【19冊目】必読!業界一ケンカマッチに詳しい垂涎の出来映え『証言 プロレス界ケンカマッチの真実』宝島社

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マニア納得、初心者にもやさしい

ケンカマッチ。それはプロレスマニアや昭和プロレスファンの琴線に触れる香しい戦いのロマン

それは、プロレスの枠内をはみ出してしまいそうな、令和の世で使用される予定調和的な「プロレス」という言葉と相いれない時代錯誤なスタイルかもしれないし、現在のマット界においては禁断の仕掛けかもしれない。

古くは力道山対木村政彦に始まり、アントニオ猪木対グレートアントニオ、スーパータイガー対前田日明、前田日明対アンドレ・ザ・ジャイアントなど…

今もなお語られるケンカ・不穏・シュートといった危ない試合の数々。

国内古今東西ほぼすべてのケンカマッチが収録されていると言っても過言ではなく、初心者には入門書にピッタリ、そしてマニアにも納得のボリューム

「またこの手の本かよ!」とお嘆きのあなたも納得、最近の宝島社『証言』シリーズでは血色の出来映えだ。

巻末には「ケンカマッチ&不穏試合年表」も付いているぞ。

プロレスを守る一流のレスラーたち

本書に登場するレスラー関係者が語るプロレス観が様々であるから、「ケンカマッチ」「不穏試合」「シュートマッチ」という言葉の定義は難しいのだが、プロレスの世界で起きるプロレスの範囲をギリギリ超えたり超えなかったりするもの、と捉えると良いかと思う。

ある程度お互い信頼しあったもの同士が範疇を逸脱して(またはしそうになって)キツめに攻め合う試合をケンカマッチ、お互いに面識や信頼なく噛み合わなくなって疑心暗鬼によるギクシャクした試合を不穏試合、カタい攻撃で一方的に相手をノしてしまった試合をシュートシュートマッチ、そう勝手に定義づけてみた。

ただ、喧嘩であろうが不穏であろうがシュートであろうが、「決まっている結末を破った」試合って少ないことではないか?要するに各々なりに「プロレスを守っている」わけだ。

1.4事変も前田VS佐山も前田VSアンドレも、無効・リングアウトなどなんらかの形で勝敗が付かない結末でリングに上がっているように思うし、ネット語でいう“ブック破り”というのは相当珍しい例ではないだろうか。

本書で詳しく解読できる北尾VSテンタは(2日前の試合に続いて)北尾が2連敗することを受け入れなかった、とアポロ菅原が明かしている。よって本試合は北尾が結末を拒否して不穏試合になったと見れなくもなく、ある意味ではブック破りと言えるのかもしれない。

しかし、いずれにしても試合中の実力行使で結末を書きかえるものではなく、結末を受け入れないままリングに上がり試合を壊すやり方であって、やはりブック破りという表現は少し合わない気もする。そういう意味で負け役が試合中一方的に力でねじ伏せて自らの勝利に書き換えた例はないのではないか。

そんな観点からも『極悪女王』で脚光を浴びた全日本女子プロレスは、やはり特異な団体だったと言える。

この手の話はとにかく「底が丸見えの底なし沼」な世界だ。

豪華インタビュー陣

本書は豪華な関係者インタビューと編集部の解説がたいへん充実している。

U系選手の登場は定番ではあるが、こうした書籍でかなり珍しくスペル・デルフィンが登場。伝説の「股くぐり事件」について詳しく言及している。

スランプによる長期欠場は新婚旅行に行くためとの噂を聞いたことがあったが…真相はぜひ本書を確かめてみてほしい。

また、本稿ではデルフィンのプロレス観も興味深く、結果的にこの「股くぐり事件」や、のちの「SASUKE組」の蛮行がみちのく離脱に向かわせたことがよく分かる。

それからアポロ菅原のインタビューも昭和プロレスラーの矜持がよく分かる素晴らしい内容だった。語りに語りつくされた鈴木みのるとの不穏試合であるが、試合に向かった彼の心意気に敬意を表したい

その他、ジャッキーVS神取、安川VSヨシコにも詳しく女子ならではのエグい世界も垣間見ることができる。

▼豪華関係者インタビュー
U系:藤原、佐山、山崎、船木
王道系:川田、アポロ
インディーおよび女子系:デルフィン、ブル中野、山本雅俊(JWP代表)

令和マット界では…

ワクワク・ドキドキ心を踊らされるケンカマッチなのだが、はっきり言って令和マット界では受け入れられないだろう。

そもそも多くのファンはプロレスに多幸感を求めて会場にやってきているし、多種多様にあるエンタメコンテンツの中からプロレスを選び、時間と金を掛けて観戦しにやってくる。

よくわからない結末や不透明決着では現代ファンはおもしろがらないし、次のコンテンツに選んでもらえない。ストーリーに繋がるようなヒール軍団のバッドエンドでも納得しないともいう。

最も直近で目立ったケンカマッチでいうと安川VSヨシコが代表的だろうが、そんな特殊な試合を喜ぶのはマニアだけで、多くのファンはがっかりしたことだろう。

そして他団体交流が盛んな現マット界では、団体側から見てもそんなわけのわからない危険な選手を使うメリットもない。(そういう意味ではsareeeは奇跡のバランスで成り立っていると思うが)

プロレスは闘いである。それはもちろん同意する。だからといって喧嘩を仕掛けたり不穏な空気を醸し出すことだけがリアリティではないはずだ。観客に媚びる必要はないが時代を読むセンスは重要で、現代ファンが納得する令和ならではの闘いを見せてくれればそれでいい。

いつの世も過去ではなく今を生きる人間が優先されるべきで、そうした者が未来を開拓していく。

そして私のような老害ファンは、本書のようなマニア向け書籍を買い支えていこうではないか。

内容★★★★★
赤裸々★★★☆☆
ケーフェイ★★☆☆☆
レア度★☆☆☆☆
必読度★★
★★★

一言コメント:
出ました!必読度最高点!プロレスマニアは読め!

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