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『女子プロレスラー小畑千代』秋山訓子著



強さを求めて
日本においては、男子プロレスの勃興よりも女子プロレスの方が長い歴史を持っていることはプロレスファンの多くに知られているところ。
伝説的な女子プロレス団体である全日本女子プロレスのルーツは、ショパン猪狩兄弟の柔拳にあるところも定説だが、その松永一派と一線を画して男子プロレス顔負けのストロングスタイルを貫いたのが、本作の主人公小畑千代である。
なにせ、柔道チャンピオンでジャッキー佐藤をシュートマッチの末に破った神取忍に対して「いつでもいらっしゃい」「最終戦はなんとしても梶取とやりたかったの。あいつが、自分は強いと言っているから。じゃあやってやろうと思った。」と、歳の差を跳ね返す引退試合で挑戦表明をしていたことも有名。戦後まもなくから活躍した女子プロレスラーに、これほど強さに対する気概があるものかと感心させられるエピソードだ。
女子プロレスの成り立ち
小畑のキャリアのほとんどは特定の団体には属さず、複数レスラーを束ねた今でいうプロモーションのような形で巡業へ回り活躍。女子単独で1度、さらに国際プロレス女子部としてもテレビ東京でテレビ中継が付いていたこともある。当時は決してマイナーな活動ではなかったと思われるが、現在に連綿とつながるプロレスの大河からすると、歴史に埋もれてしまった感がある。
現在の女子プロレスに繋がる松永一派は、どちらかという家内事業的な“興行”の色が強く、エログロ路線では決してなかったがそうした客さえも取り込んで動員した貪欲な集団、という印象だが、小畑率いるプロモーションは高潔で志が高い「女子が戦う男子プロレス」を目指していた、ということだろう。
本書巻末には「日本の女子プロレスとはなんだったのか?」という章があるが、戦後女子プロレス史を理解するには『1954 史論 日出ずる国のプロレス』も参考にされたし。
小畑らは親善試合のような形式で海外への巡業も重ねており、特に韓国女子プロレスラーの回想は興味深く、玉京子のエピソードは文献的にも貴重ではないか?と思う。まだ日韓国交正常化する前の時代の出来事である。
彼女の盟友バケツガールこと佐倉輝美や、後輩の千草京子の活躍などにも触れており、非・全日本女子プロレス系の女子プロレスが確かに存在したことを実感させられる。さらには彼女らが経営した浅草のバーから戦後下町の姿まで詳しく描かれており、戦後ニッポンのリアルな情景も浮かんでくるし、若干ではあるが裏社会系の逸話もある。
半世紀以上前の“闘う女”
本書はプロレスヒストリー本というよりは、「戦後を強く生きた女性の物語」「独身を貫き働き続けた女」「男に負けじと戦う女」といったウーマンリブ的な視点でまとめられている。岩波書店発行なのでエンタメというよりはお堅い本だ。
加えて、著者がどれだけ「プロレス」を理解されているかわからないが、登場する関係者が決してケーフェイに触れることはなく、おそらく著者のインタビュー時にもそうした種明かし的なタブーは明かさなかったものと思われ、当時を生き抜いたレスラーの矜持すら感じる。
本稿執筆の2025年は、初の女性総理大臣が誕生した。そして、奇しくも今日2025年12月7日は東スポプロレス大賞史上初の女性レスラーが受賞、業界にとっても女性が活躍する象徴的な1年になった。
今から半世紀以上前に活躍した女子プロレスラーの礎が、現代にも確実に繋がっていることを再認識させられる一冊だ。
内容★★★☆☆
赤裸々★★★☆☆
ケーフェイ★☆☆☆☆
レア度★★☆☆☆
必読度★★★☆☆
一言コメント:
小畑はファビュラス・ムーラとも戦った!

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