こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。
金曜日は闘いのワンダーランド!
毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。
新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合をご紹介したいと思います!
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11月25日は何の日?
今回は1978年11月25日、西ドイツのシュツットガルトはグルスベルクホールで行われたこの試合をテーマに考えてみることにしましょう!
プロレス者が幻想と妄想を爆発させる”語られる試合”として名高い、いわゆるシュツットガルトの惨劇です。この慣用句はなかなかのパワーワードですね。
どんな試合だったのか、振り返っていきましょう。
猪木のヨーロッパツアー
モハメド・アリ戦を終えた猪木は、アリ戦で生じた莫大な借金を返済するために苦心していました。そんな時、アマレスの猛者でプロレス興行のプロモーターでもあったローラン・ボックから、ヨーロッパ巡業に参加しないか、と持ち掛けられます。
ボックは先の猪木アリ戦で異種格闘技に挑む猪木に関心を持ち、来日にして新日本プロレスに売り込んだといわれています。ホンモノである猪木を自身の興行に招聘してボック自身も名を上げようという魂胆だったのかもしれません(が、結果興行的には惨敗だったそうです)。
猪木はヨーロッパ遠征中23日間で21試合が組まれている過酷なスケジュールであり、さらには、対ローラン・ボック戦では衝撃の結末を迎えることになりました。
過酷な連戦の猪木
1978年11月25日、シュツットガルトのグルスベルクホールで行われた、アントニオ猪木VSローラン・ボックは、まさに凄惨な試合になりました。(猪木VSボックは、猪木の反則勝ち/引き分けを経て本遠征で3度目の対決。)
この試合、会場内がとても暗くて、華やかなプロレス興行というよりは地下格闘技の様相です。エンターテインメントプロレスとは対極にあるような、なんなら賭けの対象にもなりそうな殺伐とした試合と、観客の興奮にさえみえてきます。
そして、ルールに関してはヨーロッパルール(by古舘伊知郎)として、5分10ラウンドでの試合形式になり、結果的には両雄ともフルラウンドを戦い抜くことになりました。
猪木は連戦の疲れと慣れないヨーロッパの硬いリングで負傷していたようですが、それでもさすがのアントニオ猪木、鋼のようなグッドシェイプでリングに上がります!
地獄の墓堀人
ローラン・ボックはちょっと肉付きが良い頭がはげた髭面のオッサン(失礼!)なんですが、これがなんだか不気味な強さを連想される風貌で、”地獄の墓堀人”という二つ名もミステリアスな雰囲気を象徴しています。ボックはメキシコ五輪に出場している、正真正銘のアマレス実力者。
ゴングと同時に組み合って、すぐに猪木をバンバン投げていきます。ロックアップもホイップ(腕がらみの投げ)も、決してプロレスのそれではなくて、肩口や首のあたりから落ちるよう、体を密着させて強引に投げていく。猪木はそれに抵抗せず、しなやかにマットに叩きつけられます。
マットに叩きつけられるたびに乾いた衝撃音が会場に響き渡りますが、猪木はすかさず体を入れ替えてバックを取りクルックヘッドシザーズのような格好でボックの首を絞めこんでいく。
猪木自身は格闘技経験者でないにもかかわらず、カール・ゴッチ仕込みのテクニックでアマレス五輪代表と互角に渡り合っていきます。
極限のプロレス
この試合、決してガチンコにはみえません。
だけど、従来のプロレスとは全く違っていて、それぞれひとつひとつの攻防が、お互いの真剣で試し斬りしあっている、果し合いのような戦い。試合の結果ではなくて、どちらの方が強いかはお互いがジャッジをやろうじゃないか、と体で会話しているのかなという印象をもちました。派手さはないけどギリギリ体が痛むような、命の削り合う試合なのかな、感じました。
よく”スパーリングが強い”なんていう言い方がされますが、スパーリングでどっちが強いか決めようとする道場マッチのような雰囲気がありますね。本来、観客に見せるものではない試合展開なんじゃないような気もします。
いや、ほんとに投げや締めに関して、めちゃくちゃ攻撃がきついんですよ。かなり体力を消耗する、肉体を酷使する試合だなと思いましたね。打撃に関してはプロレス範疇というか、KOに追い込む一撃はなかったのですが、その分ボックの投げ技は受け身が取れない急角度スープレックスが多かった!
観客(ドイツ人かな?)による謎のボック応援歌などもあり、終始ボックコールが沸き起こる状況。アウェーな猪木をミスター新間(らしき人)が心配そうに見つめます。
猪木、敗れる!
最終ラウンドに向かうにつれお互いの攻防が激しくなり、猪木がショルダースルーのような格好でボックを場外に落とした際、ボックは目尻から出血。
猪木はこの目尻を狙い、下から突き上げるような片足でのドロップキックを見舞います。繰り返しますが、お互いを壊してやろうという攻防はないので、あくまでプロレスの枠内ではあると思うんですが、両者の攻撃がとにかくカテェ!負傷箇所を狙うのはセオリーとばかりに激しい攻撃を叩き込んでいきます。
フルタイム戦い合った両雄でしたが、勝敗は判定に持ち越され、結果はボックの判定勝ち。確かにエグイ攻撃で全編にわたってボックの方が押していたかなと思います。
まさかの猪木判定負けと、猪木が終始カタイ攻撃で攻め込まれるという稀有な試合として、「シュツットガルトの惨劇」は今もなおオールドファンの心に刻まれている一戦といえるでしょう。
本試合は新日本プロレスワールドで50分オーバーの長尺動画で視聴可能です。実況はおそらくアテレコの若き日の古舘伊知郎氏です!
ボック来日による一戦
また、ボックは1982年の新日本プロレス元日興行に特別参戦し猪木の再びシングルマッチで戦いますが、試合結果は猪木の反則勝となります。試合自体は「シュツットガルトの惨劇」とは異なり、ボックは激しい攻撃をみせず、精彩を欠く消極的なファイトに終始しました。
どうやら血栓症の持病から体調が優れなかったようですね。ボックはこの試合を最後に引退し、結果的にこれがボック最後の試合になりました。こちらも新日本プロレスワールドで視聴可能ですので、「シュツットガルトの惨劇」と合わせてチェックしてみて下さいね。
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