新日本プロレスワールド【NJPW今日は何の日】1990年2月10日:東京ドームで元横綱/北尾の衝撃デビュー戦!今見ると意外に悪くない?!

こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。

金曜日は闘いのワンダーランド!

毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。

新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合を紹介します!

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2月10日は何の日?

今回は、1990年2月10日、東京ドームで行われたこの試合をテーマに考えてみることにしましょう!

プロレスには、1.4とか10.9とか4.4とか、重要な試合や大会が開催された日を月日組み合わせた言い方が存在します。

1990年2月10日は、あまり”2.10”なんていう呼び方はされませんが、この日は間違いなく日本プロレス史においてエポックメイキングな年であったことは間違いないでしょう。

当初予定していたグレート・ムタやリック・フレアーの試合が組めなくなったことで、試合カードが宙に浮いてしまった新日本プロレスの東京ドーム大会。新社長に就任したばかりの坂口征二が、ジャイアント馬場に相談し、ナント全日本プロレスの選手が派遣されるというウルトラC級の奇跡が実現します。

アントニオ猪木が参議院議員になっていたこと、ビジネスパートナーとして信頼できる坂口社長へのご祝儀的な意味合いがあったこと、日本進出を目論むWWF(当時)へのけん制の意味もあったようですが、試合カードが宙に浮いてしまったことが、災い転じて福となす結果になりました。

ビッグバン・ベイダー対スタン・ハンセンによる両団体を代表する外国人選手対決や、ジャンボ鶴田・天龍源一郎・2代目タイガーマスクの新日マット初登場など、全日本プロレス絡みの試合に加えて、メインは猪木&坂口組対橋本&蝶野組(試合後に123ダー初披露)という豪華なマッチメイクが組まれました。猪木の名言「出る前に負けること考えるバカがいるかよ」や、橋本の「時は来た!それだけだ」もこの大会の試合前インタビューで飛び出しています。

この日の大会『’90スーパーファイトIN闘強導夢』は、間違いなく歴史に残るプロレス興行なのです。

…で、今日紹介します試合は、元横綱・双羽黒こと北尾光司のプロレスデビュー戦です!

過去の出来事を現在の価値観で評価してはいけないんですけど、今の時代だったらもう少し受け入れられるのでは…と思う北尾光司のキャラクター性に、ちょっと魅力を感じてしまいます。

元横綱のプロレスデビュー戦

北尾の相撲時代についてはここでは詳細を省きますが、印象的なことは3つ挙げると…

・優勝経験がないまま横綱に昇進
・素行不良
・相撲部屋女将への暴力沙汰~廃業

これプロレス的には超おいしいナチュラルヒールじゃないですか(笑)

出てくるだけでブーイングをもらえるし、反則まがいの相撲殺法とか過去のトラブルをギミックに取り入れるとか、観客のヒートを買うエピソードがたっぷりある。

果たして、北尾のデビュー戦はいかに?!

北尾のファッションセンス

ナチュラルヒールではなくヒロイックでカッコイイ路線を望んでいたのか、東京ドームの花道に登場した北尾はスタッズ鋲がたくさんついた革ジャンを身にまとい、サングラスをかけて全身黄色いコスチュームにタンクトップという出で立ち。髪型は角刈り風で、左側の一部は金色メッシュに染めています。

だ、ださい…。(個人的にはこのダサさがサイコーに緩くて好きなんだけどね)

コールと共に着ていたタンクトップを破るパフォーマンスは、コスチュームの色も相まってハルク・ホーガンのオマージュを越して、ただのマネになっちゃってます。

対する入れ墨獣ことクラッシャー・バンバン・ビガロは、非常に安定したレスリングで魅せることができるウマイ選手。ゴングの前から相撲の四股を踏むポージングで北尾を煽っていきます

観客のどよめき

とにかく6万人の大歓声がすごい!

北尾デビューへの期待から、北尾の一挙手一投足に観客が驚きで応じます。ビガロは北尾のアームホイップ2連発を見事に受けきり盛大なセール。引き立てるのがウマイ!

北尾は、ヘンなポージングと妙な表情(なんか漫画チックで癖になる)で、じーっと待っているような試合展開が続きます。ビガロに試合を組み立ててもらっているのかな?その間もキタオポーズと「コイッ!ウリャー!」などと、甲高い声でビガロを挑発していきます。攻め時に攻めずグダグダしているし、互いに攻守スイッチがないため、一撃ずつドタドタっと攻撃していく感じ。

最初の頃は期待感バリバリだった観客の歓声が、試合がかみ合わないことから次第に「ん?」というようざわめきに変わっていき、繋ぎ技的なギロチンドロップで唐突に勝利(決め技までハルク・ホーガンをパクらなくていいのに…)したことで、大「帰れ」コールが沸き起こりました(私にはそう聞こえます)。やっぱりヒールの方が向いてるよ!

まあ、一言でいってしまえばショッパイんですが、なんかそれだけでは片付けられないへたくそさ・どんくささを感じてしまうデビュー戦でした。

それでも、ビガロがうまく試合をまとめてくれましたので、見れない試合ではないですし、見てるとニヤニヤしてきてしまうクセになる試合でもあります。

時代に合わないスタイルだった?

プロレスラーは自己プロデュースが必要な職業であると常々お伝えしていますが、やはりデビュー戦のキャラクター設定をミスっちゃったんじゃないか?北尾は新日本プロレス所属選手という扱いではなく契約した外部選手扱いだったようで、芸能事務所がマネージングしていたとのネット記事もありますので、当人の思惑も含めて、売り出し方を見誤ったんじゃないかと…

角界の問題児がプロレス転向しても、デビューすぐに観客からワーキャー支持を集めるのは難しいだろうし、自分の立ち位置や役割、要は勝ち筋が見えないまま突き進んだことから、業界からわがままや傍若無人な評価を受けたんじゃないでしょうかね。

数年前に、カラオケボックスのリモコンで部屋の若い衆を殴った横綱がいましたが、引退してプロレス転向したとしても大歓声では迎えられないでしょう。私だったら、その選手にはマイクとリモコンを持って入場させて、対戦相手に1曲歌えって迫るように指示しますね。で、何かと因縁をつけてリモコンで殴らせますよお~!(困ったときはターザン山本口調になるとごまかせると思っている私)

加えて、当時は格闘プロレスであるUWFが台頭してきた時期。ローとミドルキックにもイマイチ説得力がありませんので、観客の嘲笑を誘っているような感もあります。エンタメ的なプロレス表現にまだまだアレルギーがあった時代と推察しますし、もしかしたら「早すぎたハッスル」だったのかもしれません。

その他、北尾の試合

新日本プロレスには北尾関連の動画があと2つあります。

・1990年5月24日の6人タッグマッチ(橋本・マサ・北尾組)
・1995年5月3日のタッグマッチ(猪木と組んで長州&天龍と対戦)

前者は橋本とマサから全然タッチしてもらえず、あげく観客からのブーイングを喰らい、試合後にベイダーに「かかってこい!」と挑発する自己中KYな北尾が見ることができます。(新日本プロレス所属選手たちが無視しているようにも見えて、外注なんだからほっとけ!と放置しているようにも見えます)

後者は5年後の北尾なので、いささか謙虚さはあるけどやっぱりショッパイ!でも随分温和になった様子。猪木と勝利を分かち合う姿が純粋で清々しい!

北尾光司の見るべき試合は、今回のデビュー戦「八百長野郎」発言のジョン・テンタ戦ハイキックKOされた高田戦の3試合でしょう。どれも味わい深くて、ディープなプロレスファンは押さえておきたい試合です。ネットの片隅でぜひ探してチェックしてみてほしいですね。

超闘王のテーマ=thunder storm

余談ですが、聖飢魔Ⅱの信者としては、デーモン閣下作曲の北尾光司入場曲「超闘王[北尾光司]のテーマ」は聞き逃せません!

のちに、「thunder storm」として歌唱入りで聖飢魔Ⅱにセルフカバーされることになりますが、歌詞の一部が北尾モチーフになっていて、好角家のデーモン閣下から北尾へのエールにも感じられます。

「立つ波蹴散らして」は立浪部屋での暴力沙汰事件、「黒い雷鳥の翼」=双羽黒、「光司れ」=名前の光司など、オマージュがたっぷり入っています。そもそも曲名の「thunder storm」とは、北尾がプロレスデビューする際のリングネームとして、サンダーストーム北尾を希望したことが由来になっていると思われます。

「超闘王のテーマ」も「thunder storm」も、どちらもすごくカッコイイ曲ですので、こちらも探して是非聴いてみてほしい1曲です!

コメント

  1. 新宿の種馬 より:

    これは北尾光司入場曲の時代からですが、
    「超闘王」と書いて上に「サンダーストーム」とルビ振ってあるのですよ。
    なので『超闘王(サンダーストーム)』と読むのはいささか強引ですね。
    というか誰も読めない。

    北尾のバックにはタレント事務所や代理店が付いていたので、こうやってちょっと理解できないやり方で売り出そうとしてたんですね。

    • 新宿の種馬さん>コメント下さりありがとうございます。
      なんてお詳しい方!タレント事務所や代理店が付いていたなんて、当時は異質なものへのアレルギーも相当あったろうと想像します。
      今ならもうちょっとなんとかできるかもしれないですね(^^)
      角界では格下になるんでしょうが、先人である天龍が”サンダーストーム”なのに、自分もそれをモチーフにしたのはどんな意図があったんでしょうか。
      「横綱である自分の方がすごい!」ということで、サンダーストームを横取りしたかったんでしょうか…。

  2. 新宿の種馬 より:

    北尾は所属「アームズ」でしたが、試合する前からテーマ曲やら衣装やら、写真集やら発売されてて整ってましたね。
    整い過ぎて余計に格好から入っちゃって失敗した典型パターン。。。

    「サンダーストーム」の件は、私も推測でしかないのですがただの偶然かと思います。

    82年から使われている天龍のテーマ曲「サンダーストーム」ですが、SWS初期は使われていなかったですし(SWS当初は部屋単位の入場曲だった。)、天龍=Mr.プロレスや昇り龍とは言われても「サンダーストーム」というニックネームで呼ばれてはいないですからね。
    「サンダーストーム」という名はあくまでテーマ曲止まり。

    一方、北尾は当初リングネームを自身考案の「サンダーストーム北尾」にしようとしてた程ですし、技名でも「サンダーストーム」という幻の技があります。(もちろん超闘王と書いてサンダーストームです!)

    自身で考案というのは信憑性が怪しいですが、たとえ代理店発案としても北尾同様プロレスを知らない、天龍のテーマ曲名すら知らない方が作ったんだと思います。

    じゃないと新日解雇の後、天龍を頼ってSWSへ行かないでしょうし。

    憶測で失礼しました。

    • 新宿の種馬さん>関係者レベルにお詳しいですね…。情報を補足下さり本当にありがとうございます!北尾に幻の技があったことも知りませんでした。
      SWSの田中社長は”プロレスを知らなかった”のが定説ですが、北尾の所属事務所はもしかしたら知りすぎていてナメていたのかもしれませんね。
      天龍とはたまたまサンダーストーム被りとのご推察も大変参考になります。北尾以外にもまたいろいろ教えてくださるとうれしいです。
      コメントありがとうございました。

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