『影武者』も三船敏郎のはず。また機会を作って観てみたいですね。
隠し砦の三悪人とは
例のごとく、映画若輩者のワタクシですが、ちゃんとお金払って映画を観ていますから、ちょっと語らせて下さい。
『隠し砦の三悪人』は、松潤のリメイク作品のタイトルで認識していましたが(リメイクは未視聴)、なんだか響きの良いタイトルだなあというのが第一印象でした。
本作は戦国時代、国取り合戦が舞台。褒美目当てで合戦に参加したが自軍が敗北てしまった百姓が2人路頭に迷っていた。一方、合戦に敗れた秋月家の残党である姫君と侍大将が砦に隠れながら、隠した金塊を持って同盟関係の早川領に逃げ込むことを画策していた。ひょんなことから金の棒を見つけた百姓2人と遭遇し、協力(?)反目しながら敵陣の経由して早川領を目指すことになります。
冒険活劇でもあり、武士社会の特殊性も描きながら旅をしていく時代劇ロードムービーです。
『隠し砦の三悪人』の魅力とオススメポイント
本作『隠し砦の三悪人』の魅力をまとめると…
- ダメコンビの太平と又吉のキャラが立つ
- 新人女優の姫君がカッコイイ!
- 武士の世界に生きるアツい男、田所兵衛!
- 起承転結が明確な冒険譚
主役は秋月家の姫君である雪姫と侍大将の真壁なのですが、物語の中心は、百姓出身の欲に生きるが憎めないダメコンビ、太平と又吉。
合戦の兵隊として秋月家に参加するも落城し路頭に迷う2人から始まりますが、いつも揉めていてばかり。だけどピンチになったら一緒に死のうと言わんばかりの調子の良いやつらです。
物語ずーっと通して、ほとんど役に立たない。やるときゃあやる!ではなく、ずっとやらない。ラストシーンでちょこっと改心するのですが、トコトン欲深いところが人間らしくもあります。
実はこの2人、スターウォーズ:エピソード4(いわゆるスターウォーズ1作目)のC3POとR2D2の関係性の元ネタだそうです。
そして姫君の雪姫。新人女優の上原美佐が演じています。見ようによっては大根演技と言えなくはないんでしょうけど、私はすごくグッときました。
実直で強気なおてんば娘、キリリと威勢がいいがよーく見ると色っぽい。真壁の妹が自分の身代わりになって処刑されたことを知り、誰にも見せずに国を想い涙するシーン。なんだかもののけ姫っぽい感じもする。道中で秋月家の娘が奴隷として売られていることを目にし、敗北の責任を痛感するシーンなどもあり、自分が多くの犠牲の上に立っていることに覚悟した場面もかっこいいなあと感じました。(コチラもスターウォーズのレイア姫がモチーフにしているようです)
また、真壁の盟友・北斗の拳風にいうと強敵と書いて”とも”と読むパターンのライバル、田所。ラストシーンに繋がる、重要な真壁VS田所の槍勝負。勝負に敗れ自害の準備をするも真壁に見逃される結果に納得がいかないのも武士の生き様であり、また後半の振る舞いも武士の所業ですね。いかにも日本文化的な、”菊と刀”的なキャラクターです。
物語の起承転結がはっきりしていてストーリーを追いやすいのでたいへん観易い。最近、映画を観るときは、今は起承転結のどのあたりか注意しながら観るようにしています。(エヴァンゲリオン新劇場版で学びました)
分かりやすい冒険ストーリーが好きな人にオススメ
白黒映画ではありますが、今観てもあまり古さを感じさせません。魅力的なキャラクターと期待を裏切るような展開もなく、安心して観られます。
あまり奇をてらった作品ではありますが、王道の冒険ストーリーともいえます。2時間ちょっとと少し長い作品ですが、時代劇に抵抗がない方には超オススメです!
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