【プロレスコラム】第3回「日本プロレス史上最高のリアル・ギミックレスラーへ!」

こんにちは!アツコアツオ★ランド編集部です。

当ブログ管理人であるアツコアツオによるプロレスコラム。

第3回の今回は「日本プロレス史上最高のリアル・ギミックレスラーへ!」をお送りします。

それでは、どうぞ!

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ギミックレスラー

ギミックー
プロレスラーの触れ込みのこと。設定された履歴や出身などのこと。

Wikipediaから引用

プロレス界では、古くからプロレスラー個人のキャラクターを演出するために、様々な設定が用いられてきた。

理由がないご都合的なキャラ設定もあれば、実際の出自やキャリアを誇張するような設定もあったが、こうした演出はリアルとフェイクの狭間で揺れ動くプロレスのいかがわしさでもあり、また面白さでもあるだろう

終戦後は、ドイツ人でもないのにヒールレスラーに箔をつけるために「ナチスの亡霊」のような出身を偽ったギミックが多用されたし、日系レスラーは真珠湾攻撃を彷彿とさせるような「卑怯な手口」を模したキャラ設定がなされていた。

いずれも興行を盛り上げるための仕掛けであり、リング上の男たちが何者なのか、観客に感情移入させるための演出だ。

でたらめ(プロレス的解釈でいうと最高と言い換えた方が良い)な演出を挙げると枚挙にいとまがないが、現代では大小の差はあるもののキャラクター設定がないプロレスラーなどほとんどいないだろう

獣神サンダー・ライガーやザ・グレート・サスケなどのマスクマンは(わざわざ言うのもおこがましいが)すべてギミックであるし、グレート・O・カーンはモンゴリアンでもなければ帝国の王でもない。また、新崎人生のお遍路ギミックは本人が徳島出身ということも相まって、インディ系レスラーでは最高峰のギミックであるが、当然八十八か所の巡礼者ではないわけだ。

多くの場合は自身の変貌のきっかけや会社の売り出し、またストーリーの関係でギミックを与えたり変えていくものだが、かつては実際に起こった出来事を誇張してギミックに利用する選手も多かった

本コラムではこのパターンを掘り下げてみたい。

いくつか例を挙げよう。

懐かしのリアル・ギミックレスラー

キラー・コワルスキー

“殺人狂”キラー・コワルスキーは試合中にニードロップで対戦相手の耳をそぎ落としてしまったアクシデントをきっかけに、リングネームを「キラー」と変え「耳そぎ男」へと変貌した。

さらに、日本マット界では「耳の肉片を思い出すため菜食主義者になった」という虚偽のエピソードまで加えられる始末。

世界中に情報が飛び交う現代では考えられないが、そうした日本流の演出がさらにプロレスが持つ神話性に勢いをつけたことも事実だろう。

フレッド・ブラッシー

“銀髪鬼”フレッド・ブラッシーは日本プロレス参戦時、得意の噛みつき攻撃で対戦相手を大流血に追い込み、そのテレビ中継をみていた老人11人がショック死するという事件が起きた

ブラッシーは元々噛みつき攻撃が得意であったが、この事件はブラッシーの凶悪性に加担するには十分な出来事だった。さらに、11人の老人が亡くなった事件を聞いたブラッシーは「もっと殺すつもりだった」とヒールに徹したコメントを残している(と同時に、メディアがいない場で黙祷を捧げたとも言われている)。

ブラッシーと言えば、噛みつき攻撃の威力を誇張する「やすりで歯を削る」アピールも有名だが、実際に起きた悲劇すらも自身のギミックに加えて、より強大なインパクトに変えていくプロ根性に敬服である

スタン・ハンセン

スタン・ハンセンと言えばウェスタン・ラリアット。(特に日本)プロレス史において革命的な技であろう。

ハンセンの日本マット界でのキャリアは全日本プロレスの印象が強いが、初来日時は新日本プロレスに参戦したが、ラリアットは当初「ブルーノ・サンマルチの首を折った」と流布され、カウボーイがブルロープを投げて牛や馬に引っ掛けるように相手の首を狩る荒々しさと相まって、殺人的な攻撃力を持った必殺技と認知されるに十分なエピソードを引っ提げて来日した。

こちらも「実際にサンマルチノの首を負傷させたのはボディスラムの失敗」というのが定説だが、リング上の事故(しかもしょっぱさ故の)すらギミックに加えてしまうハンセンとマスコミにアッパレである

このように、架空の演出ではなく実際に起きた出来事を自身のキャラ設定に加えていくギミックレスラーもたくさんいたわけだ。

田口隆祐という男

かなり遠回りになったが、ここからが本題。

今回は新日本プロレスのジュニアヘビー級戦士、田口隆祐選手(以下、敬称略)について考察していきたい

田口は2002年に新日本プロレスでデビュー。同期は後藤洋央紀や中邑真輔、YOSHI-TATSUなどで、2024年現在のマット界の第一級で活躍するそうそうたるレスラー達だが、中邑に言わせると田口は新弟子時代の練習メニューを楽々とこなしていたという。肉体的にはすでにエリートだったことをうかがわせるエピソードだ。

田口はデビュー後すぐにBEST OF THE SUPER Jr.に出場し、ヤングライオン杯を制するとメキシコへ海外武者修行に出発。帰国後にリングネーム変更などキャラクター的なギミックを与えられることはなかったが、テーマ曲とタグダンス、ファンキーウェポンなど現在も続くイメージはすでに出来つつあった

その後、IWGPジュニアヘビー/タッグ/BEST OF THE SUPER Jr.優勝など、若いキャリアで主要なタイトルを制覇

プリンス・デヴィット(WWEではフィン・ベイラー)とのタッグチーム:Apolo55ではジュニアヘビータッグの試合ながら東スポプロレス大賞の年間最高試合賞を受賞

順風満帆なプロレス人生。間違いなく、キャリア・実力ともこれ以上ない実績を残したジュニアヘビー級戦士と言えるだろう。実績だけでいうと獣神サンダー・ライガーをも超えたと言っても過言ではない。

一方で、田口には何か足りない…。

全然ファンキーじゃない…。

そう感じていたのは私だけではないはず。

ジュニアヘビー級完全制覇のキャリアハイレスラーは、この後KUSHIDAとの抗争を経て覚醒していく。

一流のインスパイア

KUSHIDAを破り69代目のジュニアヘビー級王者に就くと、シックスナインチャンピオンと自称。

その通りで間違ってはないのだが、このことをきっかけにリミッターが外れたような下ネタ発言を連発。「セイシをかけた戦い」など迷フレーズも登場した。

オーマイガッ!から着想を得た「オーマイ&ガーファンクル」(サイモン&ガーファンクルのオマージュなのだろう)というキメポーズを開発し、得意技のアンクルホールドは「オーマイ&ガーアンクル」と命名。

このころから、次第にパクリ芸をも身に付けていき、同期中邑にインスパイアされた「イヤァオ!→オヤァイ」「滾る→ギタる」「ボマィエ→ケツイェ」などポージングや必殺技もパクっていく(どうやらパクりではなく本店と支店の関係性らしいが)。

他にも本間朋晃が対戦相手にいる場合のみ発動する技「電動こけし」や棚橋が試合後のエアギターを弾くときのみ発動する「尺八」など、パクリと下ネタの掛け合わせに拍車をかけていった。

また、サッカー日本代表の応援に着想を得た「タグチ・ジャパン」なるチームを結成。

自身は田口監督と名乗り、野球やラグビーなど国際試合が行われる際は、それらのポーズやボールなど持ち込み汎用性が高いユニットを結成。チームメイトを入れ替えながらNEVER6人タッグ戦線を盛り上げていった。

対戦相手をおちょくるコスチュームやポージング(EVIL風死神コスチュームなど)は対戦相手の動揺を誘う効果もあろうが、オリジナリティという意味では少し乏しさを感じることも事実。

このように、田口はすでに「存在するもの」をパクり…ではなくインスパイアされたものから自身のギミックに加えていくのが得意(?)なレスラーで、本人曰く「0から1を作り出すことは苦手で、1のものを膨らますのが得意」(趣意)なのだそうだ。

そして、田口はついにリアル・ギミックレスラーの萌芽を手に入れることになる

バイク事故

突然、田口選手がバイク事故を起こしシリーズ欠場するというニュースが舞い込んできた。

以下、いくつかのポストを引用する。

どうやらご本人に命に別状はないらしい。そして、事故の原因は「飛び出してきた犬を避けるため」だったという。

数日後にはドクターのGOも出たようで、リング復帰に向けて順調な回復をみせている様子。

日本プロレス史上最高のリアル・ギミックへ

(もちろんご本人の命に別状ないこと、そしてリング復帰できる見込みであることが分かった上で、だが)

私は「田口はついにリアル・ギミックを手に入れた!」と思った。

近年はパクり、いやインスパイア系レスラーだった田口だが、犬を避けるため自分の身を挺してバイクを横転させ事故ってしまった優しい男だったのだ。

このリアルをギミックに使わない手はないはずだ。

田口の復帰戦は、(難しいだろうが)その実際の犬と戯れるシーンを撮影しながら「僕にはまだまだ守るものがあるんですよ」などと言いながら、決しておちゃらけではない真剣な眼差しで、守り抜いたその小さな命を抱きしめ煽りVTRが必須である(芝居をしろというつもりはないが、田口は抜群に芝居が上手い)。

入場時は犬のぬいぐるみを抱きしめていて、さっそく復帰記念の新作Tシャツを身にまとっている。

Tシャツには「犬を抱きしめる田口」が描かれていて、モンテーニュの名言「世の中には勝利よりも勝ちほこるに値する敗北がある」という一文もある。

もちろん、これは“元祖犬を助けたレスラー”、テリーマンのインスパイアだ。ついでだからゆでたまご先生に許可をもらって、キン肉マンとのコラボ商品にしよう。

それから、スペース・ローン・ウルフ時代の武藤を模して、ライダースーツを着てフルフェイスのヘルメットを小脇に抱えてくるのはどうだろう(スーツには610ならぬ69の文字)。

令和の今なら40年の時を超えて、ヘルメットメーカーのスポンサーがつくかもしれない!

次々浮かぶ妄想

試合が始まっても愛犬ギミックは興行を盛り上げる上で大いに役に立つだろう

例えばバレットクラブの面々がその犬のぬいぐるみにいたずらしようとしたらば、身を挺して犬を守る。ぬいぐるみなのに。

また、犬のぬいぐるみを場外に放置したって良い。田口は一目散に犬を助けにリング外へダッシュするだろうし、あえなく場外20カウントでリングアウト負けになったとしても、勝利よりも勝ちほこるに値する敗北があるのだ。

なにせリアルなんだから、これほどまでに説得力のある犬への愛情はないだろう。

奇しくも、現在新日本プロレスマットで活躍しているバレットクラブは「WAR DOGS」なるニックネームが付いている。軍用犬なんかをイメージしていると思われるが、愛犬ギミックの田口は「タグチ・ジャパン・ラブドッグス」とかちょうどよい名前を付けて対抗するのだ。

ここまでやれば、リアル・ギミックとインスパイア系レスラーの面目躍如だろう。(かつて存在した狂犬隊を模して愛犬隊…はちょっとストレートすぎるか)

かつてのWWEであれば、さらに動物愛護ギミックまで昇華してしまうんだろうが、そこまでいくとかなり政治的な主張が強くなってしまうしそのあたりのバランスは必要だろうが、いずれにしても、このリアルアクシデントを利用しない手はない

頑張れ田口選手!

と、少しおふざけが過ぎたかもしれないが、今回の事故をきっかけに、田口がひと皮もふた皮もズルムケになってリングに復帰することを祈りたいところ。

振り返れば、何でもこなすエリートレスラーを脱し、変態(変わり続けるという意味でヘンタイではない)レスラーというキャラクターを確立した田口だが、今回の出来事をさらにキャリアにイカしてもらい、レスラーとしてもう一花咲かせてほしいと願っている

末筆ながら、これからも田口隆祐を応援していきたい。

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