校内の凶行!ムカつく教師にライフル銃をぶっ放せ!澤田幸弘&石井聰亙両監督『高校大パニック』を観た!

こんにちは!アツコアツオです!

今回は池袋の映画館、新文芸坐にて『高校大パニック』を観てきましたので、紹介したいと思います!

さあ、この男女はどんな関係でどんな結末を迎えるでしょうか?

澤田幸弘監督の特集上映のプログラムです。

初々しい浅野温子が出演。すでにあのロングヘア―で登場します!

当ブログ「映画を観た!」コーナーおなじみの「アナーキー日本映画史」にも掲載されています。

この表紙は「狂い咲きサンダーロード」ですね!

☑この映画のオススメシーン

  • 常に汗だく!主人公・城野の鬼気迫る顔芸
  • 生徒がパニックになって雪崩のように逃げるシーン
  • 主人公と村上(浅野温子)が交流するラストシーン
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浅田幸弘&石井聰亙両監督『高校大パニック』

澤田幸弘監督の作品を観るのは、今回の『高校大パニック』が初めて。

そして『高校大パニック』を観ようと思ったきっかけは、石井聰亙監督の自主製作版を観たことがあったからです。

ちょっとややこしいんですが、元々石井監督が所属する、学生の自主製作映画集団である狂映社のショートムービー『高校大パニック』っていうのがあって、当時「これはすごい」とかなり話題になっていたそうです。それに目を付けた日活が、狂映社の協力で劇場版というか長尺版というか、リメイクの『高校大パニック』を作ろうという流れになったようです。

そこに、当時アマチュアだった石井聰互氏も監督として参加することになったんですって。

(アナーキー日本映画史よると、日活の現場はアマチュアの狂映社や石井氏には非協力的な態度だったとのこと。)

てなわけで、自主製作版と劇場版の違いが知りたくて観賞したってわけです。

『高校大パニック』のあらすじ(ネタバレ注意)

自主製作版と劇場版

劇場版の内容は、基本的に自主製作版の内容と同じです。数学ができない高校生が、教師を憎み世をはかなんでライフル1本で高校を襲撃する、というお話し。アメリカンニューシネマのような、当時のやるせなさを表現した内容になっています。

自主製作版は、いきなりライフルで教師を射殺するところから始まります。その後まさに校内はパニックになり、回想の中で主人公が数学ができないことを教師になじられるシーンが挿入されていますが、教室に籠城し警察に取り押さえられるところでエンドロール。短編なので映画は15分で終了します。細かなカット割りや躍動感、それと妙に耳に残るBGMが素晴らしい。

(この内容でどうやって劇場映画の尺にするんだろう)と考えてましたが、この劇場版、よくもまあここまで自主製作版の疾走感を失わず、長尺に仕上げたなあという印象

内容はやっぱり集約すると冒頭書いた通りなんです。けど、劇場版はクラスメイトが受験ノイローゼになって自殺するエピソードから始まり、さらに死んだクラスメイトに対して喪に服す気もない教師に対して、学生が抵抗するシーンもある。で、主人公である城野が我慢できなくなって、教師に殴りかかる。かなり物語に厚みが増し、主人公が凶行に及ぶまでの道筋や背景が示されています。

元凶はすべてこの数学教師なんですよ。数学が出来ない生徒をみんなの前で馬鹿にして追い詰める。自殺したクラスメイトも、抵抗した彼も、殴りかかった城野も、数学についていけなくて馬鹿にされたという共通点があります。

そして、城野は数学教師から「外を走っとけ」といわれて教室を飛び出し、商店街の猟銃ショップへ盗みに入ります。ライフルと銃弾を箱ごと盗み、神社の赤いノボリに巻き付けてライフルを隠し、高校へ戻るのです。決起直前に神社を選ぶっていうのが良いですねえ。『八つ墓村』とか『丑三つの村』をイメージさせられます。

『高校大パニック』を掘り下げる

受験戦争とノイローゼ

当時の世相として、進学校を中心とした受験戦争という社会問題が背景にありそうです。

そもそも、舞台になっている学校は名門進学校であり、数学教師は学生を九州大学へ合格させるために厳しく指導をしていたとはいえるのですが、周囲や自分自身のプレッシャーや抑圧などで、それぞれのキャラクターは自分を取り巻く環境に耐えきれなくなったんでしょう。

もっとも、自殺したクラスメイトは自死という結末を選び、抵抗した学生は教師にたてつくも、そのあと指示された通り校舎の周りをただ走ることで発散し、そして城野は具体的な行動でもって、教師や学校、そして社会に反抗していったわけです。

事件が起きた後、避難した生徒たちが「受験しなくて済むぞー」など言って盛り上がっていたのも印象的です。進学校とはいえ、みんな自由が欲しいんですよね。

飽きさせない展開

この映画はストーリーはかなりシンプル。にもかかわらず、まったく観客を飽きさせません。ダラダラ感や冗長がまるでない。この辺りが監督と脚本の技術なんでしょうか。映画素人の私にはちょっと知識が及ばないところでもあります。

校舎へ立てこもった後も、トイレ→視聴覚室→屋上の理科室と定期的に籠城場所が変わっていきます。犯人視点以外にも、「戦後の教育方針が真っ赤だっために事件は起きた!」と右翼の街宣車が押し掛けてきたり、走ることで悩みは解決するとヘンなおっさんランナーがやじうまにいたり、ゲスト出演に暴れる泉谷しげるがいたりと、疾走感ある立てこもりのメインストーリーに、小気味よいサイドストーリーやコメディチックなシーンも散りばめられています

警察も事件に応じて右往左往しますが、本作に登場する警察は無能というよりは”やる気がない・冷めている”という感じ。暴走する学生にも、事件が起きてさえ学校の伝統や名声にこだわる校長にも呆れている、そんな雰囲気が漂ってます。しまいには特殊銃撃犯は人質へ誤射してますからね…。「親御さんに恨まれるでしょうね。」「終わったんだよ。」という刑事2人の仕事観がオトナな態度を象徴しています。

また、「俺は城野と個人的な交流があった」と生活指導の教師が人質交換に名乗り出ますが、人質交換の拒否を示すように城野から発砲されたとたん、「あんな奴殺してしまえ!」と逆上。ご丁寧に2人が浴衣を着て酒を酌み交わす過去のシーンが挿入されることで、皮肉った表現になっていて笑えます。

城野は衝動的に犯行に及んだかと思いきや、一瞬ですが自宅に銃の本が置いてあるシーンがあり、いつかやったろうと計画しとったんかい!と思わず言いそうになってしまった。それほど彼らは受験というものに追い詰められていたんでしょう。

それでもなお、捕らえられた城野は「来年受験なんだよ~ラジオ講座があるんだよ~」と機械のように繰り返すのでした。

早熟の魔性、浅野温子

教室の端、綺麗なストレートヘアーをセンターに分けた浅野温子演じる村上。

エヴァンゲリオンの綾波レイのように、ボーっと窓の外を眺めています。どこか冷めたような感じでもあって、なんだか陰気な歌を、独り言のように朴訥と歌っています。彼女は最後の人質になるのですが、真夏の教室に耐えかねて「暑い…水…」といって水道水でハンカチを濡らし、胸元を拭いていく。狂気の犯人である城野も思わず生唾をゴクリと飲み込み、視線を逸らせました。

この村上は、最後の最後までつかみきれないキャラクター。ちょっと状況を楽しんでいるように見えなくもない。最後に籠城した屋上の理科室で、おもむろにタバコをふかし始めます。何も語られないんですが、慣れた手つきでタバコを肺に流し込み一息つく村上と、初めてタバコを吸うらしく、むせてしまう城野の対比が良いですね。村上もまた、この進学校の受験戦争に嫌気がさした一人だったのでしょう。

作中の会話で、彼女は母親しかいない片親家庭であること、そしてどうも母親は水商売系であることが示唆されます。生徒一人ひとり、複雑な事情を抱えているんだと想像させる設定ですね。

歓迎しないサービスショット

その後、タバコの火種で理科室が炎上、消火活動する城野と村上。その混乱に乗じて待機していた特殊銃撃隊が発砲し、運悪く村上に命中し死んでしまいます。このシーン、撃たれた村上を心配した城野が、彼女のブラウスをはだけさせて撃たれた銃痕を見るんです。それはいいんですけど、無意味に浅野温子のパイオツがさらけ出されます。いや、この撃たれた痕を確認するのはいいんですけど、なんか残念な見せ方だなと…。乳首まで出す必然性がないでしょう。この演出では、観客は(ラッキー!)とは思わないんじゃないか。だって超シリアスなクライマックスなんだもん。

ともあれ、ちょっとふっくらしている幼い浅野温子なんですが、目力と色っぽさはすでに画面いっぱいにあふれていました!

そうそう、映画のポスターを見ると、女が男を止めているように見えますよね?「もうやめて!」とか「行かないで!」ってな感じに見せません?

浅野温子はほとんど冷静沈着で、そんなシーンはありませんでした(笑)

さいごに

いかがだったでしょうか?

受験に嫌気がさした学生たちの自己表現の成れの果て、といったパニック映画でした。タイトルもストーリーも特別なところはないのに、面白くって時間を忘れて観てしまう、そんな映画もあるんだなあと感じさせられました。

多様な価値観を認め合う世の中になって、勉強や学校だけがすべてじゃないという考え方が定着した現代では、本作のようなスパルタ教育的な受験戦争ってピンと来ないかもしれませんが、機会があったらぜひ見てもらいたい作品です。

ちなみに、自主製作版はYouTubeにあるとかないとか…。

おまけ

当日は、松田優作主演の『俺たちに墓はない』との2本立てでした。こちらも硬派過ぎないハードボイルドアクションで面白かった!大阪弁の元ヤクザ、志賀勝が良い味出してます。

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