新日本プロレスワールド【NJPW今日は何の日】2008年10月13日:武藤の新日本侵略途上、中邑真輔のIWGPヘビー級リベンジマッチ

こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。

金曜日は闘いのワンダーランド!

毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。

新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合を紹介します!

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10月13日は何の日?

今回は、2008年10月13日に両国国技館で行われたこの試合をテーマに考えてみることにしましょう!

当時全日本プロレス所属でIWGPヘビー級王者だった武藤敬司に中邑真輔が挑戦する一戦です!

https://njpwworld.com/p/s_archive_106_1_02

武藤の新日本侵略

2008年当時、新日本プロレスはオーナーアントニオ猪木から離れ、2000年代のいわゆる暗黒期を脱しつつある上昇気流の中にありました

草間社長時代から計画されていた、第三世代を踏み台にした棚橋・中邑両エース路線がいよいよ軌道に乗ってきた頃で、真壁・矢野ヒール化も板についてきましたし、さらには遅れてきた男・後藤も台頭したことでいよいよ布陣が揃ってきたという状況でした。

一方で、時のIWGPヘビー級王者だった中邑には圧倒的にプロレスの経験値が足りていなかったともいえます。

スーパールーキーデビュー戦から総合格闘技挑戦を経て、最速でIWGPヘビー級王者にたどり着いた中邑でしたが、ブラックニュージャパンやRISEなどのユニットに参加し肉体改造(というよりはウェイトアップ)をしたりしましたが、なかなかプロレスのスタイルを確立できずにいました。

良いも悪いも総合系プロレスラーの名残はなくなり、あまり特徴あるレスラーではなくなっていたこの頃、王者として日本プロレス界最大のスターともいってよい武藤の挑戦を受けることになります。

新日本プロレスは、中邑のIWGPを捧げてでも「なにかキッカケを掴んで欲しい」という気概があったのかもしれませんし、2000年代初頭に唐突に新日本から離脱した武藤に対して、新日本が脱・武藤もしくは新日本の若手たちが武藤越えを果たすための、もしかしたら生贄だったのかもしれません

王者武藤の軌跡

2008年の武藤IWGPロードは以下の通りです。

・2008年4月27日(大阪府立)中邑から奪取
・2008年7月21日(月寒)対中西
・2008年8月31日(日本武道館)対後藤
・2008年9月21日(神戸ワールド)対真壁
・2008年10月13日(両国)対中邑
・2009年1月4日(東京ドーム)転落し棚橋が奪取

第三世代の中西を除いては、ほぼ武藤と対峙したことがない選手たち

永田や天山が挑戦者に含まれていないことを考えても、やはり新日本プロレスの若手に武藤敬司を経験させる、という大きな目的があったことがうかがえますね

そして、注目すべきは中邑に対して少し格下感があった棚橋が、中邑がなしえなかった武藤越えを果たすことで、一挙に真のエースへ躍り出たということでしょう。

武藤からバトンを渡されることで、棚橋は名実ともに新日本プロレスの主役にのし上がっていきます。

そして、中邑はCHAOSに移籍しメキシコ遠征を経験しクネクネ化することで、棚橋とは違う独自の迂回ルートで新たな価値観を確立し、異次元のスーパースターへ成長していくことになるのです。

試合内容

そして、今回紹介する試合は武藤敬司4度目の防衛戦

先の通り、王座を奪取された中邑にとってはリベンジマッチ。

そのシチュエーションから多くの観客は「中邑が取り返す」ことを想像したんじゃないでしょうか。中邑⇔武藤と王座が移動することで、中邑に箔をつけることを狙ったアングルだったんだな、と。

ところがどっこい、武藤の引き出しを甘くみた中邑は衝撃のフィニッシュで王座奪取に失敗することになります。

リベンジマッチということもあり、序盤はドラゴンスクリューやシャイニングウィザードを警戒し防御することに終始、絶対に武藤にペースを握らせないという試合運びで中邑優位で進んでいきます。

ただ、グラウンドの攻防でも主導権を取れない中邑は、次第にチェンジオブペースな武藤のノラリクラリ戦法にいら立ちの表情を隠せません

当時の得意技であるランドスライドや飛びつき腕十字、さらには総合格闘技では禁じ手のヒールホールドをも繰り出しますが、結局武藤の牙城は崩せず。

二度目のランドスライドを狙ってファイヤーマンズキャリーの体勢に抱えたところ、まさに閃光魔術な武藤の膝が中邑の顎を打ち抜き、カウンターのフランケンシュタイナーがズバっと決まった!

奥の手といえる完璧なフランケンシュタイナーで、誰もが納得する3カウントを奪った武藤なのでした。

終わってみれば、中邑は何とかムーサルトプレスをキックアウトすることが精いっぱいで、まさかのフランケンシュタイナーに面を喰らったのではないでしょうか。

対する武藤は、フランケンシュタイナーを決めた際には中邑の頭と足を抑えており、3カウントが入った後には「どうだ!」といわんばかりに膝立ちのまま、格の違いをみせつけました

あっけにとられる中邑とは対照的に武藤の色気が際立ったフィニッシュでした。

おそらくこの後は武藤×中邑がリング内で接触することはなかったと思いますので、2023年元日は中邑にとって15年ぶりの武藤(ムタ)とのシングルマッチで、ようやくリベンジを果たしたことになりますね。

外敵の正しい使い方

全日本プロレスのセコンドには真田聖也(現SANADA)やKAI、大和ヒロシ(現君津市議)などの面々。

全日本プロレスがある種の王国を築けなかったのは、こうしたネクスト武藤・ネクスト小島をうまく育てることに成功しなかったためでしょうし、それはNOAHも同様だと思います。結果的に現在の全日本プロレスには先の3選手はいませんし、プロレス団体において世代交代やエース継承がどれだけ難しいことか、歴史が証明していますね。

今回振り返りました武藤IWGP政権のように、ただ集客に頼った外敵チャンピオンという活用ではなくて、台頭してきた若手の経験値アップのためにパートタイマーなレジェンドをチャンピオンに据えたことは、若手のステップアップ手段の好例といえそうです。

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