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ファクトチェックとリテラシー
世の中の出来事には必ず複数の視点が存在する。
一方通行な視点だけでは事実関係は把握できないし、何が正しくて何が間違っているか判断してはいけない。
世界中で起きている戦争や紛争にだって双方の言い分があるはずで、(絶対的に殺人は正当化できないし、仕掛けた側を看過できないことは前提として)一方的な意見だけでは真に物事を理解することはできない。
人間が2人いれば双方の意見が食い違うことは当然であって、こちら側は『6』と見えていても相手側からは『9』と見える。必要なのは、多くの人々は自分が“見たいように”見ていることを踏まえて、互いに理解することを目指すことだろう。
特に日本の報道においては、我々が事実を把握し多面的に情報を整理し理解することが必要だ。
兵庫県知事のパワハラ報道に端を発したメディアの報道は記憶に新しい。(私はパワハラがあったかどうか、けしからんかどうかは言及しないが)印象操作も甚だしい一方通行なメディア報道に対して、SNSや動画投稿サイトで知事支持の意見や「なぜ知事が追い込まれているか」を明らかにするような援軍も登場し、既存媒体はオールドメディアと揶揄されてしまった。
旧態依然のメディアは「報道しない自由」や「したい報道しか報道しない」し「報道したいように報道し世論を誘導する」ことが公然と明らかになり、本当にその報道が事実なのか、我々自身に理解するリテラシーが求められていることを突き付ける格好になった。
今回紹介する本書『ザ・芸能界』は、そうしたオールドメディアが幻想に幻想を塗り重ねて、業界全体が実体のないモンスターに育て上げてきた芸能界のドンへの直撃取材を著者がまとめた一冊である。
我々が知っている「一方通行」な知識に対するドン自らの告白であるから、少なくとも自分の理解や認識が事実に即して合っていたのかどうか、見つめなおす一助になるだろう。
ザ・芸能界
というわけで『ザ・芸能界』。
一見、吉田豪が扱いそうなインタビュー本なんですけど、内容は至って硬派。
吉田氏の「聞きだす力」による、圧倒的な下ごしらえと知識で取材対象に懐柔しつつキワキワを責めていくUWF的スタイルとは異なり、取材事前にテーマを対象者に伝えたうえで、事実関係を明確にしていくスタイルは好感が持てます。
読み進めていくと、自分自身の勝手な決めつけや思い込みがあったのではないか?と立ち止まって考えることがたくさんありました。
取材対象者が嘘を言っているようには思えませんが(もちろん嘘かもしれないし盛っているかもしれませんが)、少なくとも今までモヤや霞がかっていた芸能界のドンの人柄を垣間見ることができますし、それをもって自分で改めて判断する材料にするには十分な内容です。
ただ、全体を通して言えることですが、やはり芸能界は特殊な世界だということ。
表現は悪いですが、やくざや水商売に近くて“良い意味で”(ここ重要)法律や契約だけでは生きていけない世界なんだなあ~と。明らかに会社員のような私の住む世界とは違っています(笑)
そういう意味では芸能人というのは特別な存在なのですが、時代がそれを許さなくなっているという背景がありますし、個人的には芸能界に清廉潔白を求めてどうする?というのが私の考え。
『噂の真相』的というか『ナックルズ』『サイキック』的な芸能界マニアの方には絶対にオススメ。キラキラしたショービズ的芸能界が好きな方はオススメしません(笑)
本書は複数の「芸能界のドン」たちが登場します。
サイキッカーの私は、とにかくバーニングの周防氏の章が読みたくて仕方がありませんでした。
誠!なに言うたんや!バーニング!
関西で絶大な人気を誇った地方ラジオ番組『誠のサイキック青年団』は、不自然な形で番組が終わることを告知しただけでなく、予定されていたイベントの中止、そして放送予定の最終回を迎えることなく唐突に終了した。
そして、パーソナリティだった松竹芸能所属の北野誠氏は謝罪会見を開き、謹慎処分を受け入れて芸能界から消えた…。
番組自体が宗教・政治・経済・芸能・プロレス・ギャンブルなどの裏ネタ裏モノを中心としたサブカル番組であったが故に、不自然な終了には巨大な圧力があったことを匂わせた。
根強いファンたちは宗教団体や大手芸能事務所から潰されたのではないか?などと、まさに番組のコンセプトであった「妄言」「決め打ち」をすることで謎に迫ろうとした。
そこで、冒頭の故・桂ざこば氏のラジオ番組でのコメントである。
大手芸能事務所「バーニング」が北野氏の発言を危険視し圧力をかけた、と想像するに十分なインパクトを放ったこの一言は、ちょうど数か月前に『サイキック』本放送で「バーニングがサザンオールスターズの原盤権を保有している」と発言したことがあったため、妄想を裏付けるには説得力があるざこば氏の発言だった。
しかし、復帰した北野氏は「ネットではいろいろな説が出回っているがいずれも真相ではない」と言った趣旨の発言をしている。
そして、本書冒頭に登場するのが、バーニングの周防氏である。
ドンの素顔

インタビュアーである著者・田崎氏のインタビュー要旨は2点。
①郷ひろみ移籍の経緯
②なぜサザンオールスターズの音楽出版権を持っているのか
周防氏は明確にその2点に関する事実を語ってくれています。(サイキック終了やレコード大賞を金で買った、など噂レベルの話題ではなく事実関係確認に終始)
本章を読めば、強奪や強欲のそれではないことは明白ですし、肉声を聞いたこともなければ写真・動画など姿を見たこともない、「膨れ上がった虚像」のみが存在し勝手に恐れられていた謎のドンの印象はずいぶんと変わりました。
ある意味で、メディアや芸能関係者(含む自称業界関係者)は実態が掴めない謎の威光を利用して、氏の存在を膨張させ利用してきたのではないでしょうか。
ただ、もちろん芸能界の有力者であることは間違いなく、その栄華には様々な力技もあったのかもしれません。
文中に「男になる」という表現が出てきますが、なるほど今の価値観では計り知れない当時の芸能界特有の空気感も知ることができますし、先ほども触れましたが芸能界は特別な世界なんでしょう。
ただ、全体的な印象は「そこまで恐ろしい事務所/ドンなのかな?」と改めさせられましたね。
その他のドンたち
周防氏ともう1つ、私は元吉本興業/大崎氏の章も大変期待していました。
なにせ私はダウンタウンの大ファンなので、大崎氏とダウンタウン(とりわけまっちゃん)の関係が深いことを知っていますし、眼鏡に陰毛が付いていたことも『放送室』で聞いていました(笑)
ただ、この吉本興業の章は個人手にはあまりハネませんでしたね。吉本興業と暴力団の関係などは昭和の興行会社には当然のことで公然になっていますし、カウス氏暗躍の件もいまいち判別しない。なんというか、究極的な悪役がいないというか。
本書でも「吉本の歴史は権力闘争の歴史」とまとめられていますが、それぞれの立場の中で各々の思いがうごめいているというか。そりゃ100点満点の人間なんていないんですから、蹴落としあいや政略はどこの会社(特に大会社)でもあることじゃないですかね。
一方で無関心ゆえに面白かった章はレプロが関係する「のん騒動」ですね。
「能年玲奈が大手芸能プロダクションにいじめられている!」
果たして本当にそうなのか?あなた自身の目でぜひ確認してほしい。
思っていた通りの芸能界か、それともガラッと印象が変わるか。芸能ツウの方はぜひ手に取ってみて下さいね!
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