こんにちは!アツコアツオ★ランド編集部です。
幣ブログ管理人であるアツコアツオによるプロレスコラム。
第2回の今回は「女子プロ界に万里の長城を築くか!?」をお送りします。
それでは、どうぞ!
マリーゴールド
黄色のマリーゴールドには3つの花言葉が選ばれています。
【可憐な愛情】【健康】【下品な心】
オレンジ色のマリーゴールドの花言葉は、【真心】【予言】
東京寿園ホームページから引用
かねてより噂されていた、スターダムの創始者ロッシー小川氏による女子プロレス新団体、「MARIGOLD(マリーゴールド)」の旗揚げが発表された。
▼東京スポーツ記事はコチラ
団体名の由来は、小川氏が「あいみょんが好きだから」という理由らしい。
スターダムから派生した団体という意味では、花言葉が指す【可憐】さや【健康】的な美を追求する一方、数か月前からリング外で賑わせていた退団騒動の噂や引き抜き工作疑惑などは、【予言】や【下品な心】という意味にも相応しいかもしれない。
小川氏の新団体には元スターダム選手や古巣・全日本女子プロレスの生き字引、そしてフリーの選手らが集まった。
▼旗揚げ記者会見はコチラ
気になる移籍の理由は不明
スターダム退団騒動から大量離脱も懸念されたところだが、ここはスターダム側が土壇場で踏ん張ったとみるべきだろう。
蓋を開けてみれば、スターダムの契約を満了し更新しなかったのは、ジュリア、林下詩美、MIRAI、桜井まい(麻衣に改名)、そして新人の弓月(改名しビクトリア弓月)の5選手。
エース級の選手を数名揃えたのがやっとという印象だ。
突然の大会開始時間変更(牛久事件といっておこう)など、ずさんな管理運営が問題視されていたし、リング内ではストーリーラインから離れたような、少し猥雑で唐突な試合形式などもあり選手からは反発があったものとされるが、とはいえこの造反劇の真実はわからないし、結果的に小川氏についていったのは先の5選手に留まった。(小川氏の囲み取材によると、解雇される直前もマッチメイクに関わっていたという)
また、全日本女子プロレス~スターダム旗揚げ時に苦楽を共にしたであろう高橋奈七永、そして偽中野たむとしてスターダムマットに参戦経験がある石川奈青も入団が発表された。
彼女らが小川氏、そして新団体に何を期待したのかは、残念ながら旗揚げ発表会見で語られることはなかったが、やはり「ここで戦う理由」は語ってほしいポイントであろうし、リング上で答えを出してくれることを期待したい。
ジュリアは明らかにWWEを見据えているため途中離脱は想像の範囲だろうが、その他の選手は全米巨大マットを見据えた行動なのか、それとも小川氏に対する恩義や忠誠心なのかはわからない。
仮にも業界最大のスターダムを退団してまで入団する価値がある新興団体なのか、我々ファンはじっくり見定めるしかないだろう。
旗揚げ前から昭和プロレス
小川氏は旗揚げ記者会見で「来年は昭和100年、昭和生まれなので昭和の面白いエッセンスをスパイスとして注入していきたい」(趣意)と語った。
なるほど、マリーゴールドは昭和のプロレス再興を目指していると考えれば合点がいく。
団体への不信を好機と捉え、所属選手に退団を促し自身の新団体へ勧誘したと疑われた小川氏の行動はまさに昭和プロレス的クーデターだし、アングル丸出しで参戦を直訴した元アクトレス勢も、所属団体と選手の個別契約がなされておらずいくら契約上問題がない行動だったとしても、小川氏に賛同する決起であるのは間違いないことで団体(業界といってもいいかもしれない)に対する裏切りであるのは間違いないだろう。
時としてプロレス界ではこうした不義理が幅を利かして、またファンがそんな行動に熱狂してきたことも事実だ。
しかし、令和の時代に、現代の価値観ではこんな行動は受け入れられないのではないか?
「アントニオ猪木と前田日明は何をやっても許される」という言葉を聞いたことがあるが、コンプライアンスや道義的責任が叫ばれ、日々価値観のアップデートが起き続けている現代において、今回の行動を支持するプロレスファンは少ないのではないだろうか。
いや、「プロレス界に品行方正を求めてどうする!」という昭和プロレスファンの方もいらっしゃるだろう。
となると、小川氏の言う<昭和プロレス経験者による昭和プロレスの復活>はベテランファンの賛同を得る行動かもしれない。
ある意味での猪木イズム、あえて新間イズムと言った方が良いかもしれないが、小川氏が「女子プロレス界に万里の長城を築くことができるか」。昭和プロレスの逆襲を果たせるか、注目していきたい。
▼マリーゴールド公式ホームページはコチラ
スターダムの方が一枚上手
今回の旗揚げ会見をみた印象は、一言でいうと「時代錯誤」だった。
ポジティブに言うと「昭和プロレスの逆襲」なのだが、団体設立の経緯や元アクトレス勢の出来レース的参戦表明は、やはり今の時代には合わないのではないか、というのが率直の感想。
そこで「はっ」と気づいたことがある。
それは古巣スターダムの時代を読むチカラだ。
というのも、今回スターダムから主力5選手が退団することになったのだが、退団する選手、そしてその選手にゆかりのある選手へマッチメイク的な配慮がなされていたためだ。
退団に向けて、所属ユニットのラストマッチ、元パートナーとの再結成、弓月に至っては憧れの存在だったという岩谷麻優とのシングルマッチまで組まれていた。個人的には「いい大掃除ができた」と見栄を切っておけばいいと思っていたのだが、団体ができる最大限の送り出し方といっても良い待遇だったと感じた。
団体からするとライバル団体に移籍することが明白な選手たちに対して、マッチメイクを冷遇したり、そもそも試合を組まないことだってできたし、時代が時代なら制裁マッチだってあり得ただろう。
しかし、スターダム側(ブシロード側といった方が良い)はそんなことをしてもファンに見透かされることは知っていたわけだ。
世間はもうすでに清廉潔白を求めるホワイト社会になっていて、最先端の時代を読むチカラがブシロードにはあった、とみるべきだ。
異例の厚遇で送り出した団体側は、リング上で退団者にしっかりとサヨナラができる環境を作ることをファンが望んでいることを理解していた。しっかり送り出してあげることが、自団体・残留選手・ファンのメリットになると確信していたはずだ。
退団者に対して「いつでも戻ってくればいい」とコメントした選手もいたし、本音はどうあれすでに退団者にも気遣う配慮をみせたブシロード側は、昭和プロレスの対局あり、アンチテーゼでもあったのかもしれない。
そういう意味ではブシロード側は令和の価値観を掴んでいるし、今を生きる興行会社としては新団体より一枚上手だったと評価できるだろう。
旗揚げ興行は絶対に見るべき
はっきり言って、5.20後楽園の旗揚げ興行は絶対に見に行った方が良い。
注目は、元スターダム勢の新天地?元アクトレス勢の“プロレス”参戦?それとも禁断のカードに期待?
私の視点はいずれとも少し違う。
私は今後そう易々とプロレス新団体の旗揚げなどない、と踏んでいる。つまり、そういう意味で我々は「歴史の目撃者になる」べきだということだ。
かつて(あえて昭和のと言った方がいいかもしれないが)プロレス団体はある者は強さを、ある者は理想や信念を掲げて貫き通すために、独立してプロレス団体を旗揚げしていった。
しかし、令和の現代において、悲しいかなプロレス自体が世間に訴求するパワーは既にないと感じている。それはネガティブな意味ではなくて、プロレスを楽しむ価値観が変わったということだ。
考えてみれば興行会社なのだから当たり前だが、どうやって客を入れるか/どれだけグッズを売るか/いかにしてネット契約者数を増やすか…プロレス団体はどうやってビジネスを成立させるかを集中的に考えている。
「ストロングスタイル」「王道」「エンタメ」「ルチャ」など、団体によっては多少の味付けや特徴は違うが、興行論として目指すべきところは各団体一致しているような気がする。
「ガチンコで誰が一番強いか」を観客は求めていないし、団体側もそれを売りにしているわけではないし、男子プロレスはもうプロレス=ビジネスとして割り切っているのだ。
プロレスのビジネスがどうやったら上がっていくかを考えたときに、今更新団体の旗揚げという発想にはならないし、個人事業主の視点でみると他団体や海外への移籍を模索していくだけだろう。
一方で、女子プロレスはまだ「ビジネス」以外で成立しているケースがままあるのかもしれない。
太客やタニマチが付けば興行論以外で勝負(生活)できる可能性もあるだろうし、性差がない世の中にはなったとはいえ、女性はまだ家庭に入る選択肢だってある。
繰り返すが、男子プロレスでこれだけの規模の新団体旗揚げが行われることはもう考えにくい。
この規模の「プロレス団体の旗揚げ戦」を見る機会はもしかすると最後かもしれない。
そういう意味で今回の旗揚げ戦は絶対に見るべきなのだ。
弓月のレスラー人生に責任を
小川氏は、マリーゴールドにスポンサーはついておらず、自身の老後の蓄財で運営していくと語った。
旗揚げの後楽園ホールを皮切りに、以下の通り全国規模のツアーが予定されている。
こうした巡業には相当な経費が掛かるし、また会場を押さえる手付金なども必要かもしれない。(言い方は悪いが、新たな会社を立ち上げた時点では何の信用もない会社なのだ)
大会はサイバーファイトグループが手掛けるレッスルユニバースが配信するというし、旗揚げ記者会見の直後には同グループが運営するプロレスリングノアのマンデーマジックにマリーゴールド勢が乱入。
旗揚げ間近の経済的事情をカバーするためにサイバーファイトグループがバックに付いているとみるのが自然だが、小川氏は囲み取材でそうした見方を否定した。WWE側との接触の噂もあるし、小川氏と裏で糸を引く存在があるのかないのか…。
もしスポンサーもないし金もない状況なのだとしたら…私はスターダムからまだまだこれからの有望株の弓月を移籍させた責任は非常に重いと考えているし、なんだったらとても罪深いことだと感じている。
他の選手に比べて明らかに“デキる”若手だったし、かなり昭和プロレスの匂いがするファイトスタイルにも感じたため、小川氏さすがの慧眼ともいうべきところだが、より良い未来を自分で模索し決断できる大人ではまだない、年端もない19歳の決断に、団体側はしっかり責任を持ってもらいたい。
さっそく若手選手も募集しているが、本当に老後の資金だけで運営していくとなると、旗揚げ戦からいつまで資金的な余裕があるものだろうか。
令和のWJとならないことを祈りながら、旗揚げ戦には駆け付けたいと思う次第である。
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