現在、日本のプロレス界において、まごうことなきスーパースターは誰か?
現在の現役選手においてその象徴は、レインメーカーことオカダ・カズチカでしょう。
新日本プロレス一強時代とも言われる昨今ですが、現役選手の中では、もはや武藤敬司や棚橋弘至と肩を並べ、いや追い抜いたのではと思わせる存在感。
対抗できるとすれば、WWEに移籍したカリスマ”SHINSUKE NAKAMURA”ぐらいではないでしょうか。
そんなオカダ・カズチカ選手が2014年出版した処女作が、本書『人生に金の雨を降らせる黄金律 レインメーカールール』です。
こんな人にオススメ
- オカダ・カズチカがレインメーカーになる前のキャリアを知りたい方
- プロレス界のトップが考える成功哲学が知りたい方
- 素顔のオカダ・カズチカに興味がある方
オカダ・カズチカは彗星のごとく新日本プロレスに登場しました。本名の岡田かずちかとしてヤングライオン時代を過ごしていたものの、それほどの注目はされず(とはいえ要所要所でVSノアに選抜されたり、壮行試合が組まれており会社の期待は背負っていましたが)、アメリカの団体TNAでの遠征を経て、東京ドーム大会に凱旋帰国します。そして、トントン拍子に時の王者・棚橋に挑戦し、見事1度ででIWGPチャンピオンになりました。
そこから初防衛戦の対内藤哲也戦、G1クライマックス優勝という実績を残し、後世にレインメーカーショックと呼ばれる一大ムーブメントを起こすのですが、当時私はオカダに対してあまり良い印象を持っていませんでした。
確かに試合の説得力と勝利の納得感は抜群でしたが、やはり先導役である外道がマネージャーについていたこと、CHAOSの先輩格である中邑真輔がいたことから、会社が押し上げて作られたスターと印象は拭えませんでした。(ただし、担がれた神輿から落ちずに見事乗り切っているなあ、という印象はありました)
本書が書かれたのは2014年G1クライマックス、西武ドームで中邑真輔を下して2度目の優勝を飾った後のタイミングです。新日本プロレス入門前のメキシコ闘龍門時代の経験談や、いかにして新日本プロレス内で自身のポジションを勝ち得たか、レスラー処世術にも触れられています。
また、冒頭は例のビッグマウスで始まりますが、本書はかなり素に近い形で書かれていると思います。
この本は、オレにとって最初の本になる。出版社の人からは、「オカダさんのこれまでの人生経験を通じて学んだことを、多くの悩める人たちに伝えてほしい」と言われ、最初の本を出版することになった。飛ぶ鳥を落とす勢いのレインメーカーにすがりたい気持ちはよくわかる。何しろオレは「カネの雨を降らせる男」だから。この本を読んだ読者はもちろん、出版社にも、たっぷりとカネの雨を降らせてやろうかー
いや、やめよう。いつものレインメーカーの大見得を切るのではなく、この本では素直な自分の気持ちを飾ることなく伝えたい。
まえがきより引用
スターである前に、努力の人
突如スター化した印象が強いオカダ・カズチカですが、本書を読むとリング場のイメージと随分違い、かなりの努力家だということがわかります。インタビューなどで先輩レスラーがオカダ評として「努力家だ」と語っているのは頻繁に聞いていましたが、新日本プロレスに所属する前の闘龍門(神戸を拠点にするプロレス団体)時代、何の格闘技バックボーンがないオカダがどのようにして生き残ってきたかについて、具体的なエピソードが紹介されています。逃げようかと母親に電話し反対されたとか…。レインメーカーも人の子ですね。
本人は高校に行かずに中卒で闘龍門へ入門し、ある意味退路を断った状態でプロレス界に入ったのだそうです。結果、同期30名のうち残ったのは8名だったと。もっと身体能力が優れていて、格闘技の猛者もいただろうに、その環境で生き残った経験と自信があるのは強いですよね。(ちなみに闘龍門神戸時代のコーチはミラノコレクションATとのこと)
レインメーカーは一日にしてならず、ですね。
当初のレインメーカーはビッグマウスで有名でしたが、大口を叩いて注目を浴び、その注目(嫉妬や羨望)を見返すやり方だってある、と我々にエールを送ってくれてます。たとえ担がれた神輿であったとしても、相当なプレッシャーだったと思います。それに打ち勝っていくレインメーカーの凄さを、2022年になった今、改めて感じます。
レインメーカーが語る”本物”とは
当時、オカダは”本物”という言葉を多用していました。本物のレスラーとは、本物のチャンピオンとは。本書ではオカダ・カズチカが考える”本物”についても語られています。
”本物”とは、その存在だけで認められる人のこと。一方偽物とは、何かに頼らないと存在できない人のこと。肩書がなければ、人に認められないうちはまだまだ偽物である、と。
たとえチャンピオンベルトを失ったとしても、たとえ違う団体に移籍したとしても。地位や肩書で評価されない、存在だけで認めさせるスーパースターこそが本物である、ということでしょう。
私にはこの部分がグサリと刺さりました。私の人生のほとんどの時間は仕事です。仕事の自分とは、会社に属する自分。相手にとっては同僚であり取引先であり、それぞれ立場は変わりますが、すべては組織に属する自分という役割なわけです。私も、フリーランスでリングコスチュームだけを持ち、世界中を旅するような本物のレスラーのような社会人になってみたいものです。
その後のレインメーカー
良い試合はするけど会社にプロテクトされているという当初の印象から、本書以降のレインメーカーは、私の中でのオカダ評はガラリと変わりました。
中邑真輔との別れを経験しCHAOSを背負ったこと、天龍源一郎を介錯したことで1段階ステージがあがりました。ケニー・オメガとのマラソンマッチを経験しタフネスぶりを発揮、外道に裏切られる形で独り立ち興行締めマイクも板についてきました。スポーツ雑誌number誌上でアントニオ猪木と対談、おそらく新日本プロレス50周年に向けた猪木招聘と、直々に薫陶を受ける既定路線だったんだろうと想像しますが、コロナウィルスと猪木の闘病によりそれも叶わず…。そんな中で、猪木オマージュなガウンをまとい、卍固めまで繰り出す。
努力を重ね様々な経験を積み、覚悟をもってプロレスに取り組んでいることがファンに伝わってくる。コスチュームや技だけではなくて、まさに猪木以後の新日本プロレスの象徴となるレスラーになってきた!と感じています。
藤波・長州も、闘魂三銃士も、棚橋・中邑も成しえなかった猪木化。オカダならやってくれる!プロレスというジャンルを越えて、世界にカネの雨を降らせる男になる!と、スレたファンながら応援しております。
このあたりでまた、直近のオカダ・カズチカが語るプロレス本を読んでみたいですね!
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