こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。
金曜日は闘いのワンダーランド!
毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。
新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合を紹介します!
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アントニオ猪木名勝負セレクション
新日本プロレスワールドのリニューアルで過去の動画の多くが視聴できなくなっています…。
リニューアルに関する幣ブログの記事はこちら↓。
木谷オーナーが動きだし状況が緩和されているような印象を受けますが、リニューアル時のファーストインプレッションです。
過去の試合は順次追加されていくとのことですが、「今日その日」の動画がほとんど存在しなくなってしまったので、しばらくは「アントニオ猪木名勝負セレクション」と題して、アントニオ猪木の名勝負を振り返ることにします!
というわけで、本日の試合はこちら。
新日本にUターン参戦したUWF軍団とのイリミネーションマッチ、木戸修さん追悼ということで、今回はこの試合を紹介することにしました。
UWF軍団のUターン参戦
この試合を3つのテーマに絞って解説していきましょう。
①流れた一騎打ち
②イリミネーションマッチの妙
③星野、上田がメンバーにいる意味
それでは、1つずつ振り返ってみましょう。
①流れた一騎打ち
新日本プロレス内の政争に巻き込まれる形で生まれたUWF(第一次UWFと呼ばれています)。
1984年の旗揚げに際して、新日本プロレスからは前田日明が参加。のちに藤原や木戸、当初はレンタルだった高田も正式に移籍し、佐山聡の参加もあって次第に格闘技色が強いスタイルを押し出していきました。
その後、紆余曲折あり第一次UWFは解散することになってしまい、一部選手は新日本プロレスへUターン参戦することになります。
UWF戦士たちが狙うは、当然アントニオ猪木の首一つ。
参戦当初はUWF戦士による「アントニオ猪木挑戦者決定リーグ戦」が開催され、決勝戦では(おそらく)ファンの期待とは裏腹に、藤原が前田を破り挑戦権を獲得します。
2月6日両国大会にてUWF代表の藤原と猪木の一騎打ちが実現しますが、順当に猪木が勝利。試合後に乱入してきた前田のハイキックが猪木の喉元にきれいにヒットし、「アントニオ猪木だったら何をやっても許されるのか」というシュート発言が飛び出しました。
この乱入劇を受けて、3月26日(つまり今回紹介する試合の日)に、猪木VS前田の総大将同士のシングルマッチが組まれたのですが、シリーズ前にイリミネーションマッチに変更になってしまいました。
以後、猪木VS前田のシングルマッチが組まれることはなく、全盛期を過ぎていく猪木と、ニールセン戦で得た「新・格闘王」という称号から、“猪木は前田から逃げた”という見方がされることが多くなっています。
ただ、シングルマッチは流れてしまったものの、イリミネーションマッチで猪木と前田が絡むことは必至なため、ファンの期待を盛り上げたことは確か。いきなりクライマックス的カードを持ってくるのではなく、大河ドラマ的に長期の視点でストーリーラインを作っていくという興行目線では当然のことでしょう。
②イリミネーションマッチの妙
新日本本隊とUWF軍団との対決は、5対5のイリミネーションマッチで行われることになりました。
場外カウントなし、いかなる場合も場外に転落した場合は失格となり、どうやら試合中のカットプレーも認められていないようです(とはいえ、両チームともカットプレーしちゃうんですけどね)。
古館アナは暗に両チームのルールに対する「認識の違い」があるようなことを示唆していますし、そのあたりの曖昧さがプロレスの面白さでもありましょう。
「場外カウントがない」ということは、ファンに対して不透明決着は起こらないんだと認識させることができますし、また「場外に転落した場合は失格」というルールは、ジャイアントキリングが起こる可能性があることを意味します。
そしてプロレス的にいえば、場外に転落した選手は「ルールには負けたが実力では負けていないぞ」という論法が成り立ち、負け方によっては負けた選手のメンツも保たれるという…。
結果、この特殊ルールが本試合の肝である大将・前田の勝敗をうまく処理することになります。
③星野、上田がメンバーにいる意味
UWF軍団は<前田・藤原・木戸・高田・山崎>と総力戦なのに対し、新日本本隊は<猪木・藤波・木村・星野・上田>と、最強メンバーという印象がありませんね。
何かの都合で出場できなかったのかもしれませんが、No.2の坂口もいませんし、負け役的な若手がいるわけでもない。
どこか「本体側はまだ最強メンバーではなりませんよ」とでもいいたげな、そんなヒエラルキーの差をみせつける意味があったのかも。
また、星野と上田がメンバーにいる意味を考えてみると大変面白いですね。
星野の場合
小兵ながら、突貫小僧の異名を持ち、ハツラツファイトをみせてくれた星野勘太郎。
星野はとにかくリング内で喧嘩っ早く、プロレスの範疇の中ではあるものの、相手に仕掛けていく試合がいくつかありますよね。UWF軍団がシュートを伺わせる怪しい動きをさせないための牽制役として、星野を配置したんではないかと。
また、前田とルーツが同じという点でも、余計な動きをさせない牽制の意味もあったのかもしれませんね。
上田の場合
“まだら狼”こと上田馬之助は、新日本本隊とはいえない立ち位置のヒールレスラーでした。
猪木や藤波と同じコーナーに収まっていること自体が異質なことで、このチームはくせ者の存在がなんともミステリアス。
「この試合で何かしでかすんじゃないか?」という思わせる異様なメンバー構成といえるでしょう!
(まあ、実際そうなるんですけどね)
試合展開
私が好きな前田日明の名言「勝敗を度外視した主導権の奪い合い」。
本試合はまさにそんな昭和新日本のエッセンスがたっぷり詰まっています。のちに名付けられる“イデオロギー闘争”が、いきなりMAXボルテージでスタートします!
UWF軍団は前田が先発。新日本本隊は大将・猪木を温存したい他メンバーが我先にと先発を買って出ますが、猪木が「俺が出る。どーですかー!」といわんばかりのアピールで観客を煽っていき、まさかの猪木VS前田のマッチアップで試合はスタート。
ほんの一瞬のコンタクトでしたが、前田は早々に必殺のキャプチュードを決めカウントを奪いにいき、返されるやいなや、アームロックを狙っていくというヒヤヒヤする展開。
緊張感がすごくみなぎっていますし、当時の常識でみると“信じちゃう”し、明らかに全日本プロレスとは違いますよね…。
山崎ピンフォール負け
最初に敗退したのは山崎。
UWFの若き青年将校こと山崎の剃刀キックとジャーマンを食らい、木村危うし!というところでしたが、一瞬の逆さ抑え込みで木村が山崎から3カウント奪取。
最もキャリアが浅い山崎が1人目の敗退となりましたが、十分見せ場は作りました!
星野ギブアップ負け
次の敗退は星野。藤原のアキレス腱固めでギブアップ負けとなりました。
UWFといえばアキレス腱固めですが、源流はカール・ゴッチにあるわけで、結局は新日本からの分家といえるわけですが、「どちらが本家でどちらが元祖か」という古館アナの名文句が最高!
木村リングアウト負け
前田に押し込まれる形でロープ際に追いやられた木村、最後は前田得意のニールキックで木村を場外に転落させることに成功。
イナズマ!
藤波&藤原両者リングアウト負け
藤波と藤原はもみ合った末に両者トップロープから場外へ転落、自爆する形でリングアウト負けとなりました。
残るは新日本本隊<猪木・上田>に対して、UWF軍団<前田・木戸・高田>と、UWF側が数的有利な状況に。
そして、最後まで猪木と前田が残るのでは…と淡い期待を抱かせつつ、上田と前田が相まみえます。
上田&前田両者リングアウト負け
上田は前田の蹴り足を捕まえながらも、ロープ際からゴロゴロと転がっていき…まさかの道連れで上田とともに前田失格!
上田は試合中目立った活躍がなく、この役割のためだけに新日本本隊側に存在したといっても過言ではないでしょう!
前田は「さあ、ここから!」というタイミングで上田にしてやられた格好になってしまいました。
新日本本隊は猪木1人を残すのみ!
高田ピンフォール負け
猪木の首を獲るチャンスが回ってきた木戸&高田。
細かいタッチワークの末に、猪木と高田の1対1の様相になっていきます。
猪木の延髄斬り連発からブレーンバスターを食うもカウント2でキックアウト!驚異の粘りをみせますが、最後の延髄切りがズバッと決まり、高田があえなくフォール負けとなりました。
デビューからわずか6年足らずの高田が、UFWへ移籍し経験を積んだことで実現した憧れのアントニオ猪木とのタイマン勝負。
高田にとっては、それだけでUWFが存在した意味があるかもしれませんよね。
残すは猪木と木戸…
こうなればもう木戸には勝ち目はないでしょう。
得意のスイングネックブリーカーを連発し、バックドロップやサソリ固めで猪木を追い込んでいきますが、決定打に欠け非常に攻めが単調。木戸といえば脇固めとキドクラッチですが不発、まだ未開発の時期だったのかな。
勝負所で仕掛ける必殺技がない!という流れのまま、延髄切り一発であっさり3カウントとなりました。
山崎の活きの良さや高田の粘りに比べると、非常に物足りない展開でしたね…。
試合後は…
いつ何をしでかすかわからないUWF軍団に、いわば疑心暗鬼になる側面もあったであろうこの試合。スリリングかつエキサイティングで、かなりかみ合った試合になったなと思います。
そして、試合後は意外にもすがすがしい場面がありました。
猪木は敗れたUWF軍団の前田と言葉を交わし、高田とは握手しながら何やら声をかけている様子。
猪木は2人の成長がうれしくて、また頼もしくあったのかもしれませんね。
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