こんにちは!アツコアツオ★ランド編集部です。
今回から始まりました、幣ブログ管理人であるアツコアツオによるプロレスコラム。
第1回は「激震!オカダの退団」をお送りします。
それでは、どうぞ!
激震!オカダの退団
この事件で義理人情より「プロはお金である」ことが、はっきり証明された。
これは一つの歴史的転換である。
週刊プロレス No.377より引用
1990年、大手メガネチェーンストアのメガネスーパー社が興したプロレス団体、SWS(スーパー・ワールド・スポーツ)。
SWSは豊富な資金をもとに各団体からプロレスラーを引き抜いていったわけだが、当時鶴龍対決で全日本プロレスを賑わせていた天龍源一郎がSWSに移籍したことは、大きな衝撃であった。
金で有力選手を引き抜いていく様に、週刊プロレス(もといターザン山本編集長)は「SWSは金権プロレスだ」と揶揄、天龍に対しては先に引用した文句を使い、週刊プロレスの表紙で煽りながら大々的に批判記事を展開した。
後になって、ジャイアント馬場から金銭を受領してバッシングしていたことが発覚し、自身が金まみれでとんでもない金満編集長だったというオチがつくわけだが、とはいえ「プロはお金である」。
プロ=金を嫌悪した時代
SWS旗揚げの30年前、金で動く「プロ」に対しては、やはり否定的な見方が強かったんだろうと想像する。
義理人情を重んじる日本人的な美徳が優先されてきたし、それが美しいとさえされていた。
一方では、社会の模範から逸脱する者を村社会から阻害したり、全体主義的な暗黙裡の同調圧力もあった時代。
より狭いプロレス村の内部であればなおのことだし、プロレスを作品としてみた場合、相手との信頼関係がないと成り立たないわけで、時には「空気を読む」スキルも必要だろう。
個人よりも全体が優先され、育ててくれた団体に忠誠を誓い背くことは許されない。出る杭は打たれる世界。
プロレス界も、そして支持する我々ファンも、週刊プロレスに煽られたとはいえ「金で動く」選手たちに嫌悪感を持っていたのかもしれない。
究極の個人事業主
オカダ・カズチカ退団である。
オカダが「金で動いた」とは断定はできないし、もちろん言えない。それだけが理由なわけもなかろう。
だけれども、SWS当時と比較すると「金で動くこと」がなぜ悪いんだと、堂々と主張できる日本社会になっていることは事実だろう。
終身雇用が崩壊したこの社会で、パート・アルバイト・派遣労働など就労条件も多種多様に広がってきた。正規雇用社員だって、人材流動の世の中が当たり前であり、いよいよこの日本でさえ転職市場が活況になってきた。
スキルやキャリアがあれば、どこに行っても通用する時代がやってきたのだ。
プロスポーツの世界ではすでに野球やサッカー、最近ではバスケットボールなどで日本人選手が活躍しているし、日本国内のプロスポーツとは桁外れの収入を得ることだってできる。日本を飛び出して、メジャーに挑戦する日本人はますますもって増えていくだろう。
考えてみれば、プロレスラーは究極の個人事業主である。もっといいギャランティーを稼ぎたい、もっといい車に乗りたい、もっと世界で勝負したい。そんな欲望があって当然であるし、誰も責める権利はない。
ライオンマークに別れを告げて
オカダは当初から「新日本プロレス、プロレス界に金の雨が降らせる」ことを目標にリング上で戦ってきた。
これは個人主義ではなく、利他の精神に則った「全体をよくする」目標だった。
新日本プロレスはもとより、日本プロレス界に復調をもたらした効果は確かにあった。
また、近年は新日本プロレス内のヒールポジションではなく本隊よりの立ち位置から新日本プロレスを守り、屋台骨を支える存在になっていたし、アントニオ猪木との対談や映画「アントニオ猪木を探して」でのオカダパートから推察するに、オカダからは新日本プロレスを継ぐ意志をひしひしと感じていた。
まさしく、オカダ・カズチカは新日本プロレスの砦になっていった。
我々ファンは、選手としての欲を優先するよりは、新日本プロレスを支えながら、その系譜を継いでいくものとてっきり思っていた。
そんなオカダ・カズチカが、まさか新日本プロレスを退団するなんて…。
特に、近年のオカダの言動とのギャップが大きかっただけに、「オカダが抜けた穴」の経済的損失よりも「オカダが抜けた出来事」自体が衝撃的だった。(時代とともに人間の考えは変わる。「あの時言ったじゃないか」と当時の発言を責めることは野暮だろう)
新日本プロレス退団という決断は、団体を優先しながら盛り上げてきたオカダの「初めてのわがまま」かもしれない。
個人事業主としての数少ないチャンス(この場合は機会というべきか)に賭けたオカダを、我々ファンは快く送り出したいと思う。
プロレスで稼ぐ
オカダは新日本プロレスを世界に押し上げると言ってきた。
新日本プロレスを退団するオカダは、方法論は異なるかもしれないが、オカダが世界のプロレス団体で活躍することで、新日本プロレスの名を広めてくれるだろう。
きっと、ニュージャパンが最高にイカした団体であることを証明してくれるに違いない。
そして、プロレスラーが稼げることを世間に示すことで、新たなレスラー候補生が増えるだろうし、もっと言えばオリンピック級のアマチュア選手のプロレス入りも期待できるはずである。
「プロはお金である」ことを存分に示し、大活躍してほしいと願うばかりだ。
飛び出せ!ニュースター
新日本プロレスの歴史は離脱の歴史でもあった。
長州一派の維新軍団、UWF、橋本真也のZERO-ONE、武藤らの全日本プロレス移籍、藤波の離脱。近年ではBULLET CLUBリーダーの退団、そしてSHINSUKE NAKAMURA。
多くの一流選手らが退団してきたが、それでも新日本プロレスでは新たなスターが誕生し、今もなおレギュラーメンバーたちが輝きを放ち続けている。
ファンが期待していることは、「オカダの穴を埋める新たなスター誕生」だ。
燻っている中堅選手が覚醒するか、ネクストの選手たちが化けるか、はたまた若い芽吹きが飛び級的にリングの中心に躍り出るのか。
オカダは「全然チャンスじゃない」とオカダ流で若手選手を激励しているが、さあこれから誰が飛び出してくるか。
我々ファンの注目ポイントは、オカダの行く末ではなく、現在進行形の新日本プロレスマットである。
これから新しい景色をみせてくれる選手たちに期待したい。
▼参考インタビュー:東京スポーツ
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