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本日の一冊はコチラ。
『証言アントニオ猪木 絶望と復活の闘魂人生 』



ストロング小林戦後の流血猪木の表情が凄まじくカッコいい。人を殺してきたような眼をしていてゾクゾクしてしまう。
だんだんの猪木の裏面へ…
とにかく「また猪木モノかよ!」という読者諸兄の声はよく分かる。近年のプロレス本と言えば、猪木モノ、昭和新日本やUWF、そして全女と懐古主義的な「あのころは熱かった」な書籍ばかりである。
それだけ当時のプロレスを扱った本は売れるのだろうが、本書もまた「猪木」であり「昭和新日本」なのだが、徐々にダークサイド猪木に関するエピソードが濃くなってくる。
前作『アントニオ猪木と新日本道場最強伝説』に引き続き猪木を中心に添えつつ、今作はさらに猪木の凋落と復活にフォーカスした一冊だ。
プロレスラーアントニオ猪木の魅力を語るうえで絶対に欠かせない裏イノキ。議員生活からレスラー晩年、そして新日本プロレスを大混乱の渦に叩き落した張本人である、迷プロデューサー猪木の知られざる顔が明らかになってくる。
当時を追いかけていたファンはすでに知っているエピソードも多いだろう。しかし令和の世になって(しかも鬼籍に入られた中で)アントニオ猪木の悪い話を目にすることは少なく、そういう意味で貴重なエピソードが満載である。
稀代のスーパースターである猪木の魅力、それはレスラーであり実業家でありプロデューサー、そして人間・猪木であった。多面的なエピソードから迫るにふさわしい表裏複雑な人生劇場なのである。
主要コンテンツ
宝島社の証言シリーズは主に関係者へのインタビューが中心。本書はその構成に追加して「猪木が語る師・力道山」も収録している。
・レスラーインタビュー:藤原喜明、藤波辰爾、佐山聡、グレート小鹿
・関係者インタビュー:猪木啓介、サイモン猪木、加地将一、木村光一
・特別収録:猪木が語る力道山
・猪木闘魂全史年表
申し訳ないが藤原、藤波、佐山が語る猪木論は語り尽くされた話題ばかりで、本書を手に取るようなファンにとっては既知なエピソードばかりだろう。
唯一、グレート小鹿の登場は珍しくその意味では読みごたえがあるが、小鹿が語る日プロ追放の真相などは…もう真実がなんであったのか関係者も記憶が混濁しているのでは、と想像する。
記憶は美化されていくもので変化していくものであるから、「現在の小鹿が語る」という扱いがよいのではないかと思う。
(断っておくが、嘘をついているとか記憶を捻じ曲げていると言いたいわけではなく、記憶というのはそういうものだということ)
本書でバツグンの読みごたえは、猪木と深い関係を持ったのにも関わらず離れていってしまった、加地氏と木村氏の登場であることは間違いない。
そういう波動を受けたくない
加地氏は2003年に『アントニオ猪木の謎』という本を上梓しており、さらにプロレス本の大定番『猪木寛至自伝』もプロデュースしているという。元々は何屋かわからないが現在は作家として活躍中で、猪木とはロスで出会ったようだ。
『~の謎』はおそらく猪木のネガティブエピソードが満載な暴露本だと思うが(私は未読)、本稿からそのエッセンスをふんだんに感じることができると思われる。とにかく猪木観が辛辣で悪猪木の素顔が赤裸々に語られている。
しかし拒絶したり罵倒・否定するわけではなく、冷静に猪木と付き合った日々の思い出に浸り、猪木の異常さに辟易しつつも、どこか悔いているようにも感じる。
加地氏はプロレスのことをほとんど理解していないとのことなので、そんな氏が語る「UFO旗揚げ」エピソードは興味深いし、その他猪木を語るのに外せない「クーデター」「議員スキャンダル」「都知事選と拳銃密輸」「ズッコさん」にも詳しい。
時折、当時の猪木の付き人筋が「手をかざす」超能力を語ることがあるが、加地氏は「そういう波動を受けたくない」と言われ一方的に関係が切れてしまったようだ。
“そういう波動”とは加地氏が醸す悪い霊気のようなものだったのだろうか…。猪木はこうして時として交友関係を整理してきたのかもしれない。
名著の作者、木村光一
また近年の猪木本では垂涎の出来栄えである『格闘家アントニオ猪木 ファイティングアーツを極めた男』の著者でもある木村光一氏も登場。
氏は広告制作会社出身で、猪木本の出版企画から関係を築き、猪木事務所のブレーンまで務めた珍しい経歴の持ち主。マスコミのおもちゃにされ散々しがんで捨てられた議員スキャンダルを冷静に分析しているし、北朝鮮興行の真の狙いも興味深い。
そして前述の加地氏と共通する「人を信用せず裏切ってしまう猪木はいかにして人を天秤にかけるか」がよく分かるエピソードが面白い。ゼロ年代マット界を、格闘技目線ではなく新日本目線で見ていた私のようなプロレスファンにとっては、当時の出来事や流れに「なるほど」と納得させられる部分が多くあり、確実に理解が深まるだろう。
UFOやIGFの発足にも関わっており、氏の述懐はとにかく必見の項であろうと思う。
イノキファミリーも登場
猪木元気工場の実弟である猪木啓介氏や、猪木寛子元夫のサイモン猪木氏も登場。啓介氏は近年上梓した『兄』が素晴らしかった反動で特筆すべきエピソードはなく、サイモン氏は義理の父親という立場での関係性を語っている。新日本ファンからすると「どのように新日本が整理されていったか」を読み解くヒントになるだろう。
いやしかし、本書の読みどころは加地氏と木村氏の「ダークサイド猪木」であることは間違いないのである。
内容★★★☆☆
赤裸々★★★☆☆
ケーフェイ★★☆☆☆
レア度★☆☆☆☆
必読度★★★☆☆
一言コメント:
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