こんにちは!アツコアツオです!
今回は神保町の映画館、神保町シアターにて『修羅雪姫』を観てきましたので、紹介したいと思います!
神代辰巳と藤田敏八両監督の特集上映です!
当ブログ「映画を観た!」コーナーおなじみの「アナーキー日本映画史」にも掲載されています。
藤田敏八監督作品『修羅雪姫』
藤田敏八監督の作品を観るのは初めてです。
『修羅雪姫』で連想するのは梶芽衣子、そしてやっぱり『キル・ビル』でしょうね。私は『キル・ビル』を公開当時に観た後、いろいろな元ネタがあることについて理解はあったのですが、『修羅雪姫』本編にたどり着くまで20年以上かかってしまいました(笑)
梶芽衣子は、同時期にもう一つの代表作といってもよい『女囚さそり』シリーズにも主演しています。一人の女優さんで代表作が2つ同時期に重なるっていうのは、すごいことなんじゃあないでしょうか。
どちらも「恨み晴らします」系ですが、時代とマッチした女優さんなのかもしれないですね。
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『修羅雪姫』のあらすじ(ネタバレ注意)
時は明治初期。雪が降りしきる八王子刑務所に、赤ん坊の泣き声がこだまする。獄中出産で生まれた小夜の子、雪(梶芽衣子)。
小夜は雪を生んだのち、お産に立ち会った女囚の1人に雪を託し死んでいきました。雪は生まれながらにして、小夜の亭主である剛と雪の兄にあたる司郎を惨殺した、儀四郎一味の四人衆に復讐を果たす道具としての宿命を背負っているのでしたー。
鹿島剛は小学校の教師としてある村に到着しましたが、儀四郎一味から”政府から派遣された徴兵官”だと言いがかりをつけられ、息子の司郎とともにあっと言う間に殺害されます。一味は徴兵官を追い払ったといって村人から金をだまし取って逃亡。
ひとり残された小夜は儀四郎一味に犯され、山分けした金とともに徳一に連れていかれます。四人衆への仇討ちを誓う小夜は、徳一の隙を見て殺害しますが、一味の残り三人に復讐を果たすことなく、捕まってしまい監獄に入れられてしまいます。
小夜は復讐の道具としての子供を欲し、色に狂ったように刑務官たちとまぐわい、そしてやっとのことで身ごもり、獄中で雪を出産します。死ぬ間際、小夜から復讐劇の話を聞いたお寅は、小夜を引き取り僧侶ながら剣術に長けた道海和尚に雪を預けます。
和尚は雪を厳しい修行で育て、剣術を身につけさせます。雪は20歳になり、ついに儀四郎一味へ復讐するときがやってきます。蛇の目傘に仕込んだ刀を持って、復讐の旅へ向かうのです。
一味のひとりである伴蔵の居場所を知った雪は、海沿いの村へ向かい機会を探ります。伴蔵が病気がちで酒に溺れていること、一人娘の小笛が伴蔵に竹かごを作り生計を立てていると嘘をいいながら、体を売っていることなどを知るものの、伴蔵を海岸沿いに呼び出し、命乞いする伴蔵を斬り復讐を果たします。
次の標的であるおこのは、雪が自分を探してることを察知し、憲兵を仲間に引き入れながら拳銃を駆使しに対抗しますが、追い詰められ万事休すのところ、首を吊って自殺します。
雪が復讐を計画していることを知る作家の龍嶺(黒沢年男)から、リーダー格の儀四郎がアメリカ渡航中、船が難破し3年前に死んでしまったことを聞き、復讐もここまで…と思った矢先、龍嶺の前に儀四郎が現れ、生きていることが発覚します。
西洋館の舞踏会にいることを聞きつけた雪は、龍嶺とともに舞踏会へ乱入し、ついに儀四郎を討ちます。すべてが終わった…。西洋館を出ると外は雪が降りしきっていました。
精神と肉体が疲れ果てたところに、伴蔵の娘である小笛が忍び寄ってきて、雪は短刀で刺され絶命するのでした。
意外とカルト的要素はない
女性の剣劇もの復讐時代劇としては面白かったんですが、なんか妙にハードルを上げてしまっていたというか、思っていたほどカルト的な内容ではなかったなと。石井輝男監督や牧口雄二監督の作品のような、ぶっ飛んだスプラッター時代劇かと思ったのですが、わりとおとなしめな印象でした。
その分、日本人的な視点で万人受けする作品であると言えると思います。
漫画的表現
漫画原作があるんですが、漫画的表現が多いなあというのも感想のひとつ。悪人四人衆が一つの画面に顔が浮かんでいる感じは(ああ、こいつらを倒す物語なんだな)と分かりやすい。
パートが変わるたびに画面の左側に縦文字で「xxxの章」のような表記が出てきます。ご丁寧に「最終章xxx」的な表現もありますので、(これから最後の決戦か)なんていうのもわかります。
冒頭、雪が生まれる出産シーンから始まるのですが、その後は復讐の発端になる場面の回想シーンなどがあり、ちょっと時系列が混乱する部分があるかもしれませんが、パート紹介することで少しわかりやすくなっています。
『キル・ビル』との類似点
後になって、『キル・ビル』から『修羅雪姫』の原作者に版権料(?)が支払われたようですが、逆輸入的に表現すると本作は『キル・ギシロー』ですか。恨みの対象である相手を1人ずつ仇討ちしていく様や、途中挟まれる修行シーン、女主人公が刀を使う殺陣、印象的に使われる雪のシーンなどなど、確かに類似点は多いですね。
ただ、『キル・ビル』はその他の作品にもモチーフやオマージュになった元ネタがたくさんあるそうですから、本作だけが元ネタではなくて、そのあたりを探してみるのも面白いでしょう。
個人的には、『修羅雪姫』とそこまで似ている・パロっているという感じはしませんでした。
エログロ描写はほとんどなし
エロやグロは人によって感じ方は違うと思うので、これ私の主観ではあるんですが、エロ・グロは少なめでした。
エロはほとんどなし。一部、雪の修業時代に、子役の子が和尚である西村晃の殺陣筋一閃で丸裸になるシーンはありました(今の時代では絶対にアウトなんでしょう…今回の劇場視聴はフィルムでしたから修正はありませんでしたが)。このシーンはほんの一瞬ですし、それ以外目立ったエロシーンなし。70年代の映画を観ていると、必ずといっていいほどエロシーンが挿入されているんですけど、私がその手の映画ばかり見ているからでしょうか…。
グロ描写は、血しぶき系は多いんですがね。なんともいえない絵具的な朱色の血がゴムホースの先をつまんだように勢いよく噴き出します。首ちょんぱとかはなくて、雪を襲った刺客の腕が吹っ飛んだり、首を吊って死んだおこのに対しての怒りの胴体切断(まるで魔術師のよう)ぐらいでしょうか。それも、贓物がドバーっとでてくるようなことはなくて、大根に包丁をスパっと入れて2つにしました、ぐらいの表現。装飾がない分、逆に言うと不気味でもありますね。
西洋館での戦い
生きていた儀四郎を追い詰めた西洋館での最終決戦。舶来の白人軍人と貴婦人たちが怪しいアイマスクを付けてダンスを踊っているんですが、クラシック音楽がかかる中、龍嶺が儀四郎を取り押さえたところを、雪が2人まとめで刀でぶっ刺すんです。
(なんかこのシーン既視感があるな)と思ったら、多分『徳川いれずみ師責め地獄』かなと自己解決。『ウルトラセブン』なんかでもありましたけど、クラシック音楽がかかりながらの決死の戦いっていうのは、ドラマチックでかっこいいですね。
小笛に刺されるラストシーン
私が最も印象的だったのは、小笛に刺されるラストシーンです。
何の予告もなくいきなり出てきた小笛に刺されるのですが、雪の上に倒れた雪は、赤い血で染まった手で雪をぎゅっと握りめて咆哮します。声にならない声で泣き叫ぶのですが、このシーンにはいろいろ考えを巡らせてしまった。
終始、復讐マシーンと化し、その感情の起伏を見せなかった雪が、復讐を終えた途端に命を奪われる。ラスボスであった儀四郎を最後の一撃で仕留める時、雪は「因果応報!」と叫びながら刀を突き刺しますが、この小笛の復讐もまさに「因果応報」。
復讐は新たな復讐を生む。雪は復讐されることを知っていたのか。知らなかったとしても、剣術の達人が無防備に素人娘に刺されるものなのか(いくら最終決戦で精魂尽き果てていたとしても)。雪は小笛の復讐をわざと受け入れたのかもしれない。
思い返せば、雪は伴蔵を仕留める前に小笛に対して、「困ったことがあったら東京のxxxを尋ねなさい」というようなことをいっていました。これは、単純に父親がいなくなる小笛への情けだったのか、それとも、小笛が復讐心を持った時のために、自分の居場所を伝えておき、復讐を受け入れるためだったのか。
雪の最後の咆哮は、(自分の人生は復讐のためにあった)ことへの虚しさか、(やっと復讐が終わって自由になったのに未来を奪われた)ことへの悲しさか、(自分の復讐が新たな復讐を生んでしまったこと)への後悔か。
作中、強烈な目力でただただ復讐を果たすために生きた雪が出した感情の正体は、いったい何だったんでしょうか。
☑この映画のオススメシーン
- 雪演じる梶芽衣子の美貌
- 着物を着た雪の剣劇アクション
- 最終決戦後のラストシーン
さいごに
いかがだったでしょうか?
ただひたすらに家族の恨みを晴らすために生きる雪の悲しい復讐劇。惚れた腫れたもなければ、仇討ちのためには容赦がない、非常にシンプルな物語です。
それから、『キル・ビル』でも良いタイミングで流れてきますけど、主題歌「修羅の花」は最高と最高ににマッチしていて泣けてきます…。「命の道を行く女、涙はとうに捨てました」…。
あと、調べたところ、続編『修羅雪姫 恨み恋歌』があるようですね。え!雪は死んでなかったの?
それから、2001年には釈由美子版『修羅雪姫』も存在します。リメイクでも続編でもないようですが、復讐劇という要素はそのまま残した刀を使ったアクション映画のようです。続編の方は気になりますけど、こっちは、まあいいかな。
おまけ
館内にあった展示物をどうぞ。
肝心の『修羅雪姫』は天井近くにあってうまく写せませんでした(汗)
藤田敏八監督の紹介。
こちらは神代辰巳監督の紹介。
今回上映の下記2作品は、コロナ以前に神保町シアターで観たなあ。
『アフリカの光』は一攫千金を狙ってアフリカ行き船に乗ろうとする青年のもがきを描いた野望モノ、『青春の蹉跌』は刹那的に生きる男女が、始まった瞬間に終わりに向かって進んでしまう青春物語。この写真の通り、ショーケンの表情がこの作品をうまく表しています。どちらの作品も桃井かおりが助演。大した女優さんですよ、SK-Ⅱだけじゃないですよ、桃井かおりは!
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