【伝説のカルト映画】名画座生活でついにたどり着いた…一時幻と化したトンデモ映画『幻の湖』を観た!

こんにちは!アツコアツオです。

今回は大好きな池袋の名画座 新文芸坐で、ついに伝説のカルト映画『幻の湖』を観てきましたので紹介したいと思います!

カルトなアナーキー映画を観るために名画座通いを始めて数年…やっと『幻の湖』に観ることができて、超大作にたどりついた感動もひとしおです!

とはいえ、ご存じの通り別に映画の内容に感動したわけではないのですが(笑)名画座生活のひとつの到達点といいますか、まさに『幻の湖』を追いかける長いマラソンだったな…と(上手くいえてないよ!)。

それでは作品の内容(というよりツッコミどころ)に迫っていきましょう。

※作品の内容に触れネタバレをたくさん含みますのでご注意を

新文芸坐の展示パネルより。大好きな映画館、一度は行ってみてほしい!

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幻の湖

元祖・邦画のダメ映画といってもいい本作。以後のダメ映画は『北京原人』『デビルマン』『大怪獣のあとしまつ』あたりでしょうけど、はっきりいってスケールが違いますよ

本作の特徴は、最高のスタッフが結集して大風呂敷を広げたのにも関わらず、内容も興行収益も大爆死した点にあるでしょう!

『砂の器』『八甲田山』に続く、大脚本家である橋本忍擁する橋本プロダクションの第3作目、そして東宝創立50周年記念映画ときたもんだ。

状況的には面白くて客が入るに決まっているようなものですけど…観客動員は伸びずあっという間に公開終了、長らくソフト化もされなかったまさに『幻』の作品

今でこそ「トンデモ」「ダメ」映画などといいながら愉しむ視点もありますけど、おそらく当時は封印したい作品だったんじゃないかな…と想像します。

今ではごくたまに名画座で上映されたり、ソフト化もされていますので、視聴環境は整っているといえますね。

東宝
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舞台は滋賀県の琵琶湖なのですが、例えば「滋賀県制定〇〇周年記念映画」、ぐらいの規模感であればよかったんでしょうけど(と同時に役所は「なんてものを作ったんだ!」と怒られそうですが)、東宝を背負う作品にしては荷が重すぎました

あらすじ

一言でいうと「理不尽に殺された犬の犯人を探し出す復讐映画」

いや、それ以上に説明しようとすると…どこからどう触れていけばよいやら…。

それから、言葉で説明したって、この映画の脱力感は2時間44分ノーカットで体験しないと絶対に伝わりません!興味がある方は、どうか早送りや倍速などせず、我慢して作品と向き合ってほしいですね。

また、どんな内容か知りたい方がこのページにたどり着いたわけではなくて、感想やツッコミをお求めのような気がしますので、詳細なあらすじ紹介はwikipediaに任せるとしましょう。

▼wikipedia幻の湖

幻の湖 - Wikipedia

物語同様、理路整然と紹介できないことをお許しください(笑)

謎すぎる女、道子

主人公・道子(南篠玲子)はソープランド「幻の城」で働くソープ嬢

店は時代劇設定のコンセプト風俗のような造りになっていて、内装は高級遊郭そのもの。(そのくせマットプレイをやっとりますので、設定上の時代考証などはまったくありません!)

個室に付けられた名前はかつて存在した城の名前になっているようで、道子はさらに信長の妹であった「お市」という源氏名になって、接客中は一応そういう設定で日本髪を結ってサービスをしています。

道子は愛犬のシロと琵琶湖西側をランニングすることが日課なのですが、この映画はのちに出てくる「戦国時代の悲劇」以外、登場人物に関する背景がほとんど語られません

なので、道子がどんな人なのか全く情報がありませんし、シロが殺された後の狂人じみた振る舞いだけの印象が強く残ってしまい、ヤバイ奴にしかみえないんですよね。

また、出自もわからないので滋賀県出身なのかどうかもわからない。どう聞いても関西弁ではないんですけど。

それから、なぜソープ嬢をしているかわからないのに、「貯金は1800万円ぐらいある」だの「あと1年で辞める」だの、一体今まで何があって、そしてこれから何があるのかまったくわからん

冒頭にソープランド支配人から「その貯金を得意先の銀行へ移動させてほしい」と言われて、道子が断る描写がありましたが、担当銀行員の倉田と仲がいいことを示唆するだけで、そのエピソードがある意味もよくわからないよ!

犬のシロとの出会いも、ありていにいえばただの野良犬がついてきただけですし、道子がシロと出会ってランニングするようになった理由も語られない

そしてマラソン大会に誘われても「シロがいないと走れない」んだそうですけど、もちろんその理由も語られません!

自室には琵琶湖のランニングコースにAコース、Bコースとコースまで書き込んで、超ストイックに走っているのに…。

走る理由が全く不明。完全に競技者のそれなんですけど。

題名は「走る女」にしよう

とにかく、走る!走る!

やたらと走るシーンが多い!春夏秋冬、シロとともに走る!

なじみのタクシー運転手にコースへ連れて行ってもらっては、走る!走る!

道子役の南條玲子は撮影中1年4か月間もの間、コーチにランニング指導を受けていたようです。

トレーニングの成果でしょうけど、走っているフォームがとてもきれいで、撮影期間中に合計4,500kmも走らされたというだけあって、アスリート然とした非常に均等が取れたバランス良いグッドシェイプ

道子は超美形というわけではないのですが、そこに存在しそうな平均的な美しさがあって、道子が薄着で走る美しさはこの映画の数少ない見どころでしょう。

そして、息遣いと汗から健康的なエロチシズムを感じざるをえません(昭和映画のお約束なのか、ソープシーンではヌードもあります)!

シロ殺しの犯人捜し

物語はシロが何者かに殺されたところで大きく進展します。

犯人を突き止めようと警察で調べたところ、大手芸能事務所関係者が関わったことらしいことを突き止めます。

先方からは示談を申し出されますが、愛犬を殺されて金で解決など納得できない道子は裁判を起こすと反発。しかし、シロを許可なく放し飼いにしていたことなどを理由に逆に先方の弁護士から脅されてしまいます。

警察の協力が得られないとみるや、単身シロが殺された出刃包丁を携えて上京!

芸能事務所関係者を問い詰めたところ、犯人は「作曲家の日夏」だといい、日夏の仕業であることは事務所の力関係で認めることはできないといわれてしまいます。

さらに警察に相談するも、当然日夏の個人情報は得られず。単独で日夏暗殺の準備を立て、日夏音楽事務所に張り込み始めますが、周囲から怪しまれてしまいまったく情報が得られず、なしのつぶてで一向に日夏にたどり着かない道子…。

そんな時、東京で偶然にも同僚ソープ嬢だったローザに出会います。

ローザの本性ははっきりと明かされませんが、どうやら「日本の性産業」調査のためにソープランドに潜入調査していたアメリカの諜報員(なんじゃそら!)らしく、どういうわけか日夏の個人情報と写真を無事にゲット。ローザのセリフも意味不明なものが多いし、この諜報員設定も全然活かされてないな…。

ローザから得た情報で日夏の自宅マンションで張り込む道子は、ついに写真の男を発見

日夏はジョギングが趣味らしく、ランニングウェアで登場し道子の前を颯爽と駆け抜けていきます。すれ違いざま、道子は「倒れるまで走らせてやる」と得意のマラソン勝負に挑むことを決意します。

このあたりから、なんだか話の目的がズレてきますね

いやその場で、出刃包丁でいますぐ刺せばいいやん!と思うんですけど、別日に改めてマラソン対決が始まります(笑)

このあたりで映画全体の中盤ぐらいでしょうか。

スーパーアスリート日夏

冒頭、さんざんと走るシーンをみてきた私たちは、道子が競技者並みにストイックに自分を追い込んでかなり鍛えているを知っています

なのに、マラソン対決では長い長い長~いランニングの末、なんと日夏が道子を撒くことに成功します

日夏は売れっ子作曲家だけでなく、スーパーアスリートなのです笑)

マンションから出てきた日夏と一定の距離を取って、気づかれないようにマークしながら走る道子でしたが、普段とは走り慣れない東京のコンクリートジャングルでは力がでないのか、次第にペースを乱していく…。

いやそういう問題じゃなくて日夏がチートキャラすぎるだけでしょ(笑)

日夏に勝てなかった失意の道子は、琵琶湖に戻った際に担当銀行員(ウルトラマン80)が転勤になることを知り、縁あって結婚することになって、ソープは足を洗うことを決めるのでした。

ここで日夏への復讐は諦めたかにみえましたが…。

戦国編

ここから戦国編に突入。

え!映画はもう終盤なのに今から戦国編なの?

まったく予期せぬ展開に脳みそが追い付かないしこんがらがってしまう!

道子はシロとランニング中に偶然出会った、琵琶湖の林道に出現する笛吹き男と同じ場所で再会。道子はなぜかこの男に言い知れぬ淡い感情を抱いていました(なんで?)。

笛吹き男からは、戦国時代にあったという信長の妹お市とお市の侍女みつに起きたの悲劇を聞かされ、男の祖先はみつの夫だったといい、笛を吹くことで琵琶湖に沈んだみつの怨念を鎮めているんだそうです。

…まあそこまではいいでしょう。笛吹き男は一族の悲哀を背負ってしまっているということですから、琵琶湖に向かっ笛を吹いて供養しているんでしょう

でも、その話を聞いてボロボロ泣き出す道子は、なぜか自分の境遇と重ね合わせている様子。いや、アンタ関係ないでしょうといわざるをえません

笛吹き男が語った悲しい逸話の主人公は「みつ」であって、道子の源氏名「お市」ではないんですよ。もし源氏名が「みつ」だったら、何かシンパシーを受けて笛吹き男との出会いを運命と感じたかもしれませんけど。

道子と戦国時代の逸話とは全然関係ない(無理やりつなげるとしても源氏名と店の設定しかない)のに、なんでちょっと気になる存在になっているのかまったく理解不能!シロが殺されたからって、どうかします!

聞くと男は今後アメリカに渡って宇宙へ飛び立つというんです。彼、宇宙飛行士だったんですね(笑)急に話がデカくなってきた!

宇宙パルサーナントカカントカいってましたけど、さっきまで戦国の話だったからまったく頭に入ってこない!

しまいには、道子はアメリカに帰った元同僚のローザへ手紙を書き、ヒューストンの男のもとへ送ってくれるよう手紙と髪の毛を送るのですが、いやだからあなたは源氏名が「お市」なだけで笛吹き男の祖先や「みつ」とは何の関係もないですよ!

はっきりいってありがた迷惑じゃないですかね…。

マラソン第2ラウンド

あと2日で店を辞める道子のもとに大物だという客が来店します。顔を見ると…なんと偶然にも日夏本人ではありませんか!

その衝撃に表情をこらえきれない道子をよそに、日夏は以前にも琵琶湖に来たことがあって、のうのうとお市とみつの悲劇を自作に構想していると語ります

接客どころではなく消沈した道子をよそに、日夏は店に飾られたシロの写真(飾るなよ!)を見つけ、すべての状況を悟ります。

刹那、例の出刃包丁を取り出し(そんなもの店に持ってくるなよ!)日夏に襲い掛かる道子

廊下へ駆け出し逃げる日夏!

それを追う道子!

マラソン大会ラウンド2が開幕しました!

このマラソンシーンもとにかく長い。とにかく走るんですが、日夏も道子も不思議に落ち着いて、「ペースをキープ」だとか「少しづつ詰めてやる」だとか「必ず逃げ切れる」だとか、よもや復讐の鬼と命がけで逃げる男という構図はありません

開幕(ソープランドから逃げるところ)だけは鬼気迫るシーンだと思うのですが、お互い長期戦を覚悟したように、次第に「マラソン大会で先行と差し切りがどういう戦略で走破するか」を冷静に分析。走りながら。

走っている両者のデッドヒートシーンはかなり間抜けで気が抜けて、演者は茶化さず真剣に走っているがゆえに、そのズッコケ具合の反動も半端ない仕上がりになっています。

極めつけは、長い長いレースの果てに、何とか日夏に追いついたシーン。

いよいよ背に隠した出刃包丁で日夏を…と思ったら、なんとそのまま日夏を通り過ぎていきます

いや、刺さへんのかい!!

「勝った!勝ったわよ!シロ!」叫ぶ道子!

爆笑に包まれる映画館内!(いやマジで)

いつのまにかマラソン勝負にテーマが変わっていたのね(笑)

やっぱりここは笑いどころなんでしょう(笑)演者がいたってまじめなところもポイントが高い!

で、このまま終わればそれはそれで伝説になったでしょうけど、初マラソンの勝利を嚙み締めた道子は、予定通り日夏を出刃包丁でぶっ刺します

…ああ、エンディング…か…

と思いきやまだ終わらんよ!

鎮魂は宇宙へ

そのとき、スペースシャトルが宇宙へ向けて飛び立ちました

搭乗しているのはもちろん笛吹き男なのですが、あろうことか宇宙での船外活動中に、宇宙からみえる琵琶湖へ向かって、道子の手紙と代々受け継がれてきた笛を奉納(?)というか宇宙空間に放置するシーンでエンディング。を迎えました。

スペースシャトルを私物化した男は前代未聞ではないでしょうか(笑)

ダメポイント(いとおしいポイント)

『幻の湖』は現代・戦国時代・そして宇宙を舞台に、犬の復讐が小さくみえちゃうぐらい、時空と空間を超えた大スペクタクル映画なのでした

すべて『幻の湖』を『幻の湖』たらしめる構成要素なのではあるのですが、やっぱりお話が面白くないし、意味のない内容が複雑でわかりにくい。

そしてキャラクター設定が弱いのでまったく感情移入できないし、物語を構成するものに必然性が関係ない

犬を殺された道子を応援する気にもなれないし、ましてや日夏憎し!ともなれない。「犬の復讐」がメインテーマなのに、そもそも観客がそこに興味を持つ仕掛けも少ないし、その他とにかくトピックスが多すぎて「何が言いたいのか」が伝わってきません

別にソープランドは本筋に関係ないし、「なぜ道子はソープ嬢でなければならなかったか」に必然性を感じないんだよなあ。ソープランドが舞台じゃなくても成立するでしょ?ローザだって別にソープ嬢じゃなくたって…。

そもそも日夏がなぜシロを殺してしまったかも全く弁明されませんし、日夏に反論する機会さえ与えられていませんでした。ウルトラマン80がなぜ道子に惚れたのかもわからないし、そんなこといいだしたらオンパレードなんですけどね。

「ソープランド」「犬の復讐」「マラソン」「戦国時代の悲劇」「宇宙」とテーマを盛り込みすぎて、物語上無理やり繋げていたりするから、うまく整合性が取りきれていないんじゃないでしょうか。

そして、それらを回収するのに苦労してしまい、結果長尺映画になってしまったような気がします。

いらないシーンをバッサバッサ切っていける人がいれば、もう少し見やすくなったのかもしれないですけど、監督・脚本・原作すべて橋本忍ですから、最終的に口出しできる人はいなかったのかもしれませんね。

なにが『幻の湖』だったんだろう。

エンディングの琵琶湖には水が張っていない(水が枯れている)ようにみえましたが、数万年後の『幻の湖』のことだったのか

いっそのこと、ソープランドの店名が『幻の湖』でよかったんじゃないですかね(笑)

なあんだ、ソープランドの名前か、とね。

まとめ

さんざんぱらいいましたけど、私個人的には不思議と嫌いな映画じゃないです。人にはオススメしませんし「面白い映画だ!」とはいいませんけど、道子のどうかしちまった狂気はちゃんと評価すべきだと思いますね。

観たことがない方でカルト映画的なものがお好きな方は、ぜひ何らかの機会に鑑賞してほしい作品であることは間違いありません!

東宝
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