こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。
金曜日は闘いのワンダーランド!
毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。
新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合を紹介します!
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6月16日は何の日?
今回は、2012年6月16日に大阪府立体育会館で行われたこの試合をテーマに考えてみることにしましょう!
後になって「レインメーカーショック」と呼ばれることになる、オカダ・カズチカによる新日本制圧の大躍進。
今回の試合はその中にあって、凱旋帰国してすぐに棚橋からIWGPを奪取(2012.2.12大阪府立体育会館)した選手権試合のリマッチ。対戦相手である棚橋からするとリベンジマッチですね。
当時の連続防衛記録(V11)を樹立した棚橋が、4か月前に敗れたオカダに対峙し、青コーナーの挑戦者として王者に挑む一戦です!
V11チャンピオン 棚橋 弘至
新日本プロレスのまごうことなき大エース、棚橋弘至による2011年の快進撃は凄まじかった!
「愛してまーす」の陽性キャラクターは、東日本大震災によって暗い影を落とした日本において、時代が求めるポジティブさともマッチし、ホンモノのピープルズ・チャンプになっていったといっても過言ではないでしょう。
2012年1.4で小島聡からIWGPを奪取し、以後は永田→中邑→チャーリー・ハース→後藤→バーナード→中邑→内藤→矢野→永田と並みいる強豪を退けて、2012年1.4では鈴木みのるからも防衛。
ほぼ毎月のハイペースでIWGPの防衛線に臨んだ棚橋は、Mr. IWGP永田裕志の連続防衛記録V10を超えV11を達成。棚橋のキャラクターには相応しくない言葉ではありますが、新日本プロレス内で最強の地位を確固たるものにしたのでした。
2012年1.4、鈴木みのるを破り新記録V11を樹立したその棚橋の眼前に登場したのが、オカダ・カズチカだったわけです。
その日のYOSHI-HASHIとの凱旋試合があまりぱっとしなかったし、V11の棚橋には明らかに”顔じゃない”挑戦者。さらにはマイクがしょっぱかったことも相まって、多くの人が「ああ、こいつも棚橋の防衛記録の1回にカウントされるんだな」「楽な挑戦者だな」と思ったことでしょう。
…しかし、翌月の2.12大阪でオカダは有言実行の通り棚橋を破り、凱旋帰国後の初挑戦でまさかのIWGP奪取。
レインメーカーショック
この”常識”が覆った試合結果で恐ろしいところは、団体が敷いたレール通りに進行するだけではなく、オカダは誰もが納得する試合内容で大王者棚橋を破り、その敷かれたレールに見事に乗り切った、ということに尽きると思います。
団体からするとオカダをチャンピオンにすることは簡単でしょうけど、業界は「ヤバいチャンピオンが出てきた」と危機感を覚えたでしょうし、団体は「オカダは見事にスタートダッシュを切った」と安堵したでしょう。そして我々ファンは「新時代のニュースター登場に酔いしれた」のでした。
オカダの魔法を解く…
そんなIWGP奪取劇があって、今回の試合は棚橋によるリマッチ。オカダは内藤と後藤の挑戦を退けて2度防衛し、本試合は3度目の防衛戦というシチュエーション。
V11前王者が青コーナーで登場する贅沢な一戦ですが、当時35歳の棚橋は「みんなはオカダの魔法にかかっていて、それを解くのはオレしかいない」と意気込みます。
オカダの魔法は当人はもとより、新日本プロレス(団体)及び選手たちで仕掛けた一大プロジェクトだったはずで、棚橋&真壁はその中心人物だった(ソース元提示できず申し訳ないけど棚橋本や真壁本に書いてあった)。
そんな意味で、オカダの魔法は棚橋がかけたものだったはずで、まさにこの棚橋発言はマッチポンプ。
自分で火をつけておいて、自分が消してやるというプロレス内メタ発言!
レスラーとブッカーが仕掛けるアングルが一体となって、試合外のコメントやスキットも含めて観客に訴えていく姿勢は、プロレスの王道でありつつもフォロワーが多い団体しかできない高等テクニックだよなあ。改めて当時の新日本プロレスにおける布陣の厚さと勢いを感じさせてくれるコメントですよね。
ふてぶてしいオカダの表情(フツーの凱旋帰国選手では表現できない佇まい!)と、今となっては懐かし外道がセコンドにつくスタイルで試合のゴングです!
試合展開
V11時代の棚橋が美しいチャンピオンだったとすると、本試合の棚橋は泥臭い挑戦者。
解説の山崎一夫氏による「チャンピオンベルトを守り続ける苦しさと、コンディションを整えた挑戦者の戦い方は異なる」というコメントの裏付けるように、棚橋はなりふり構わず勝ちにこだわった足攻めを展開し、オカダの膝へ攻撃を集中させていきます。オカダの背後から膝裏を狙ったショルダータックルはまさに”挑戦者”の戦い方といえそうです。
対するオカダは一撃必殺のレインメーカーへの布石として、徹底的に棚橋の首を狙っていく。最近ではあまり使用しなくなったDID(ディープインデッド)などを効果的に使って、グイグイと締め上げていきます。
ドロップキック!
オカダの代名詞的得意技のドロップキック。この技で”オカダはホンモノ”であると認識した方も多いはず。
本試合で登場する、<ロープに走った相手にカウンターで放つオカダ式正調ドロップキック>はプロレス技文化遺産(なにそれ)に値する一級品であることは間違いないでしょう!
オカダのドロップキックの打点の高さはいうまでもありませんが、一方でこの試合のドロップキックの凄さと威力を演出しているのは、間違いなく棚橋による抜群のタイミングとバンプの上手さです!
自分でロープに走り出した棚橋ですが、空中でオカダが最も高い位置にくる時にヒットするように、絶妙なタイミングで合わせていて、そしてヒットする瞬間に少し体の中心軸をずらし、より派手な受け身を取れるように調整しています!
さらに受け身を取った後も体をのけ反らせ跳ねてみせ、両手で顔を押さえて悶絶するのです!
この棚橋のバンプは酔いしれるなあ…。オカダのドロップキックの衝撃よりも、語られるべきは棚橋のバンプですよぉ~!(興奮するとターザン山本!口調)
そしてこの瞬間をよ~くみると、棚橋がロープへ走りだす前に、オカダに「準備はいいか?」的な目配せをしているようにも感じる。
私は出来レースだとか予定調和であると批判したいわけではまったく無いんですよ。リング上の選手が観客をコントロールしながら試合を作っていくのがプロレスであり、その試合で観客をヒートさせることが最大の目的なのですから、無の状態から最高の試合を作っていくためには、物事のタイミングっていうのは非常に重要なわけで。
観客を盛り上げるために、その最高の瞬間でオカダの売りであるドロップキックを発射する。棚橋&オカダによる「今」がきて、「準備はいいか?」なんだと思うのです。
プロレスをガチンコとやらせの二元論でしか考えられない方がいるとすれば、こんな話は納得できないことかもしれませんが、やっぱりプロレスは「底が丸見えの底なし沼」なんですよねえ。
もっというと、レッドシューズ海野の「ドロップキック高すぎるよ!」というジェスチャーも素晴らしい。プロレスは対戦相手とレフェリー、そして観客と一緒になって作っていくものなんだなあと再認識させられる、ベストオブドロップキックに登録したい名場面なのです。
決めさせなかったツームストン
試合はというと、凱旋帰国当初のオカダの得意技が一通り展開される中で、試合のポイントはツームストンパイルドライバーを巡る攻防でしょう。
オカダのツームストンを切り返して、棚橋の”掟破り”が炸裂するのですが、この棚橋の一撃も実に素晴らしい!
足のつま先をピンと伸ばし、溜めに溜めて落下する最高の一撃。ツームストンの使い手ではないのに、やっぱり棚橋は見せ方が上手いなあ…。今回は棚橋アゲの記事になっていますが、<新日本プロレス復活の立役者>であることと同時に、<史上最高のプロレスラー>であることも忘れないで頂きたいですね。
時計の針は戻らない
結果的に棚橋がレインメーカーを封じることに成功し、ハイフライフローを投下しリベンジに成功。まだ棚橋VSオカダは2戦目ということもあり試合内容はシンプルなもので、両選手のIWGPを巡る戦いの末期のようなタフネスマッチではありませんが、その分「本当にどちらが勝つか分からない」緊迫の名勝負になっています。
やっている本人たちも、まさに勝ちを掴みにいっているようにしかみえない試合で、観客は固唾を飲んでリングを見つめ集中するばかりでした!
オカダが敗れ再び棚橋政権に戻ったものの、不思議と時計の針が逆に戻ったような感覚にはなりませんね。それよりも、棚橋とオカダの新たなライバルストーリーが始まったという風に見えました。
そして、この後は両者の輪にAJスタイルズが加わり、IWGP3強時代に突入していきます!
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