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『バーリ・トゥードに挑んだ男たち』

令和の世から消えた言葉
「バーリ・トゥード」というポルトガル語にゾクっとするプロレスファンはかなり古参の部類だろう。
バーリ・トゥード=何でもありという意味を指すそれは、現在ではMMA(ミクスドマーシャルアーツ)という呼び名が一般的だ。日本語でいうと総合格闘技とか“総合”が一般的だろう。
かつて「何でもあり」だったものはルールが整備され競技化し、野蛮さを残しつつもずいぶんとスポーツライクなものに進化を遂げた。
本書はまだルールや試合形式が画一的ではなかった時代に、プロレスラーたちが「真剣勝負」に挑んだ総合格闘技黎明期、2000年に発刊されたムック本である。
主要コンテンツ
・総合に挑んだプロレスラー特集
桜庭、船木が振り返るVSグレイシー
勝利を掴んだ男たち:田村、藤田、高阪、アレク、高橋義生
安生が振り返る“道場破り”
・プロレスラー総合熱戦譜
・レスラーインタビュー:プロレスラーが語る「何でもあり」
・プロレスラーVT全記録
最強神話という幻想
本書執筆時は2026年、本書発刊は2000年。いまから26年も前のことである。
前田日明風に言えば「時間という名のタイムマシン」に乗って批判することは簡単なのだが、かつて「プロレスラー最強神話」なる幻想を抱かせる時代が確かにあった。
高田がヒクソンに敗れれば「よりによって一番弱いやつが出ていった」と業界を守る発言があったし、桜庭旋風や藤田の活躍を見ると「彼らでこの実績なんだから三沢や中西だったら楽勝や!」と我々は本気で信じていた。加えて、「プロレスラーはかましてナンボ」な時代でもあった。最強幻想を抱かせるレスラーがたくさんいた。
しかし答えは歴然で、格闘技エリートだった永田・中西・石澤・小原など総合格闘技でいとも簡単に敗れ去ると、ストロングスタイルの幻想さえももろくも崩れ去った。
プロレス×総合はまったくの別物
2000年という時代背景を踏まえたときに、本書の立ち位置は実に面白い。
レスラーインタビューで登場する馳・ライオネス飛鳥(女子総合経験者)・大仁田ははっきりとプロレスと総合格闘技は異なるもので、勝負論に徹する総合にプロレスラーが挑むことに既に否定的だった印象を受ける。
にもかかわらず本書巻末は「プロレス最強幻想をくすぐる戦士たち」として「この選手ならいけるんじゃないか?」という牧歌的な記事もある。中西や谷津、小原も挙げられているからあながちこの後の総合シーンを予見しているともいえるが、結果はご存じの通りである。
プロレスラーが総合に挑んだことがいかに無謀だったか、まるで古文書でも読んでいるかの感覚に陥る。そしてそんな時代であってもプロレスと総合は別物だとレスラー自身が自認していたこともよくわかる。
しかし、歴代のプロレスラーが築いてきた最強幻想は根強く、われわれファンは淡い期待をしてしまった。
プロレスラーに称賛を
また、バーリ・トゥード黎明期からPRIDEブーム直前までの日本人総合戦績も資料価値がある。今ではYouTubeにさまざまな動画がアップされているため、それらの試合も視聴する環境が整っている(違法動画を推奨するつもりはないが、やはり歴史的な試合は後世に伝えていきたいものだ)。
Uインターを干された田村が背水の陣で挑んだパトスミ戦、橋本と抗争中に小川が挑んだグッドリッジ戦、喧嘩最強のケンドー・ナガサキの壮絶KOなど…無謀な挑戦と切り捨てず、今となってはとにかくプロレスラーの勇気を讃えたい。(本書発刊ののちの出来事になるが、野心がありつつも焚きつけられて出場したミルコ戦、闘魂に頭を下げられてしぶしぶ出場したヒョードル戦をこなした永田も敬意を表したい)
なお、皮肉では決してないが、パンクラスの試合があってリングスの記事が極端に少ないため、ガチンコ特集本としても信頼度が高いと思われるもちろん高田コールマンは存在こそ抹殺されていないが記事はない。
内容★★★★☆
赤裸々★★☆☆☆
ケーフェイ★☆☆☆☆
レア度★★★☆☆
必読度★★★☆☆
一言コメント:
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