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こんにちは!アツコアツオです。
今回は現在プロレス団体「スターダム」に所属する朱里選手の自伝『朱里。』を紹介したいと思います!
プロレス好きの方であっても「女子プロレスには興味がないなあ…」という方もいらっしゃるでしょうけど、本書はそういう方にこそ読んでほしい、朱里選手の特異なプロレスキャリアに驚くこと間違いなしです!
朱里自伝『朱里。』
本書は、朱里選手が幼少期から2021年12月にスターダムが誇る最高位のベルト、ワールドオブスターダム王座(通称:赤いベルト)を戴冠するまでを振り返った自伝的エッセイ本。
朱里選手は「モノが違う女」というニックネームで活躍していますが、読めば読むほどレスラーとして「モノが違う」ことがよくわかってきます。
巻末には鈴木みのるとの対談がありますが、あの鈴木みのるをもってして「こっち(朱里)はできる人だよね。俺はなんちゃってだからさ(笑)」と言わしめる、恐ろしいキャリアの持ち主なのです!
なにせ立ち格闘技のシュートボクシングとKrushを経験しながら、MMAに転向しパンクラスの女子王者に輝いた後、UFCにまで到達したスゴい選手なんですよ。
それでいて格闘技デビューは“ファイティングオペラ”と称された超エンタメプロレス「ハッスル」だというから、なんという振れ幅の大きい選手なんだろうと思いますね。
真剣勝負からエンターテインメントまで経験した朱里選手は、古今東西の男女すべてのプロレスラーを合わせたとしても稀有なキャリアの持ち主ですし、プロレス界イチのトータルファイターといっても過言ではないでしょう!
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また、本書ではそんな朱里選手が語る「プロレスラーが格闘技の試合で結果を出すことの難しさ」にも触れていますし、総合格闘技に関する赤裸々な苦労話がたくさん載っていますので、ストロングスタイルやU系が好きな男子プロレスファンの方にも超オススメ。
私はおおよその朱里選手のキャリアは理解していたつもりですが、なによりリング上だけではわからない朱里選手の性格や考え方、また苦労も知ることができて、はっきりいってかなり見方が変わりましたし、すごく応援したくなりました。
詳細はぜひ本書を手に取っていただきたいのですが、いくつか代表的なエピソードを紹介しつつ、見どころをまとめていきたいと思います!
朱里の芸能デビューと母親の存在
大竹しのぶの舞台を見たことをきっかけに女優を志したという朱里ですが、そのころの芸能事務所では芸能界の闇を垣間見たようで、実体験のエピソードもいくつか披露されています…。前回紹介した中野たむ自伝でも芸能界のヤバい話がありましたが、女子レスラーの方は色々怖い思いをされた方が多いかもしれませんね。
そんな時も支えてくれたのは母親の存在だったとのことで、幼いころに両親が離婚してしまったためか母親との絆がとても強く、要所要所で紹介される母親のエピソードは本書の裏テーマともいえそうです。(本書ラストではワンダー王座初戴冠のエピソードがありますが、家族の縁はこのラストにも帰結しています)
Do the HUSTLE!
ひょんなことから、ハッスルの新人発掘オーディション(審査員はアン・ジョー司令長官とTAJIRI!)に参加し見事合格。
空手の組手経験はあったため、当時活躍していたHGやRGになぞらえてKG(空手ガール)としてデビューすることになる朱里ですが、当時のハッスル崩壊前夜の様子が赤裸々に語られており大変興味深い!(そもそも朱里はプロレスオーディションとは知らずに参加していた様子…)
ハッスルは金回りが悪くなって大物たちが去っていったことはよく知られていますが、朱里は雑用含めギャラ10万円だったという衝撃の告白もあります(そして受け取ったのは最初の2か月だけ!)。さんざん雑用係でこき使われていたようで…ちょっと泣けてきます…。
ハッスル崩壊後はTAJIRIが中心人物となるSMASHやWNCに参加し、この頃にTAJIRIからプロレスの薫陶を受けたようです。やっぱりプロレスの本場アメリカで活躍した選手から指導を受けたり、まだ染まりきっていない若いころに世界最候補の選手からサイコロジーを含めたプロレス観を直接学んだという経験は大変重いですよね。
また、ハッスル時代は小路二等兵(PRIDEでも活躍した小路晃)からスパーリング(たぶん極めっこのようなもの)を直接学んだ経験から、次第に格闘技の練習に参加し始めます。
格闘技経験のない朱里でしたが、細い体で空手ガールキャラを演じていた際「あんなヒョロヒョロの女に何ができるんだ」というネットの書き込みをみて、強くなって見返してやりたいという気持ちが芽生え、そこからキックボクシングに通い始めたというから驚き。
エンタメプロレス出身で真剣勝負の世界に飛び込んでいこうという心意気はアッパレ!
ここからしばらくプロレスと格闘技の二足の草鞋生活がスタート。最終的には世界最高峰の総合格闘技UFCにまで到達するんですが、プロレスラーが格闘技の試合で結果を出すことの難しさについて語っており、やはり説得力がありますね。
そうそう、UFCファイターは勝たなければ食っていけない衝撃のエピソードにも驚かされました!こちらのギャラ事情も新鮮!
朱里の格闘技観
格闘技の試合は階級制で行われますから、プロレス生活の合間に減量しなければなりませんよね。
また、プロレスの試合では時に相手の技を受けながら観客を魅了したり、勝つことだけが優先されない場合だってありますよね。
朱里選手はプロレスと格闘技の違いについて、こう語っています。
プロレスと格闘技は、もう真逆のジャンルと言っていいと思います。もちろん、技や動きで共通する部分はあります。でもプロレスでは、例えば腕ひしぎ逆十字固めにしてもミドルキック、ハイキックにしても、私は「プロレス技」に置き換えて使っています。
しっかりした技術がなければ“魅せる”こともできません。私は基本的に「プロレスラーは強くないといけない」という考えです。同時に、強さだけを誇りたいのなら格闘技の試合に出て証明すればいいとも思います。プロレスと格闘技は共通する部分があって、でも違うから面白いんです。
(中略)
人によっては「プロレスも格闘技」「分けて考えてはいけない」という考え方もあるんでしょうけど、私は両方やってきた感覚として、はっきり分けて考えています。そして、どっちのジャンルであれ、真剣にやっている人はリスペクトしています。
「朱里。」138ページから引用
令和の時代、多くのプロレスファンは同じ考えなんじゃないかな?と想像します。
もっといえば、ファンによっては「プロレスラーは強くなくたっていい」と思っている方も多いんじゃないか。
私はプロレスラーがそのまま何の訓練もなしに格闘技のリングで結果が出せるとは全然思っていません。そもそも、プロレスは競技ではないし、どちらかというとレスラー同士の共同作業だと考えています。
とはいえ、やっぱりリング上は“闘い”であってサーカスではなくて、「隠し持ったナイフ」はあってほしい!というのが昭和プロレスにロマンを馳せる私の感想です。
そんなところでは朱里のプロレス/格闘技観とけっこう近いものかもしれません。
また、プロレスラーとして格闘技のリングに上がる心持ちはこのように語っています。
私の場合は、ですけど、格闘技はまず勝つことが第一。“魅せる”試合をして勝つという意識が強い選手もいますし、私もそれはあったんですけど完全にはできていなかったですね。勝つことが最優先でした。
やっぱりプロレスラーとして格闘技のリングに上がっていたので、周囲からもいろいろな見方があったと思います。負けたら何を言われるかわからない。「プロレスラーに何ができるんだ」って思っている格闘技のファンの方にも、「ハッスルから出てきた朱里なんで、本物のレスラーじゃない」と思っているプロレスファンの方にも、自分の実力を認めさせたかった。だから「負けたけどいい試合だった」では済まされないんです。とにかく勝ちにこだわってました。
(中略)
ただ、勝たなければ道が開けないし、認めさせることができない。とにかく自分をバカにしていた人たちを見返してやるんだと、そういう気持ちが強かったです。
「朱里。」139-140ページから引用
プロパーの大手プロレス団体出身のレスラーにはない、きっと朱里独特の苦悩ですよね。
格闘技の戦績では判定勝ちが多かったといいますから、やっぱり「負けられない試合」という意識が強かったのかもしれません。
ハッスル出身レスラーであるがゆえに、やっぱり舐められがちだった部分もあると思うんですよね。あんなの芝居じゃないか、というね。
うがった見方をすると、ハッスルでは当時PRIDEで活躍していた総合格闘技のレスラーが、ファイティングオペラという免罪符をかざして「フェイクに興じていた」という見方もできるわけで。プロレスラーより格闘家の方が優れている、格闘家はプロレスだってできると馬鹿にしていた風潮がないわけでもないでしょう。
本書を読むと朱里のパーソナルな部分がたくさん語られています。我慢強さだったり一直線だったり、寂しがり屋だったり。きっと朱里の性格から「プロレスラーを舐めんじゃねえ」という気持ちが強かったんでしょうし、彼女なりにプロレスを背負って格闘技の試合に挑んでいたということでしょう。
アントニオ猪木の秘蔵っ子だった時代の中邑真輔を彷彿とさせる孤独さのような気がします。
「モノが違う女」の格闘技観は、きっと多くのプロレスファンの心を動かすと思いますよ。
米国両メジャー団体からオファー
さて、そんな朱里を米国メジャー団体が放っておくわけはありません。
団体名さえ明言されていないものの、アメリカメジャー団体からオファーがあったという初耳情報もありました。おそらくWWEと思われる団体からは2度、おそらくAEWと思われる団体からは1度…。
WWE(と思われるルート)は朱里の年齢と下部組織からのスタートという点がネックになり断念。
AEW(と思われる)ルートは国内在住で試合の時だけアメリカという条件もあってオファーを受けたそうですが、新型コロナの影響で渡米が叶わず。結果ドンナ・デル・モンドとしてスターダムに登場することになりますので、タイミングと運というのは面白いものですよね。
個人的にはプロレスのエンタメ性を理解し、総合格闘技の技術を持つ朱里は、絶対にWWEのリングで活躍できると思っています。彼女には日本マット界は狭すぎるんじゃないかと。実力を持て余しているような気がするのは私だけでしょうか。
日本から女子プロレスの選手が渡米し活躍していますが、朱里のようなトータルファイターはいない気がしますし、ロンダ・ラウジーあたりと対峙するシーンを想像しただけでもワクワクしますね!
ぜひオープンフィンガーグローブを付けて登場してほしい!と妄想してしまいます。
スターダムの強さが際立つ
スターダム合流直前の様子も克明に語られており、フリー時代のカナプロ参戦のエピソード(この時に藤原喜明や鈴木みのると遭遇)など、たいへん興味深かったですね。奇しくもアメリカで活躍しているASUKAや志田光と接点があるようですので、きっと再会を願っていることだろうと感じます。
他の女子プロレスラーにはない朱里のプロレスをも包括するスターダムには、岩谷麻優のようなプロパーレスラーもいれば、中野たむのような元アイドルもいる。
こんな多種多様なプロレスラーが活躍するリング、そりゃおもしろいに決まってる!
本書を通じて朱里のプロレスキャリアを深く知ることができたことで、改めてスターダムの強さを認識させられた、そんな一冊でした。
繰り返しますが、男子プロレスファンにこそ絶対に響く一冊です!
▼中野たむ自伝の書評はコチラ
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