こんにちは。野良プロレスコラムニストのアツコアツオです。
金曜日は闘いのワンダーランド!
毎週金曜日にお届けする『NJPW今日は何の日』のコーナーです。
新日本プロレスワールドのアーカイブにある過去の試合から、アツコアツオが独断と偏見で選んだ1試合を紹介します!
新日本プロレスワールドとは?
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※サイトリニューアルに伴い、過去の試合の多くが視聴できなくなっています。
また、WEB決済とアプリ決済(Google PlayやAppleなど)で月額料金が異なりますのでご注意を!
アントニオ猪木名勝負セレクション
新日本プロレスワールドのリニューアルで過去の動画の多くが視聴できなくなっています…。
リニューアルに関する幣ブログの記事はこちら↓。
木谷オーナーが動きだし状況が緩和されているような印象を受けますが、リニューアル時のファーストインプレッションです。
過去の試合は順次追加されていくとのことですが、「今日その日」の動画がほとんど存在しなくなってしまったので、しばらくは「アントニオ猪木名勝負セレクション」と題して、アントニオ猪木の名勝負を振り返ることにします!
というわけで、本日の試合はこちら。
稀代の食わせ物の呼び声高いミスターXですが、それでも猪木は真剣に戦っていることに大感動!
ダメ試合でもたくさんの気づきがある一戦です。
異種格闘技のハズレ回
プロレスは最強の格闘技であると標榜し、プロレスで次々と並み居る世界の強豪を倒してきたアントニオ猪木。
柔道、ボクシング、空手など、その名の通り異種格闘技の選手たちと死闘を交え勝ち抜いてきましたが、たまにはうまく嚙み合わない試合だってあります。
だって異種格闘技戦だからそんなの当たり前でしょ、と。
従来のプロレスじゃないんだからさ。
だけど、今回のミスターX戦は、そういう問題でもないんですよね…。
では、この試合を3つのテーマに絞って解説していきましょう。
①早すぎたメディアミックス
②ダメオーラ丸出し
③それでも猪木は真剣に戦っている
それでは、1つずつ振り返ってみましょう。
①早すぎたメディアミックス
1970年代後半、当時は漫画原作者の梶原一騎が手掛ける劇画漫画が全盛の時代でした。
『空手バカ一代』『タイガーマスク』、そして少年マガジンで連載されていた『四角いジャングル』。
今回紹介するミスターXは、漫画『四角いジャングル』に登場するキャラクターなんですが、いや、ちょっと表現が違うか。
『四角いジャングル』にはアントニオ猪木をはじめとする実在の人物が登場し、現実で起こることを漫画で予告しながら、その結末を現実世界で見せていき、さらに漫画で回収するという、虚実ない交ぜになったメディアミックスとを実現させた漫画といえます。
漫画内でミスターX(なぜか怪覆面)が登場し、アントニオ猪木へ挑戦表明したところで、現実世界にもミスターXが現れて猪木との対戦が実現します。
ミスターXは元全米プロ空手スーパーヘビー級の実力者で、戦績は46戦20勝26反則という恐ろしい経歴の持ち主。
今度ばかりは猪木も危ない!…とさんざん煽りまくった結果、トラブル(諸説あり)があって当初予定していた中身の選手が来日ができず、急遽替え玉が来日し試合に臨んだというズンドコエピソードがあります。実際に試合に臨んだミスターXは超がっかりな選手でした。
さらにいうと、現実世界では期待外れに終わったミスターXに対して、それを回収する追っかけ連載の『四角いジャングル』では、「試合前にウィリー・ウィリアムスに潰されたためリングに上がったミスターXは偽物」と、真のラスボス登場を予感させるような煽りで回収し、ミスターXの存在自体を噛ませ犬に利用するという荒業で見事に乗り切った!
猪木の一連の異種格闘技路線は、この真のラスボス扱いとなった1980年のウィリー戦で幕を閉じることになりますが、プロレスと格闘技の境目があいまいな時代において、漫画とリアルが交差するメディアミックスを展開するには少し早熟だったかもしれません。
今だったら、プロレス団体・出版社・テレビ局がスクラムを組んで、もっと素晴らしいエンディングを迎えられるようなストーリーや演出ができそうですけど、悲しいかな今のプロレスに世間を横断するようなエネルギーがないですもんね。
早すぎたメディアミックスではありますけど、その時代特有のパワーで実現したということかもしれません。
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②ダメオーラ丸出し
というわけで、漫画版で読者の妄想と期待が膨らみまくったミスターXですが、リアル版は超がっかりな選手でした。見た瞬間にわかる、全身から醸し出されるダメオーラ、妙なステップ、そして空手着の背中にデカデカと書かれた「X」の文字…。
明らかにオーバーウェイトなそのボディはスーパーヘビー級というよりも肥満体で、ビジュアルやコスチュームは漫画版を模しているとはいえるのですが、マスク越しに見えるその目は、よもや不敗の26反則のいかつい選手には見えず…。休日のショッピングモールに買い物に来ているような、たいへん優しい目をしています(笑)
試合が始まるとそれなりの構えでポージングを取りますが、ボクシンググローブをクイクイっとこまねいて猪木を挑発し、距離を詰めず相手の出方を伺いながら、組み合った猪木をいとも簡単に投げ飛ばしていきます。空手の選手なのに。
じりじりと詰め寄ってくる猪木に対して、攻撃を警戒してか次第におかしな構えに変わってくるX、ダウンした猪木に対して、足の裏がチョコンと少しだけ触れる程度の、めちゃめちゃ優しいストンピングを腹部に2度投下。
このあたりから「おや…?こいつ…素人だ!」という訝しげになムードが会場を支配し始めます…。
2ラウンド早々には、猪木がミスターXの実力を図ろうとあえて攻撃を受けるようなシーンがありますが、猪木をコーナーに詰めてパンチ・キックのラッシュか!ついにXの真価が!と思ったところ、Xはポコポコたこ殴りのようなボディブローを猪木の腹部へ打ち込めば、遠慮気味の前蹴りを繰り出していきます。攻めどころなのに。
勝つ気があるのか!?と激しく問いただしたくなる攻撃に、私はハッと気づきました。
ああ!これはミスターXによるプロレスごっこだ!
替え玉によって突然『四角いジャングル』へ放り込まれた彼は、ただこの日を平穏無事に過ごすためだけに試合に臨み、そして無事にその役目を終えました…。
③それでも猪木は真剣に戦っている
異種格闘技戦のハズレ試合と名高いこのミスターX戦ですが、いやはやダメなだけな試合かというと、そうでもないような気がします。
なにせ、リング上の猪木の周りだけは、真剣勝負のオーラが漂っているんです。
確かにXはまがい物の匂いがプンプンするんですけど、猪木は相手がどんなポンコツでさえ、真剣に戦っているんだなあ…と感動してしまいました。
パンチを警戒して腰を低く下げ、パンチが当たらない距離をしっかり確保する猪木は、Xの情けない打撃にもしっかりガードを固めていく。
2ラウンド目は相手の力量を試すように、多少あえて技を受けるようなシーンもありましたが、お付き合いは終わりだと言わんばかりに見切りをつけたように、3ラウンドに入るとすぐにローキックから簡単に一本背負いに持ち込み、あっという間に腕ひしぎでギブアップ勝ちを収めました。
こんな食わせ物でさえ、全力で勝利の雄たけびを上げ喜びを爆発させる猪木。
プロレスと格闘技を分けたことはないと語った猪木のその言葉が、如実に信じられるようなファイトでした!
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