新日本プロレスワールド【アントニオ猪木名勝負セレクション】1995年3月19日:INOKI FINAL COUNTDOWN 4th 対藤原喜明

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こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。

金曜日は闘いのワンダーランド!

毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。

新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合を紹介します!

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アントニオ猪木名勝負セレクション

新日本プロレスワールドのリニューアルで過去の動画の多くが視聴できなくなってしまってから数か月…

かなり多くの過去動画が復活してきてはいるのですが、せっかくなのでアントニオ猪木名勝負セレクションを続けていくことにしましょう!

(2025年2月28日現在、アントニオ猪木に関する試合動画は【163試合】存在します)※うち、アントニオ猪木と冠した試合も含みます。

私は現在進行形の新日本プロレスファンではあるのですが、ここにきてUWFや力道山に関する動画・書物を読み漁っております。そうすると、やはりアントニオ猪木というプロレス界における特異な存在を見逃せなくなってくるし、猪木が残した試合を介した多くの謎解きに挑戦したくなるものですよね。

1本でも多く過去の猪木動画がアップされることを祈って、これからも猪木ウォッチングを続けていきましょう。

というわけで、本日の試合はこちら。

カウントアップしていくファイナルカウントダウン、前戦の1.4東京ドームでの2連戦からインターバルを置くことなく試合が組まれた格好になりました。

対戦相手は袂を分かったはずの藤原喜明。さあ、どんな一戦になったのか振り返っていきましょう!

https://watch.njpwworld.com/details/41048

猪木のためなら死ねる!

近年、アントニオ猪木死去後に『猪木のためなら死ねる!』という追悼本を発売した藤原喜明。

藤原は猪木の弟子ではありますが、カール・ゴッチにも薫陶を受けていることもあってガチンコ(極めっこ)がめっぽう強い選手であったため、どちらかというと猪木の弟子というよりは用心棒やボディーガードという印象が強いですよね。

パキスタンでのアクラム・ペールワン戦を始め、おっかない試合の際には必ず藤原を帯同していたようですし、野毛道場にやってくる道場破りたちを迎え討つ役割も担っていたようです。

パキスタンでは、試合後によもや銃撃戦が起こりそうになった時も「猪木を守る」覚悟があったと言いますから、『猪木のためなら死ねる!』のも説得力がありますね。

そちらの書籍は前田日明との対談が面白いので、ぜひ手に取ってみてください。

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袂を分かちUWFへ…

そんな師弟関係以上の絆で結ばれていた猪木と藤原ですが、アントン・ハイセルやクーデター未遂を端に発した「猪木外し」の余波で誕生した、ユニーバーサルプロレス(第一次UWF)へ移籍することになります。

藤原は当時クーデターの兆しを全く知らなかったようですが、猪木から「お前もか?ふざけんじゃねえこの野郎!」と藤原もグルだと思われてしまったことと、UWFへ移籍した浦田社長に「あなたが必要だ」と懇願されたことで移籍を決意したそうです。

UWF解散後、時を経てUWF軍団として新日本プロレスへUターン参戦しますが、後年の契約更改では納得がいかない査定(金額云々より背広組の物言いが原因の様子)を受け、新生UWF(第二次UWF)へ移籍することに。

そして、さらに第二次UWFが分裂し藤原組を旗揚げ、藤原組長として新日本プロレスのリングに上がることになりました。

今回の試合は、猪木を2度も離れた藤原の参戦だったわけです。

安心できる相手

誤解を恐れずに言うと、猪木にとって藤原は「安心できる相手」だったのではないでしょうかね。

ファイナルカウントダウンを突っ走る猪木にとって、なにせ第一戦が飛び道具的なグレート・ムタ、第二戦は過去に対戦経験ありとはいえ、腕に覚えがあるルスカ、第三戦は喧嘩屋ゴルドーと、気が抜けない相手ばかりだったように思います。いろんな意味で「仕掛けてくる」可能性がある選手たちだったんじゃないでしょうか。

一方で藤原は手の内を知り尽くした選手であり、「猪木に牙を剥く」ことはしない絶対の安心感があった、と。

そう考えると、本試合が比較的長い試合時間だったのもうなずけますね。

試合展開

藤原のセコンドは若き日の石川雄規(バレーボーラーではない)、猪木のセコンドは当時の付き人だったであろう石澤。その他、当時の新日若手選手たちがズラリとリングを囲みます。リングで展開されるであろう、ヤングライオンたちは道場での極めっこを期待して、少しでも研究しようと熱い視線を送っているのかもしれないですね。

初手こそ猪木の浴びせ蹴りで開幕しましたが、以後は関節・グラウンド中心のクラシカルな展開。猪木のキーロック(珍しいかも)を始め、リングに体を密着させた主導権の奪い合いは非常に見ごたえがあります。

猪木のダブルリストアームサルトからアームロックを繰り出す様は、さながらUWFスタイルのようにも思えますし、MMAやバーリ・トゥードのそれではないのですが、体を入れ替え有利なポジションを取っていく猪木の無駄がない動きに惚れ惚れしてしまう!バード(なぜかI編集長風)の残虐性なんかなくったって、十分に見せてくれる真剣勝負だと感じます。

効果的に張り手やナックルを放ち、寝技が続いても決して飽きさせない展開。「UWFがなんであったか証明する闘い」といったイデオロギーはなく、邂逅と呼ぶにふさわしい、体を合わせて会話するとはこのことかと思わせてくれる非常に濃厚な攻防が続きます。

終盤、藤原は猪木のお株を奪うサイドポジションからのナックル、そして一本足頭突きで猪木を追い込んでいく。ただ、モーションの大きい藤原のヘッドバット、その隙を突いてナックルパートを見舞った猪木は一瞬にして魔性のスリーパー

辛くもロープに逃げた藤原は、お返しに猪木へスリーパー!

猪木の顎の下へググっと腕が入っていて、こちらのスリーパーの方が危険なポジションになっているように見えますが…なんとかロープブレイク。

体力の消耗が著しい猪木でしたが、ローキックから延髄斬りを見事に決め、容赦ないナックルパートからダウンした藤原目掛けてジャンピングフィストドロップ

この試合初めてのフォールで、猪木が3カウントを奪いました!

勝負を超えた歴史

試合後、座礼でお互いの健闘を称えて抱き合う二人。猪木も藤原も泣いている!

肉体言語で語り合って分かり合えるレスラーはやっぱりかっこいい!

この試合が組まれた時点で、もしかしたら観客にとって勝負論というのはなかったのかもしれない。猪木の介錯人としては最適なシチュエーションではあった藤原との対戦でしたが、藤原が勝つと予想したファンはいなかったんじゃないでしょうか。

だけど、プロレスには試合の結末なんてどうでもよくなってしまう試合があります。両選手の歴史を知っていれば、この試合が組まれた事実と、試合後に抱き合う二人を見るだけで胸が熱くなってしまう!

やっぱり、それがほかの格闘技にはないプロレスの最大の魅力だよなあ…と改めて実感しました。

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今ではプロレスの試合はネット配信されていたり動画投稿サイトでみることができますが、それでもやっぱり過去のVHSやDVDにしか収録されていない試合があったりもします。

さらに、過去数十年にわたって膨大に存在するプロレス関連本の中には、選手の自伝やインタビューが掲載されているものがありますし、プロレス研究には欠かせませんよね。

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