【トークショー付き】国立映画アーカイブでディレクターズカンパニー時代の石井聰亙監督『逆噴射家族』を観た!

こんにちは!アツコアツオです!

今回は東京は京橋にある、国立映画アーカイブにて『逆噴射家族』を観てきましたので、紹介したいと思います!

Blu-rayのジャケット

国立映画アーカイブは別の記事で紹介するとしてですね、そこでは映画館のような設備があって、定期的に日本映画を上映しているんですよね。

で、『長谷川和彦とディレクターズカンパニー』っていうプログラムが組まれていまして、ずーっと観たかった『逆噴射家族』をついに観ることが出来ました!

国立映画アーカイブの紹介は別の記事でお届けします!
カルフォルニアコレクションのドデカ看板!

石井聰亙(現・岳龍)監督の作品を見るのは、『狂い咲きサンダーロード』『高校大パニック』『爆裂都市 BURST CITY』に続いて3本目(高校大パニックは2バージョンあるから実質4本目か)。

そして本作は石井聰亙監督のプロデビュー作であり、私の中で初期の代表作である本作を観ることで、マスターピースが揃った!と勝手に感慨深い感傷に浸っております。

そして、毎度おなじみ「アナーキー日本映画史」にも掲載されています。この本ような”自分が映画を観るものさし”があるっていうのはなかなか便利です。

『狂い咲きサンダーロード』が上映される機会は何故か少ない!

プログラムはこちらです。

超短期間のイベントでした。
映画カタログとしても抜群のリーフレット!
人魚伝説も観たかったなあ。
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石井聰亙監督『逆噴射家族』

逆噴射家族
1984年:ディレクターズカンパニー/ATG
監督・脚本:石井聰亙
製作:長谷川和彦/山根豊次/佐々木四郎
出演:小林克也/倍賞美津子/工藤夕貴/植木等

©逆噴射家族/ディレクターズカンパニー/ATG

私はほとんど予備知識なしで映画を観るようにしてるんです。タイトルやポスター、また主要キャストはそりゃ目に入ってしまいますが、内容やストーリーは出来る限り知らないまま映画を観ることがほとんどなんです。その方が驚きや感動があるような気がしてるんです。

このオジサンが重機のようなものを持っている写真は有名ですが、いったいどんなストーリーなのでしょうか!?

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『逆噴射家族』のざっくり(ネタバレ注意)

平凡そうな4人家族が、引越し業者のトラックと共に一軒家に向かうところから物語は始まります。

真面目そうな父親の勝国(小林克也)、テンション高め癖な母親の冴子(倍賞美津子)、東大を目指して受験中の長男の正樹(有薗芳記)、女子プロレスアイドル志望の長女のエリカ(工藤夕貴)たちは、新居で平凡な暮らしをスタートさせました。ちょっと特徴的キャラクターたちですが、どこにでもいそうな平和な家族のように見えます。

引越し当日に冴子は全身にリボンを付けてパッケージングし「これぐらいしかできないから…」と勝国に暗に熱い夜の期待を伝えますが、勝国はタラリといやな脂汗を流すばかり。おばちゃんとはいえ、当時の倍賞美津子ならイケます!(『復讐するは我にあり』の三国廉太郎との風呂場シーンはエロかった!)

病気になった家族

一見平和な家族でしたが、勝国は「家族の病気を治すために団地から郊外へ引っ越した」とらしく、家族を健康にしなければと焦りながら、筋トレなど自己鍛錬を欠かしません。ここで物語の核になりそうな”家族の病気”が口にされます。家族の病気とは?そして勝国が企むこととは?

そんな時、勝国の父である寿国(植木等)が引越し祝いにやってきます。冴子を中心に豪勢な食事やストリップショーなどで盛大にもてなしますが、ジーサンてっきり1泊程度で帰ると思いきや、どんどん荷物や家具が送られてきて、同居していた勝国の兄と喧嘩をして家を出てきたといいます。ジーサン、この家に転がり込むつもりだ!

ノリの良い気さくなジーサンなんですけど、家族からするとやっと団地から一軒家に引っ越したのに部屋が狭くなってしまいますから、だんだんうざくなってきてしまい、ジーサンを追い出そうとします。勝国は実の父親が行き場を失っていることを知っているので、なんとか穏便に済ませられないか…と妙案を思いつきます。ナント一軒家のリビングに穴を掘って地下室を作るというのです!

掘って掘って掘りまくる!

家族の病気が進行していると思い込み、行動を決心した勝国は、バカみたいにジーサンと2人でザックザックとスコップで穴を掘り始めます。ジーサンはどういう意図があってか火に油を注ぐように勝国も盛り上げます。

冴子やエリカは必至で止めますが、翌日には燃料式の掘削機を買ってきて、ますます穴を掘り進める始末。作業途中、シロアリが出てきてパニクった勝国が火をつけて火災騒動になったり、いつの間にやら工事現場の看板や立ち入り禁止の柵まで家に設置してギャグ的な展開が続きます

物語が急に加速し始め、どんどん掘っていきます。オカルティックな手法で受験勉強を進める正樹は「ウルサイ!」と部屋に閉じこもり、冴子は下着で勝国を釣ろうとしますが、効き目なくどこ吹く風で作業を進めました。

勝国の暴走

寝る間を惜しんで掘っていった勝国ですが、しばらくぶりに出社した直後、なにやら妄想にかられ無断早退してしまいます。電車を下車してどこに寄るのかの思いきや、シロアリ駆除剤の販売店!どれだけシロアリに取り憑かれてるんだこのオッサンは!

予定外に早く帰ってくる勝国にビックリした家族ですが、さっそく勝国は掘削作業を再開します。勝国withジーサンの暴走に家族がプチパニックになる中、掘削機が水道管に直撃し、油田でも見つけたのかと噴水のような水が沸き上がります。まさに逆噴射

あきれ果てた冴子は離婚する!と家を出ようとしますが、捨てられたと思ったエリカが自殺未遂し、オカルト勉強法に取り組む正樹も半狂乱で失神します。思い返した冴子、そしてクールダウンした家族でしたが、夜中になってまた勝国が動き出し、家の中から板を張り付けて出入り口を塞ぎ始めます。

家庭内大戦争

何の騒ぎだと起き出した家族に、大事な話があるから食堂に集まるようにと指示する勝国は、「家族みんなが病気になっている」と告白し始めます。

そして、頭をスッキリさせなさいといって淹れたてのコーヒーをふるまいますが、ジーサンは飲んだ直後異変に気付き、ミルクだといって入れた液体がシロアリ駆除剤だったことが発覚。「家族は病気だから、みんなで死のう!」と心中を強要する勝国に、ジーサンは「ビョーキはお前だ!」と観客全員の気持ちを代弁しツッコんでくれます

一様にそーだそーだと家族は勝国を非難します(オカルトに取り憑かれた正樹はマジでビョーキっぽいですが)。家族の病気が末期的であると思った勝国は、例の掘削機などを持ち出して家族を皆殺しにしようとするのです。

冴子は台所で包丁やキッチン用具で武装し、正樹はオカルティックで呪術的な雰囲気で金属バットを握り、エリカは憧れのクラッシュギャルズよろしく女子プロレス水着で闘いのアップをし始めます。そしてジーサンは旧日本軍時代の軍服に身をまとい、勝国との対決に備えるのです。

エリカを襲い正樹を倒し、戦いは勝国優性で進みましたが、ジーサンがエリカを人質に取り降伏を求めます。戦争終結したかのようにみえましたが、とらわれた縄から抜け出した勝国がガス栓をひねりリビング大爆発!

掘っていた穴にぶっ飛ばされてもなお無事だった勝国や不死身の家族たち。

終戦、そして復興

夜が明けたころ、冴子は台所に立ち朝食の準備を始めます。とりあえず腹減ったとばかりに、何事もなかったかのようにちゃぶ台を囲む家族、合流してご飯に味噌汁をすする勝国。みんな狂ってるよ!とツッコミながら大団円か…と思いきや、勝国は何かを思いついたように姿を消します。

戻ってきた勝国はまた例の掘削機を持ち出し、もうやめてと泣き叫ぶエリカをよそに、今度は大黒柱を壊し始めました。まだやるんかい!と観客をしり目に、勝国は決意したように家中をどんどん壊していきます。

次第に家族も家の解体作業に参加して、しまいにはドリフのコントのように一軒がバタンと折りたたむように倒れ、ゴキブリホイホイのようにぺちゃんこになりました。(これ特撮ではなく本物の家で撮影しています)

ラストシーン。空に高架橋が走る何もない更地で家族は暮らし、それぞれの朝の準備を始めるのでした。

アツコアツオ的映画評

この物語、拙い文章ではうまく表現できていないのですが、全編コメディ要素たっぷりで全く殺伐としていません!

トチ狂った勝国との戦闘でさえもピースフルな雰囲気です。穴を掘り始める当たりから急に物語が進み始めて、掘削機を手にした瞬間から映画の暴走が始まるのですが、勝国やジーサン含めて、なんかちょっとズレていて、どうかしている家族同士の壮大な家族ゲンカという印象です。

なんだかノホホンとしているんですよね。シリアス感や深刻さがなく、ヘンな言い方かもしれないですけど、ああ、これはコメディなんだな、と観る者を終始安心させるムードに満ちているというか。

ただ、wikipediaにあることが事実だとして、本作タイトルの由来が”逆噴射”という言葉を有名にした航空事故なんだとすれば、ちょっと受け取り方が変わってきちゃいますね。

また、これまでの石井聰亙監督の作品や作風からすると、暴走っぷりはおとなしい映画として”ちゃんとしている”。あまり奇をてらった展開はなく他のキャストはほとんど登場せず、家族4人+ジーサン+犬だけで展開するとてもシンプルなストーリーです。(ちょっとラストシーン異質な感じですが)

スクラップ&ビルド

家族関係のスクラップ&ビルドの物語、とでもいえばよいでしょうかね。家族の病気を良くするために団地から一軒家へ移り住んだわけですが、作り上げたものを壊すことで家族の絆をとり返すラストシーン。何もない青空の下で平和な家庭を取り戻すっていうのは皮肉が効いています。

勝国のいっていた病気とは何だったんだろうか?そんな病気めいた家族には見えなかったんだけど、勝国が病気だったということ?それとも、いわゆる<自分勝手・刹那的・家族への思いやりがない>といった精神的な現代病のことだったんだろうか?

勝国は家族を尊重しやりたいようにやらせる、とても理解ある父親に見えたんですが、なにが彼をプッツンさせたのかがわからなかったな。

魅力的なキャラクター

植木等のテキトーノリノリじーさんがこのストーリーのいいスパイスになっていますね。彼のおかげでいい塩梅に、軽くてテンポよく進行していくという感じ。家族戦争ではエリカを亀甲縛りに仕上げますが、どこでそれのやり方を覚えた!?物語に関係なくツッコミみたくなりました。大小の細かいギャグを連発するジーサンで観客の笑いを誘い続けましたが、私がみた劇場でもけっこうウケてましたよ。

また、亀甲縛りにあう幼き工藤夕貴も、そちらの趣味がある方はどうぞ…。家族戦争では女子プロレス風の水着になるのですが…。これはあなた自身の眼で確かめて下さい

引越ししてきた正樹の部屋に乱雑に置かれた『ムー』を私は見逃さず只者じゃないなと思ったんですけど、想像以上にぶっちぎったオカルトマニアでした!ピラミッドパワー!

そして本作の原案は「おぼっちゃまくん」の小林よしのり。道理でご機嫌なギャグが続くわけですな。

まとめ

いかがだったでしょうか?

物語の起伏はあるものの、全編ギャク展開でひどい暴力シーンなし/エロシーンなしなので、安心して観られる作品と思います。

これまでの石井聰亙監督作品とは違って、異質な展開が少ないため、とてもわかり易い内容ですので、興味がある方はぜひ観てほしい一作です。

※アツコアツオ的には『狂い咲きサンダーロード』がお気に入り。いつか劇場で観てみたい!

石井岳龍監督のトークショー

今回、とにかく『逆噴射家族』が観たくて、国立映画アーカイブの上映タイミングで都合をつけてチケットを購入したのですが、ナント上映後に石井岳龍監督のトークショーがあるというではありませんか!(あとで気づいたんですがトークショー付きチケットは1000円と通常会よりも割高だったんですよね)

私は監督作品に詳しいわけでもマニアでもないんですが、映画好きなんだから楽しんだもん勝ち!というミーハー根性でチケットを購入しました。この手のトークショーに参加するのは初めてだったものですから、撮影の裏話や解説などが聞けるのかな~と想像していたんですけど、これまたナント!

緊急ゲストで長谷川和彦監督も登壇されて、御両名の思い出話が中心に進行しました。

おお!ゴジだ!(ゴジは長谷川監督のニックネーム)

※写真向かって右の長谷川監督は『青春の殺人者』『太陽を盗んだ男』のその時代の邦画を代表する超名作の監督です。

トークショーは撮影OK、ネット拡散OKとのことでした!

本作はディレクターズカンパニーという監督集団の作品なのですが、その時代の思い出話や石井監督をとにかくプロにしたかった話などをお話しされてました。

この作品について、長谷川監督は今回のイベントを機に本作を観たらしく、「ラストシーンは逃げているようなオチに見られるかもしれないけど、それまでに家族をしっかり描いているからそう見えないんだよな」といったことをおっしゃっていました。なるほど。見方によってはちょいと卑怯なオチにもとられかねないですもんね。観客に向かって、「このラストシーン好きな人」「嫌いな人」と挙手を求められました(笑)

石井監督からは「地球は家族というメッセージ」といった趣旨のコメントがあり、本作のシナリオを完成させるのに2年かかったともおっしゃっていましたね。

スペシャルゲスト

長谷川監督には、当然初めてお目にかかったんですが、とにかく感覚が若い!と思いましたね。撮影した写真はフェイスブックにぜひ送ってねとか、映画のネタも大募集・自分なんて…と思わなくていいから送ってほしいなど、ちょっと癖のあるおじさんのような雰囲気ですけど、ファンに対してすごくフレンドリーで垣根がない。

死ぬ間際にまた映画を撮りたい、過去の2作品は被爆の影響でもうすぐ死ぬと思ったから撮ったけど、なかなか死なない。そろそろ老いもあるから、来年には映画クラインクインするぞ!まだ内容決まってないけど。など意気込んでおられました。

トークショーが終ったあと、観客に向かって「飲みに行くぞ!ひとり1000円でいいぞ!行きたいやつは表で集合!」と驚きの発言。そんなにゴジは近しい存在なのか!?

私は怖気づいていけなかったんですが、こんなときハイハイ~て行けてしまう強心臓が欲しいとつくづく思った夜なのでした。

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